第14話 森での再会

  ———ゴールドアーマー装置後——


オレは夜が深まるのを待っていた。


オレことゴールドアーマーはただいま指名手配中のため、あまり明るいうちには出歩けないのだ。


ならば夜になって活動すればいいじゃないかという決断を下した。


「ああ、なんでこんな肩身狭い思いをしなきゃいけねぇんだよ……」


オレはブツブツ文句を言いながら夜の空を飛行していた。


「こっちは村を助けてやったのに、この仕打ちかよ……」


まあ、こういうのは日本にいた頃もあったかも……。


それは中学のときだった。


とある昼の掃除の時間にオレは校内のゴミ捨て場に教室のゴミを捨てに来ていた。


オレが来たら、一人の女子学生がゴミ箱の前でウロウロしているのに気づいた。

制服を見ると後輩で可愛かったので、困っているなら助けようと思い、声をかけたら………。


「いえ、人を待ってるだけなんで大丈夫です」


と無表情で一言、オレは急に声をかけたからびっくりしたのだろうと思い、会釈をしてその場をあとにした。


放課後になって、ゴミ捨て場に行くとその子はオレに向けた冷たい目ではなく、まるで恋する乙女のような目をして、イケメン男子と話してたのを見て、心にずっしりと何かが

のしかかるような気がした。


なんでオレがこんなに傷つかなきゃなんねぇんだよと思いながら帰り道を歩いていた。


「あ、ここら辺だな……」


オレが調査に来たのはエスカルテ村から30km離れた別の村、ローウェン村だ。


その村はエスカルテ村とは違い、多くの魔物が生息してるらしい。

だからこそ冒険者は多数住んでおりかなりのクエストがあるみたいだ。


一番報酬が高いので金貨500枚、なんともおいしい話だが、それを達成できるものはいないみたいだ。



「ジャイアントイノシシより高いということはかなり凶暴な魔物がいるということか……」


オレはとりあえず上空から村を観察するが特にこれと言って何も起きてないような気がするけど……。


村は至って普通の感じがするな、こりゃアイシャさんに一杯食わされたかぁ………。


村の周りの森へと行ってみる。


夜の森は恐ろしく、暗く陰気な感じが漂っていた。


「何も見えない、そりゃそっか。夜の森だし……、敵感知起動、暗視モードオン」


暗視モードはその名のとおり、暗闇を見るためのもの。


オレはその森を一通り警戒しながら進む。


「しかし、足場悪りぃなぁ……」


何もない、見事なくらいに何もない。


なんだこれ、どうなってんだ……?


…これはやはり一杯食わされたな。


そう思って帰ろうとすると、敵感知に反応した。


…何かいる。


諦めて帰ろうとしたときにこれか……、

ツイてねぇなぁ、オレ。


「敵の位置は、前方100メートルくらいか……」


オレはアーマーに魔力を込めていつでも攻撃できるように備える。


そしてゆっくりと慎重に飛行態勢にして、

徐行しながら敵の位置へと向かう。


…魔物か、または別の何か。


オレは敵の位置に到達して森の茂みから覗き見る。


そこはオレがいた場所にはなかった月の光が差し込んだ場所だった。

月の光に照らされているのは湖だった。


こんなところに湖があるとは驚きだ。

だが、もっと驚いたのはその湖に人影がみえる。


……誰だ?


「……ズームイン」


オレが小声で言うと、湖の中心にアップする。その姿は髪が長く背中まで伸びていた。


……これは、女性、か?


「……暗視モードオフ、……って、マジか!」


「……っ!?誰だ!」


すると女性が気配に気づいたのか振り返った。

暗視モードを切ってから湖のほうを見ると、オレはびっくりした、いやかなりテンパった。

なぜなら切った直後に女性の裸を見てしまったのだ。


なんともお決まりの展開だ。

オレはゴールドアーマーで見つかってその後に王都に連行され、処刑される。


これはなんとしても見つからないようにしなければ……!


「誰だ!そこにいるのはわかってる!出てこい!」


…ヤバい、マジでヤバい!

…これは確実に牢獄行きだろ!


「出てこないのなら、こちらから行くぞ!」


「わかった!わかった!ちょっと待ってくれ!」


オレは意を決して森の茂みから姿を出す。


「………っ!?」


オレの姿、ゴールドアーマーを見た途端に女性は恥ずかしいのか湖の中に体を隠す。


「お前は、黄金の鎧か?」


「ああ、そうだ。別に覗くつもりはなかった。それだけはわかってくれ」


オレは普通に喋っているがボイスチェンジャーを使って話している。

分かりやすくいうとダミ声だな……。


「……そうか、すまない」


そこでオレはあることに気づいた。

どこかで見た顔、どこかで聞いた声、どこかで話したことのある口調、オレはアーマーの中の顔は唖然としていた。


その女性は、王国騎士のマリアさんだった。


……マジか!…これは非常にマズイ状況になった!


「…なぜお前がここにいる?」


「ああ、それは……」


マリアさんはめちゃくちゃ睨みながらオレに問いかける。


…ああ、目つき怖ぇな。


「魔物を調査するために来たんだ」


「魔物……?」


「ああ、そうだ」


……嘘はついてないからな。


「……そうか、それなら怒る理由もないな」


マリアさんはそう言うとフッと笑っていた。


……あれ、助けを呼ばないのか?…いや、呼べないのだろうか?

…どうしてそんな平然としてるんだ?


オレは動揺していたが、あることを聞いてみることにした。


「風の噂で聞いたのだが、指名手配されてるのか、オレは?」


オレがゴールドアーマーとして聞きたかったことだ。

王都に行くときには気をつけなければならなくなる。

一体どこでバレるかわかったもんじゃない。


するとマリアさんは黙り込んでしまった。

その表情は何か思い詰めた顔をしていた。


……この感じからすると、相当理不尽な理由みたいだな…。


オレはため息が出る。


「実は、嘘なんだ……」


「………は?」


「だから!嘘なんだ!すまない!」


マリアさんはそう言って頭を下げたまま俯いた。


…えーっと、どゆこと?


オレは一旦頭の中で整理してみる。

最初会ったとき、確かに指名手配されてるという話だったことは間違いない。

だが今聞けば、指名手配は嘘と言っている。


……ん?ってことは、指名手配は嘘なんだ!

……よかったぁ。

オレは心から安堵のため息が出た。


だがそこである疑問が出てくる。

なぜ指名手配という嘘のことを言ったんだろうか?


「なぜ、そんな嘘を?」


「それは…………」


マリアさんは途端に顔を赤くしてモジモジしだした。


……ん?これは、なに?


「それは、その、お礼を言いたくて……」


「………は?」


「聞こえなかったのか!お礼をしたかったんだ!」


「はあ………」


…じゃあ、尚更なんで?


「ああ、そうなんですか。それはどうもご丁寧に…」


「ああ、いや、こちらこそすまない。いらぬ誤解を与えてしまって……」


そう言ってからマリアさんは顔を赤くしてこっちを見ながら言った。


「あの、着替えたいだが……」


「ああ、どうぞ。向こう見てますんで……」


オレは慌てて別の方向を向く。


……ふぅ、疲れるなぁ。


しばらくしてからマリアさんが声をかけた。


「もう大丈夫だ。こっち向いてもいいぞ」


そう言われたので向き直るとオレは目を奪われた。


月の光に照らされて妖艶に映るマリアさんは

女騎士というより聖女に近かった。


オレはその姿に見惚れていた。


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