温暖化はすぐそこに。
夕日ゆうや
終わるとき。
イロワケイルカ、通称はパンダイルカ。
海水温の変動やプランクトンの発生箇所が変わったことにより、絶滅危惧種に指定されている。
この大学では研究目的でパンダイルカを飼育、観察している。この研究がうまくいけば、パンダイルカを増やすことができる。そもかなりの数を。
「しかし、先生はイロワケイルカばかりですね」
助手のワトソンが、たはははと乾いた笑いを浮かべる。
「ここいいですかね?」
俺の隣に座ろうとしてくる禿頭の男性。
「いいですよ。
この大学のカフェはいい。
いろんな教授と意見交換ができるのだ。
「熱循環に乱れがあってですね。それで日本近海のメタンハイドレートが湧き上がっているようなのです」
「そりゃ怖い。P-T境界の再来ですかね」
2億5千年前の生物大量絶滅の再来となれば、人間は黙ってみているなんてことはできない。
「永久凍土も溶け始めています。そこに眠るメタンハイドレートも」
メタンハイドレートは大量のメタンガスを放出する。
メタンは二酸化炭素に比べて効果の大きい温室効果ガスとしても有名だ。
しかし、そこだけが問題じゃない。メタンは太陽風に含まれる赤外線などで酸化し、水と二酸化炭素に変わる。このさいに消費される酸素が多いとすぐに酸欠になる。
「パンダイルカが生き残れる道があればいいのだが」
海面の上昇、気温の変化、異常気象、海流の変化。
温暖化の影響か、世界は変わってしまった。
たくさんの人が津波に流され、大雨で堤防が決壊、大規模な寒波の到来、干ばつによる野菜の高騰。
すべては人間がやってきたことへの報い。
「昔の人は未来なんて考えていなかったのだろうな……」
俺は困ったように頬を掻く。
「持続可能な世界を目指していますからね」
イロワケイルカを子どもたちに残せるのはいつまでなのだろう。
ゆるやかに死を迎えている人類。
温暖化はもう止まらない。
温暖化はすぐそこに。 夕日ゆうや @PT03wing
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