運命の人は人間(ヒト)でした。なので魔王を倒します
柚鼓ユズ
第1話 惚れた相手は、人間(ヒト)でした
『――大丈夫!必ず助かるから!――』
あぁ、大丈夫だから。
『――絶対に死なせない!助けてみせる!――』
……いや、だから大丈夫だって。
『――必ず、君を救ってみせる!――』
あぁもう!大丈夫だって言っているじゃない!
そんなに必死な顔で、間近でそんな事言われたら……
……惚れてしまうでしょうがぁああああ!!
「……大丈夫ですか、リリスさん?もし、疲れているようなら少し休みますか?」
「ううん。私はまだまだ大丈夫よ。ありがとうダリア。さ、目的の街までもう少し歩きましょ?」
そう言って私は前を歩く彼に向かって微笑む。実際、全く疲れはなかった。いや、正確に言うのならば私には疲れるという概念がないというのが正しい。
……何故なら、私は人間ではないのだから。
この世の全てを滅ぼす存在である魔王フィネチア。それが私の実の父である。
次期党首である一人娘の私をより強大な存在にすべく、魔王である父は私を容赦無く鍛え上げた。当然、年頃のうら若き乙女である私からしてみれば、反発どころかれっきとした反抗期を迎える訳である。
「百や二百の子供ならともかく、お父様にそこまで言われる筋合いはありません!」
……そこからは当然の如く、親子喧嘩勃発である。
現役魔王と次期魔王。まぁ多少規模の大きい喧嘩になるのは仕方ない事だ。諌めようとした側近が何体か消し飛んだり、地上の山が一つや二つ焦土と化すぐらいは日常茶飯事だ。
こちらも全力で歯向かうものの、悔しいかなやはり現役の魔王にはまだ敵わず、雷を落とされる事となる。比喩ではなく、物理的な雷を、だ。
「ぐううう……っ!」
回避も防御もままならず、まともに雷の直撃を受けた私はそのまま空中から地面に撃ち落とされ、したたかに地面に叩きつけられた。
(痛っ……くっそ……あの馬鹿親父、本気でやりやがったわね……覚えてなさいよ。絶対倍にして返してやるんだから)
体の至る所が焼け焦げ、ダメージの衝撃でまだ指先すらまともに動かせないが、二、三時間もすればすぐに傷跡も塞がり動けるようになるだろう。
治ったらすぐに、あの憎たらしいクソ親父の顔に地獄の業火をぶちかましてやる。
そう思い、傷が塞がるのを今か今かと待っていたその時だった。
「大丈夫!?……良かった!まだ息がある!待ってて!すぐに助けるから!」
そう言って私の前に、一人の人間の男が駆け寄ってきた。
「なんて酷い傷だ……ごめんね!少しだけ我慢してね!」
そう言って男は私のぼろぼろになっている服を剥ぎ、手にした薬を必死に塗りたくってきた。
(ちょっと!何してんのよ!……ってかこいつ、何処触ってんのよ!)
まだ声が出せず、体が動かせないせいで抵抗が出来ない。
(……殺す!体が動き次第、意識を保ったまま全身をバラバラに引きちぎって殺す!)
片腕一つでも動かせるのを待ち、即座に男の四肢をもぎ取る気でいたが、男は必死でこちらの体に薬を塗りたくる。
「これで良し……ごめんね、もう少しだから」
そう言って自分のマントを外し、シーツ代わりに私の体に巻き付ける。
(……こいつ、なに必死になってるんだか。放っておいても治るんだから大丈夫だっていうのに。……人間って、皆こうなのかしら)
自分を横たわらせて、何やら携帯していたらしい書物に目を通し、確認してからこちらに声をかける。
「ごめんね。回復魔法は苦手なんだけど……必ず治すから!頑張って!」
そう言って、男は長ったらしい詠唱を必死に唱えてからようやく魔法を唱えた。
「『回復』!」
……遅い。遅すぎる。確かに彼が唱えた魔法によって細胞が回復している感じは伝わるが、あまりにも遅い。正直、自然治癒の速度の方が早いくらいである。
(人間って、ここまで非力で脆弱な魔力しか持ってないのかしら。それとも、この男が大した事ないだけ?……でも、なんでこいつ、今会ったばかりの私に、ここまで必死なのかしら)
そんな事を思っている自分に、なおも必死に脆弱な回復魔法をかけ続けている。その顔付きは必死で真剣そのものである。
「……頑張って!少しずつ傷が塞がってきているから!」
そう言ってこちらの手をぎゅっと握りしめてくる。
……ちょっと待って。年頃の乙女の手をいきなり握るなんて、何考えてるのよこいつ!だ、段階ってものがあるでしょうに!
