十五夜奇譚 摩訶不思議な図書館での出来事。

詩歩子

第1話 トンネルの夢


 小さい頃に夜の底の瞼に映した、摩訶不思議な夢を大きくなった今でも私ははっきりと覚えていた。その夢の概要は小さな私が暗いトンネルの中で、とある少年に手を引かれている筋書きだった。



  その少年は私の手を英国紳士のように触れ、私の前に跪くように腰を屈め、後顧の憂いを託したような、深層的な濃藍の闇が轟く視界の先に座った。


 


 少年はその水分を多く吸い込んだように滑らかな、髪の毛が肩の近くまであり、その憫笑も型通りにはまった雛型のようで、その蒼い瞳の余剰な影を幼い私は見上げる格好になって見つめた。


 


 少年は母親が幼子をあやすように私を手招き、おんぶするよう、誘導した。


 私は素直のまま、その少年の温暖な海洋のような胸元へ飛び込み、期待で小さな胸を揺らし、二人でその漆黒のトンネルをひっそりと歩き続けた。


 黒真珠のような色合いの、暗黒童話の夢の中なのにそこは何となく、温かった。

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