輪廻転生桜夢

きみとおさる

第1話 1万回の転生

気がつくと、そこはモノクロで、少し薄暗い部屋の中だった。

下を見ると、手足が見えた。


そうだ。私は人間だった。

高校一年生の…

…?名前が思い出せない。

自分はなんて名前だっけ?

まあいいや、本題はここについて、だ。

ここはどこ?


すると、急に上から光が差してきた。

眩しくて目を瞑った。


十秒ほど経って、光にようやく慣れてくると、自

分が花の中にいたことがわかった。大きなハスの花のような花弁の中心にいたらしい。ハスの花びらの残骸が足元にあった。

立って見回してみると、白い床が前後左右ずっと続いていた。柱もオブジェクトも壁も無く、白い床と高い天井がずっと広がっていた。

音はなく、ただただ静けさの中に私が居るだけだ。


なぜここに私は居るのだろう。

なぜ私は名前が思い出せないのだろう。

ここはどこなのだろう。


「こんにちは、シオリさん」


声が聞こえた。

声のする方を見ると、白い髪の少年がいた。

こちらを見て、微笑んでいる。


「1万回の転生、おめでとうございます。」


そう言って彼はふわりとお辞儀した。

彼は白い布のような服を身に纏い、ほのかに白く発光していた。


「はじめまして、天の使いのスリジエと申します。簡単に言うと天使です。」


なにか質問しようと思い、声を出そうとした。

が、喉から音は出ず、呼吸音だけが、ひゅうと小さく鳴った。

声が、出ない。


「大丈夫です、声を出さなくても。

 思っていることは伝わります。

 ここは天国、というか、天国の前の状態の場所です。これを見てください。」


スリジエと名乗った天使の少年は、どこから出したのか、手のひらからふわふわ浮いている紙を取り出した。

紙には何やら色々書かれている。


「ここが天国、10万回転生し、世界を完璧に知った[神様]と呼ばれる存在が行けるところです。人間の運命や行動を変えることが可能です。」


紙の一番上の欄を指しながらスリジエは言った。

ひとつ下の欄に指を動かし、続けた。


「ここが5万回転生した魂が行ける小天国と呼ばれる場所です。運命を変えることはできませんが、生まれてくる子供の性格を決めたりすることができます。」


またさらに指を動かした。


「ここが、今私達がいる天間と呼ばれる場所です。1万回転生した魂が来るところで、魂は1万回転生すると、意志や思いを世界にいなくても持つようになります。

あなたの魂の名はシオリ。魂にも一つ一つ名前があるのです。僕は10万回転生した魂なので、ここ、天間に来た魂を導く天使を務めております。」


スリジエが言い終わると、紙はふっと消えた。


「1万回転生した魂はずっと意志を持つだけですが、意志がある分転生するものを選ぶことができます。シオリさん、どうしますか?

ちなみにシオリさんの前世は人間でした。」


スリジエは首をかしげた。

え、急に言われても……


「最初は木がおすすめです。

動物や人間と触れ合うことができ、言葉は話せませんが多くの生活を見渡すことができます。

寿命もながく、世界を見渡すのにはちょうどいいと思います。」


そうか、木、か…。

どっしりしていて強いイメージがあるなあ。

集まれば林や森になるし、光合成で多くの動物や人間を助けることができる。


よし、木にしよう。


「じゃあ、木、に転生してよろしいですね?」


はい。


「では、」


1万1回目の人生てんせい


「転生、スタート」

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