傷が塞がっていくのは魔法じゃなくて私自身の自然治癒力だ、と言いたくてもまだ声が出せないため、手を強く握られてなすがままである。
(……でも私、こんな風に男の人に手を握られたり、自分の事を真剣に見つめられた事なんて、生まれて初めてかも)
「大丈夫!少しずつだけど確実に治っているから!あと少しの我慢だから!」
そんな事を考えている中、なおも必死に自分に向かって声をかけ続ける男の顔を見つめる。……こんな風に誰かに向き合って貰ったのは、今まで生きてきた中で一度たりとも経験した事がなかった。そうこうしている間に、ある程度の時間が経過した。
「……もう、大丈夫だから」
傷もある程度塞がり、口をきけるようになったところでそう呟く。
もちろん、それは彼の魔法や薬の効果ではなく、ほぼ全て自身の治癒能力によるものである。だが、先程までの目の前の男に対する殺意の気持ちは消えていた。
「……良かった!薬か魔法が効いたんだね!本当に良かった!」
そう言って彼は涙目になりながら私を力強く抱きしめた。既に体は自由に動かせるにも関わらず、されるがままになっていた。
(……誰かに抱きしめられるなんて、初めてなんですけど)
……だが、今味わっているこの自分以外の誰かから伝わる体の温もりは、決して不快ではなく、どこか心地良かった。
(魔族である私にこんな感情を抱かせるなんて……責任、取って貰わないとね)
かくして、魔王の娘である私はこの人間に恋に落ちたのである。
「そっか……記憶が無いんだね。覚えているのはリリスって名前だけ、かぁ……」
ダリアと名乗る青年に、私はそう言った。魔王の娘と馬鹿正直に伝えたところで、何一つ良い事などないからである。
「えぇ……正直、何故自分がここにいて、あのような目にあったのかも何も覚えていないわ」
断じて嘘は言っていない。理不尽な言いがかりで喧嘩になり、気付けばあの場所まで吹き飛ばされたのだ。もっとも、本当の事を言ったとて信じて貰えるはずがないのだけれど。
善人が服を着て歩いているような存在のダリアは私の言葉を何一つ疑うことはなく、全てを信じて私の事を記憶を失った気の毒な少女と認識したようだ。
「そっか……辛いだろうけれど、気を落とさないでくださいね。生きていればきっと救われるし、報われますから」
そう話すダリアの言葉がやけに熱を帯びた感じだったので、思わず質問する。
「何その言葉。よくある『座右の銘』みたいなやつ?」
そう私が言うと、ダリアは笑いながら答える。
「そうですね。俺の……亡くなった恩師の言葉です。自分がどうしようもなくなって、思わず死にたいとこぼした時、言われた言葉なんです。なので、自分が向こうに行くまでその言葉を胸に生きようと思っています」
……どこまでも真っ直ぐな人間である。こんな人間がまだこの世の中に存在していたという事が信じられない程に。そう思っているとダリアがこちらに声をかけてきた。
「……それで、リリスさんはこれからどうしますか?人里までお連れして、どこか施設のお世話になる事にしますか?それとも……」
言葉を続けようとしたダリアの言葉を手で制し、私は言った。
「今は、貴方と旅をさせて。……私を、一緒に連れて行って」
そう言った自分に、一瞬だけ戸惑った表情を浮かべたものの、ダリアは笑って頷いてくれた。
「ねぇ、一つ聞いても良い?ダリアはさ、どうして一人で旅をしているの?私には良く分からないけど、冒険者なら基本的にパーティーを組んで旅に出るものだと思うんだけれど……」
街へと向かう道中で、ふと気になってダリアに聞いた。ダリアは一瞬だけ悲しそうな顔をして、すぐに笑顔を作って言った。
