第2話 悪夢の続き

……気づけば彼女の肩を見知らぬ男が抱いていた


もう我慢出来ない、関係が壊れてもいい


ティタンは、男を止めに入る


いかに自分が彼女を愛しているかを訴えた


言葉を尽くし、心を尽くし、話した


全ての想いを曝け出した


それなのに、ただ嘲笑われただけだった


ティタンの事は邪魔なだけだと言われ、二人はティタンの存在すら否定をした


あまつさえ男はティタンの目の前で彼女にキスを迫る


我慢出来るわけもなかった


妙にリアルな感触だ


気づけば男を殴りつけ、顔の形もわからなくなる程拳を叩きつけた


視界はぼやけ、意識もぼやけるが、ただただ目の前の男を殴りつけるだけた



ピクリとも動かなくなって、ようやく手を止めた


彼女の顔を見るのが怖くて、振り向くことはしなかった


やがて視界が黒く塗りつぶされる






「また夢を見た、嫌な夢だ」


「それは不安でしたよね。私ならきっと泣いてしまいます」

婚約者のミューズがティタンを心配して、朝から彼の部屋までを訪れていた。


ティタンは今日も愛する婚約者を抱きしめる。


夢か現実かもわからなくなる程押し寄せる悪夢に、ティタンは疲弊し、傷ついていた。


「私にはティタン様だけですよ」

よしよしと撫で、慰める。


「わかっている。ミューズが俺を裏切るわけがない」

あれだけの悪夢を見た後の、ティタンの願いは一つだけ。


ミューズに嫌われないこと。


夢とはいえ、男を殴ったことは後悔していない。


ミューズが認めた者でも、許せない。


「顔色もひどいし、少し休みましょう」

気遣う彼女の声が優しくて愛おしくて、そのまま浸りたかった。


もっと話していたい。


「眠るのは嫌だ、もっとひどいことになるかもしれない」


「私が付き添いますわ、大丈夫ですからね」

ティタンの手に自分の手を重ねた。


ティタンは促されるまま、ベッドに横になる。


従者も侍女も外に出される。


まだ婚約者のため、二人きりになるというのはあまり良くないが、ティタンの顔色が相当ひどかったのもあるだろう。


外に護衛が配置されるくらいに留まった。


「お側におります、ゆっくりと休んで下さい」

幼子のように、ティタンはミューズに手を繋いでもらう。


眠りにつきたくはないが、ミューズがいる安心感からか眠気が出てきた。


「愛しております、ティタン様」

そっと額に口付けられる。


ティタンは安心して目を閉じた。


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