第6話 謝罪


 莉紗に会いたいな、と思い、スマートフォンをぼんやり開く。


 ネットニュースで極暑に関連する速報が通知される。全国各地で真夏日の高気温を更新し、関東のとある地域では四十度を超えた、と噴水の前で水浴びをする女の子の様子と共にクローズアップされていた。


 クーラーを効かしているのに手汗も滲む晩夏、最近、莉紗とのラインの連絡も滞っているんだ、と気付かされる。


 


 今、通っている農業高校じゃ、話す友達もあまりいないし、誰とも夏休みに気軽には遊ぶ人はいない私は俗に言う陰キャなのか、よく分からない。


 図書館で借りてきた本を読んで暇を潰したけれど、照り付ける太陽光による酷暑で、集中するどころじゃなかった。


 玄関からチャイムが鳴ったので身体を起こすと、誰だろう、と倦怠感を残したまま、階段を下りると玄関にあの近藤君がいた。


 私は驚きを隠せず、なぜ、こんな日に? と口が開く前に近藤君から話を切り出していた。


「血捨木、ごめん」


「何よ、突然」


 近藤君は夏場を盛るように真っ黒に日焼けした顔をタオルで拭きながら言った。


「血捨木のことを俺、いじめただろう。それは本当にごめん」


 苛めっ子の謝罪。


 まあ、いいか、と思いながら深刻そうな近藤君の顔に私は何となく、異変を察した。



詩歩子

作成日:2022年11月9日


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