「……あぁ、俺の実力不足です。昔、『お前とパーティーを組んでいても何のメリットもない』って言われてしまいまして。無理もないですよね。剣も魔法も中途半端。特に取り柄もありませんから。それからずっとこうして、一人で旅を続けています」
そう言ってまた前を向いてダリアは歩き出す。
……信じられない。出会ったばかりの、しかも魔族の私ですら彼が人間の中でも飛び抜けた善人だという事が分かる。そんな彼に対し、そのような心無い言葉を吐ける人間がいるというのか。……もしも今そいつが目の前にいたら、迷わず八つ裂きである。
怒りの感情が顔に出ていたのか、慌ててダリアがこちらに声をかけてくる。
「……あ、大丈夫ですよ。自分が一番良く分かっているので。確かに俺は、強くはないですから。世界を救うなんて事は俺には出来ません。でも、旅を続けていればこんな俺でも誰かを救う事が出来るかもしれない。そう思って世界を回っているんです」
……底抜けの善人、いや。お人好しというべきか。人間と触れ合う事など今まで無かった自分でも分かる。彼が人間の中でも稀有な存在だという事が。
……まぁ、そんな人間だからこそ、自分が惹かれたのだろうけれども。
「……私は、そんなあんたに救われたわよ」
ぼそりと呟いた私の言葉が聞こえたのか、ダリアは無言でこちらを振り返りにっこりと微笑んだ。そのまま、しばし無言で次の目的地へと歩き続けた。
「……何か、嫌な空気ですね。妙に淀んでいるというか、重いような」
ダリアが独り言の様に呟く。ダリアの言う通り、先程から何者かの気配を感じる。何者か、というよりは私にとっての同類の気配だが。
(……この雰囲気だと、ただの雑魚じゃないわね。上位の魔族かもしれない。知ってる顔じゃないと良いのだけど)
そんな風に思っていると、辺りの空気が変わり、目の前に魔族の気配をはっきりと感じる。どうやら一体ではなく、この周辺を何体かで行動しているようだ。
何とか気取られる前に移動しようとするものの既に遅し、一体の魔物がこちらの前に飛び出してきた。
「ほう……こんな僻地に人間とは珍しい。探し物ついでにここに来たのだが、ついでに始末しておくとしようか」
姿を現すなりそう言う魔族を前に、即座に剣を抜いて構えながら私を庇う様に前に立ってダリアが言う。
「人語を話す上位魔族……!厄介ですね。リリスさん……俺が出来るだけ時間を稼ぎます。どうか、その間に逃げてください。少しでも……遠くへ」
……確かに、厄介である。だが、私が厄介と思う理由はきっとダリアとは異なるだろう。
「ほう。一目で私との力の差に気付いたか人間。案ずるな。すぐに楽にしてやろう。無論、二人揃ってな。……この魔王軍側近、リンドウがな」
……最悪だ。目の前に現れた魔族……リンドウは、私の事を子供の頃から知っている父様の側近だからである。側近、とはいっても端役ではあるのだが。
(……気付かれたら色々と面倒くさいわね。何とかダリアを守りつつ、この場を切り抜けたいのだけれど……)
ダリアは既に覚悟を決めたのか、リンドウをまっすぐ見据えて剣を構えている。彼の事だ。おそらく、己の身を挺してでもどうにか私だけは逃がそうと考えているのだろう。
「……逃げましょう、ダリア。隙をつけば二人でもきっと……」
咄嗟に被ったフードで顔を隠しているため、口元だけ開けてダリアにそうつぶやくが、ダリアはリンドウを見つめたまま悲壮な表情で言う。
「いえ……そうしたいところですが、おそらく無理でしょう。見ただけでも分かる高位の魔族。きっと俺では相手にもならないでしょう。……時間を稼ぐので、せめてリリスさんだけでも逃げてください」
……どうしよう。ここで私が正体を明かせばリンドウは抑えられるけど、ダリアに私の正体がバレちゃう。でもこのままだとダリアが殺されちゃう……!
