第8日


 犬の足音の正体が、なんとなくわかった。

 確かめてはいないけれども、たぶんここの真上は部屋じゃない。

 一応二階にも部屋があるのだが、一軒家ふうのつくりであるから一階の居住スペースのまま二階が部屋なわけじゃなかったと思うのだ。

 追い立てられるネズミの声からして、近辺に野犬か野良猫がいるだろう。

 たぶんそれが走っている。

 そのように思ったきっかけは、ぢゃかぢゃかいう足音と、大きなからすの鳴き声があったから。カラスを家で飼う人がいたとして、たぶん、カラスが鳴かないようにするのは犬が走らないようにするよりうんと難しい。犬が走っていたのに、カラスが鳴いていなかった。じゃあたぶん逆なのだ。


 西向きの窓の向こうにはブロック塀がある。

 子供が喧嘩をしているせいで、赤子の声が遠くなったように聞こえる。

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