シンデレラはおしろのぶとうかいでてっぺんをめざすことになりました
近藤銀竹
第一楽章
むかしむかし。
あるところに、シンデレラというそれはそれはうつくしいむすめがいました。
シンデレラは、とてもやさしいおとうさんとおかあさんとくらしていましたが、あるひ、おかあさんがびょうきにかかり、なくなってしまいました。
おとうさんは、シンデレラにおかあさんがいないのはかわいそうだとおもい、あたらしいおかあさんとけっこんしました。
おかあさんは、ふたりのむすめをつれておやしきにやってきました。ミルカと、ベルナです。
あたらしいおかあさんがやってきてしばらくすると、おとうさんもなくなってしまいました。
おとうさんがなくなると、あたらしいおかあさんはおやしきのおかねをつかってぜいたくなくらしをはじめました。そしてシンデレラにはそまつなふくをきせ、めしつかいのようにはたらかせました。
あたらしいおかあさんはいいます。
「すべてのまどをきれいにみがくのです。ただし、はしごやふみだいなどをつかったらしょうちしないわよ」
「はい、おかあさま」
シンデレラはいわれたとおり、おおきくてたかいまどを、いっしょうけんめいにとんだりはねたりしてきれいにみがきました。
いちばんめのおねえさんミルカも、シンデレラにいじわるをします。
「ちかしつからドレスをもってきなさい」
「みぎのてぶくろをもってきなさい」
「つきはひだりのてぶくろをもってきなさい」
シンデレラはミルカのへやとちかしつとをなんどもなんどもいったりきたりしました。
にばんめのおねえさんベルナは、シンデレラにめいれいします。
「わたしはなまりがだいすきなの。なまりのおぼんになまりのしょっきをのせておちゃのよういをしなさい」
シンデレラは、おもいなまりのしょっきにおちゃのよういをして、ベルナのへやにはこびました。
そんなあるひ、おしろからおてがみをもったへいたいがやってきました。
あたらしいおかあさんがてがみをよみはじめました。
「『こんど、おうじさまのけっこんあいてをきめるために、ぶとうかいをひらく。としごろのむすめはぜんいんおしろにくること』ですって。たいへん、すぐにじゅんびしなくては」
「いちばんうまくおどったひとを、おきさきさまにむかえるんですって」
「うつくしさだけでえらびたくないから、かめんをかぶってぶとうかいをするそうよ」
あたらしいおかあさんとふたりのおねえさんはおおはしゃぎです。
ミルカはますますシンデレラにめいれいして、シンデレラになんどもかいだんをのぼったりおりたりさせました。
ベルナもますますシンデレラをこきつかい、なまりのおぼんをあげたりさげたりさせました。
「わたしもぶとうかいにいきたい」
シンデレラはおかあさんにたのんでみました。
「あんたはまだおやしきのそうじがおわっていないだろう。それにドレスをもっていないじゃないか」
おかあさんは、はなでわらいます。
そうこうしているうちに、ぶとうかいのよるがやってきました。
あたらしいおかあさんとふたりのおねえさんは、きかざっておしろへでかけていきました。
やっとおやしきのそうじをおわらせたシンデレラでしたが、ドレスをしたてるひまがなく、おいてけぼりにされてしましました。
「わたしもおしろへいきたかった」
シンデレラがにわでないていると、どこからかようせいがやってきました。
「どうしてないているんだい」
「わたしもぶとうかいにいきたかったのに、ドレスがないのです」
ようせいがにっこりわらっていいました。
「やさしいシンデレラにとっておきのドレスをあげましょう」
「いいえ」
シンデレラはくびをふりました。
「もういいのです。それよりも、おかあさまたちからしごとをいいつけられないこのじかんをたのしみたい。そう……いちねんくらい」
「おやすいごようよ」
ようせいがつえをふると、ふしぎなことにじかんのなかれがとてもゆっくりになりました。
「じかんのながれをゆっくりにしたわ。あなたはいちねんかんのじゆうなじかんをかんじることができる」
「ありがとう」
シンデレラはよろこびました。
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