そう自分が逡巡していると、リンドウが言い放つ。
「ほう。足掻くか人間。好きにするが良い。どうせ無駄な足掻きだが……なっ!」
そう言って掌から炎を放つリンドウ。その炎はまっすぐ自分へと向かってくる。
「うおおおっ!」
ダリアが叫ぶと同時に剣を振るう。次の瞬間、リンドウの炎が斬り裂かれる。
「ほう……私の炎を斬り裂くとは中々やるな。お前が手にするその剣、かなりの業物だな」
感心したような表情でリンドウが言う。
「……一応、聖剣の類だよ。自分でも不相応な物だと自覚はしているけどな」
再び剣を構えてダリアが言う。ダリアの緊張がこちらにまで伝わってくる。が、至って冷静にリンドウが言い放つ。
「ふん。そうだな。確かにその剣を自在に使いこなすとまではいかないと見える。残念だな。それを使いこなす事無くここでお前は死ぬのだからな」
そうリンドウが言うと同時に、ダリアの方から攻撃を仕掛けた。
「リリスさん!今のうちに逃げて!少しでも……遠くへ!早く!」
そう言ってリンドウに斬りかかるダリア。その斬撃を事もなげに弾くリンドウ。
「小癪な!遊びは終わりだ!『爆炎風』!」
次の瞬間、爆音と共にダリアの体は空中へと吹き飛ばされた。
「ダリアっ!」
体を勢いよく地面に叩き付けられたダリアの元に駆け寄る。……良かった。まだ息がある。
「逃げ……て……リリス……」
そう言って気を失うダリア。リンドウがこちらに近付いてくる。
「ふん。咄嗟に剣で弾いてひとまず致命傷は避けたか。まぁ、時間稼ぎにもならなかったようだがな」
リンドウのその言葉に返事を返さず、私は無言で被っていたフードを外す。
「……やってくれたわね。リンドウ」
自分の言葉に、眉をしかめるリンドウ。
「人間風情が気安く私の名を呼ぶでないっ!」
そう激昂し、リンドウはこちらに火球を放ってきた。
「ふんっ!」
その火球を片手で弾き返す。弾かれた火球はリンドウの足元で爆発する。
「なっ……!」
狼狽しているリンドウに即座に駆け寄り、胸ぐらを掴んで片手で持ち上げながら言う。
「ぐっ……馬鹿な……っ!振りほどけない!な、何なのだ、この力は……!」
「……随分と調子に乗ってくれたわね、リンドウ。あんた、さっき堂々と側近とか名乗っていたけれど、とっくに全盛期は過ぎて、お情けで官職に就いているっていうのを忘れてないわよね?」
そう言ってローブを脱ぎ捨て、リンドウの前に立つ。
「な……なっ!ま、まさか貴女は……リリスお嬢様!?」
リンドウの顔に驚愕の色が浮かぶ。……まぁその反応も当然だ。こんな所で上司の愛娘に会うなど夢にも思っていなかったであろう。だが、今の自分は大事な人を傷つけられた怒りの方が強い。
「……いい、リンドウ?貴方は何も見なかった。ここで私に会った事は全て忘れる。お父様にも誰にも内緒。……貴方も、まだ死にたくはないでしょう?」
精一杯の笑みを浮かべてそう言ったつもりであったが、リンドウは涙目になり壊れた玩具のように首を縦に動かすばかりであった。
「はっ……!はい!私は何も見ておりませぬ!ここには何もありませんでした!」
他の魔族が近くにいなくて良かった。口封じをする手間が省けたため、リンドウの胸ぐらを掴んだまま言葉を続ける。
「そう。賢明な判断が出来て良かったわ。じゃ、速やかに配下を連れてここから去りなさい。もし追っ手が来たら、貴方の四肢を可能な限り切り刻んで、痛覚を保ったまま未来永劫痛め付けるから。……い・い・わ・ね?」
そう言ってリンドウの首筋にもう片方の手で軽く爪を突き立てると、リンドウが悶絶しながら声を上げる。
「ぐっ……!ぐうっ!は、はいっ!け、決してここでの事は口に致しません!な、なのでどうか……お許しください、お嬢様……!」
リンドウの態度に嘘は見当たらないと判断し、掴んだ腕の力を緩めて放り投げる。多少吐血していたものの、すぐに起き上がりこちらに一礼した後、少し離れた場所にいた配下を連れて早々にこの場を離れていった。
「……うーん。あれ……?リリスさん?って……あの魔族はっ!?」
目を覚ますなり、飛び起きながらダリアが叫んだ。
……勇気を出して起きるまで膝枕をしてあげていたのに、そこについては一切反応がなかった事にちょっと悲しくなりながらも返答する。
「……あぁ、あの魔族ね。あいつなら他の魔族に呼ばれたみたいで、私らを放って急にどこかへ行っちゃったわ。人間に構っている余裕がなかったみたいで、慌てて去っていったわよ」
余裕がなかったのは事実だろうが、それ以外は適当に理由をつけてごまかした。まぁ、ダリアは意識も失っていたし、人間を意に介さない魔族も実際に存在するので多少無理があっても納得してくれるだろう。
「そう……ですか。にわかには信じ難いですが、それなら本当に……運が良かったですね」
案の定、すんなりと私の言葉を信じるダリア。本当に人を疑うという事を知らない人間である。
「そうね。幸運だったわね。ま、良かったじゃない。こうして二人とも無事でいられたんだしさ」
そう私が言うと、ダリアは少し難しい顔をして、きっと顔を上げて言った。
「……リリスさん、俺、決めました。俺、もっと強くなります。世界を回って、経験を積んで。色んな相手と戦い、レベルを上げます」
そう言って私の方を見ながら言葉を続ける。
「俺……昔言われた事をずっと引きずっていて、どこかで自分の事をもう限界だと決めつけて諦めていました。でも、もうやめます」
真面目な顔で私をじっと見つめて言うダリア。その表情は真剣そのもので、こちらが言葉を挟めない。
「魔王を倒し、世界を救う……なんて大それた事は出来なくても、これから出会った人を、そしてリリスさんを自分の手で守れるくらい。それくらいの強さを身に付けられるだけの男になります」
……ちょっと、そんな風に真剣な顔で見つめられながらそんな事言われると照れるんですけど。
……私の顔、真っ赤になってないと良いのだけれど。
「……大丈夫よ。きっとダリアなら出来る。ううん、私がそれをずっと側で見守ってあげる。いつかおと……魔王だって倒せるぐらい立派な勇者になるまで、ずっとね」
どうしよう。これってもう実質婚姻宣言よね。……さっきから私、心臓の鼓動がヤバいんだけど。
「はい。どうかその時まで……よろしくお願いします、リリスさん」
そう言ってダリアは私の手を力強く握って言った。私も無言でその手を握り返す。
……あぁ、ごめんなさいお父様。
貴方の娘は運命的な出会いを果たし、人生の伴侶を見つけてしまいました。
昔、『親というのは、子の幸せを願うもの』という言葉を聞いたことがあります。
なので、私の幸せと、未来の旦那様のために。いつか貴方を倒させていただきます。
今はまだまだ二人とも実力不足なので、世界を巡り経験を積ませていただきますが、未熟な二人を見守り……はしなくて良いので、どうか気付かないままでもう少しいてください。
おそらく、顔合わせが果たし合いになる事になるとは思いますが、どうかご心配なく。私は、彼と幸せな人生を過ごしていきますので。
そう密かに胸中で誓う私に、隣にいるダリアはまた満面の笑みを返してくれた。
運命の人は人間(ヒト)でした。なので魔王を倒します 柚鼓ユズ @yuscore
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