第7話 またしても衝撃的な事実

  —地下の作業場にて—


オレは衝撃な事実を目の当たりにした。


ハルさんが男の娘だったことに。

つまりオレは男の娘に恋をしてしまったのか。


「……ホントに男なんですか?」


オレはしどろもどろになりながらハルさんに聞く。


「……はい、そう、です」


ハルさんは恥ずかしそうにしながら答えてくれた。


「へぇ、そうなんですねぇ……」


うまく笑えてるのかわからないくらいオレは動揺していた。


とりあえず冷静になろう、ハルさんは男、ハルさんは男だ。

そう思いながら目をあけてハルさんを見る。


ハルさんはモジモジしながらオレをチラッと見る、そしてふわりと微笑む。


…ウソだと思うくらい、女にしか見えない。


そこでオレはあることを思い出した。


…待てよ、ハルさんが男の娘、てことは店に来たときのイケメン男は恋人じゃないということか!


オレはなぜかずっしりと鉛のように重かった心が晴れていくような気がした。


すると爽やか男が思い出したように声を上げる。


「あ、大事なこと忘れてたよ!みんな今すぐ準備して、もう行かないと!」


「…何か用事でもあるんですか?」


「僕たちは今から魔物の討伐にむかうところなんです」


オレが尋ねると、爽やか男は今までの顔とは

違って、しっかりとした顔つきになり答えた。


「…ああ、そうだったんですか?」


…冒険者って大変そうだなぁ……。


オレはハルさんがいる冒険者を送り出してから、錬成で隠していたオレ帝国を取り出して

作業開始する。

その作業は今までで一番捗ったかもしれない。


「…楽しそうだね〜」


すると後ろの方で女性の声が聞こえた。

オレは今すぐ錬成で銃を作り、後ろを振り返り銃を向ける。


「……おおっと、ストップ!ストップ!」


そこにいたのは見たことない女性が立っていた。


「……誰だ?」


オレは睨みつけながら銃の引き金に指をかける。


「ちょ、ちょっと!!タンマ、タンマ!!ほら

私だよ、私!!」


「なるほど、詐欺か……。いい度胸してるな」


「だーかーら!私だよ、女神、メ・ガ・ミ!」


と、慌てながら自分のことを女神と名乗った。オレが知ってる女神とは容姿が異なっていた。

薄い茶髪の髪色にポニーテールの髪型をしている。服装は女忍者の格好をしている。


「……ホントに女神か?」


「だから、ホントだってば!」


「ふーん、信じ難いなぁ……」


オレは未だに信じられないのだ。なぜ女神がここにいるのか、一体何の目的があるのか。


「そうね……。うーん、そうだ!何か願いごと言ってみてよ!」


…願いごと、か…。


オレは考えこむ色々と思いつくがどれも必要ない。オレは悩んでいるとあるものが目に入った。それはオレが作成中のオレだけが使える装備だった。


「それじゃ、この人型機械武装アーマーに魔力を供給してほしいんだけど……」


そう言うと女神はニンマリと笑顔になり


「お安い御用で!」


と言ってからオレのアーマーに手をかざして

呪文を唱え始める、すると女神の手が輝き出した。

オレはそれを見ながら少し、いや大分疑っている、ホントに魔力を供給できているのか。


「はい、できたよ!」


しばらくして女神が自信たっぷりの笑顔で言う。


「ずいぶんと時間かかったな……」


「仕方ないでしょ、天界規定で女神の力を抑えこんでいるんだから……」


…意外と女神の世界は面倒くさそうだな…。


「……今、なんかバカにされてる気がするんだけど……」


「気のせいだ……」


オレは真顔でそう答えた。

どうやら女神は勘がいいらしい。


「それでこれは何?」


女神はオレの造ったアーマーを物珍しそうな顔で見る。


「それは、オレだけが使える武器だ」


「…ふーん、…しかしよくこれだけのもの造れたねー」


女神はオレが創ったオレ帝国をキョロキョロと見渡しながら歩く。ときどき足を止めて観覧用に造った銃を覗き見る。


「そんなに珍しいものか?」


「それはそうよ。天界なんかにこういうのはないからね…」


女神はそう言いながら銃を見続ける。


「それより、よかったよ!満喫してるみたいで!」


女神は振り返り、ニコリと微笑む。


「まあ、確かに退屈はしなくて済むかもなぁ……」


「そうだね〜、この世界に来てまで引きこもり生活してたらどうしようかと思ってたけど、

何も心配はなさそうね!」


女神の言うとおりオレはこの世界に来てよかったかもしれない。

オレは密かに女神に感謝していた。


「それと、なんか恋までしちゃってるし!」


女神はオレのほうを見ながら不敵な笑みを浮かべる。


…こいつ、オレの私生活覗いていたのか……?


「なんで知ってるんだ……?」


「ふふっ、私を誰だと思ってるのよ?」


女神は仁王立ちをして威張り散らすような感じで言う。


「しかも、男の娘に恋するなんてねぇ…?」


…よし!コイツはあとでシメよう!


「…ちょ、ちょっと、なんでそんなに笑顔で私を見るのよ?」


……おや、女神はオレの考えてることがわかったのかな……?


女神はオレを見ながら、怯えていた。



「それより、女神はここにずっといるのか?」


「いいえ、これからまだ行くところがあるから帰るよ!」


「そうか、なら魔力を補充するときはどうやって呼べばいいんだ?」


「……は?それは無理よ…」


女神はそんなのできるわけないじゃんと言わんばかりの顔をして言う。


…なんだよ、使えねぇ……。


「私より、あの子のほうがかなり魔力あるから、そっちに頼みなさいよ!」


「あの子、って……?」


あの子とは一体どの子のことを言ってるのだろうか?

皆目検討もつかん。


「ほら、君の片思いの男の娘だよ!」


「えっ!?」


ガタン!!ガシャーン!!


女神にハルさんのことを言われたのでオレはびっくりして作成してた武具をうっかり壊してしまった。


「な、なんで、ハルさんが!?」


「へぇ、あの子ハルって言うんだぁ……」


女神はイタズラな笑みを浮かべてオレの反応を楽しんでいやがる。


…くそっ!コイツ、女神じゃなきゃしばいてるところなのに!!


だがオレは高ぶる怒りの感情を抑えて冷静になる。女神のことはさておき、ハルさんのことだ。


「なんでそんなこと、わかるんだ?」


「あのね、私を誰だと思ってるのー!」


女神はオレの態度に呆れたのかプクっと頬を膨らませながら言う。


「私は女神よ、だいたいの人間のオーラや魔力なんてしっかりと視えるのよ!」


女神は相変わらず子どものようにプンスカと怒っている。


「……その魔力は、どれくらいあるんだ?」


オレの質問に女神はしばらく考え込んでいた。


…そんな難しいこと聞いたか…?


「うーん、そうだねぇ、なんて言えばいいのかしら、……うーん、………魔王ぐらい?」


女神は考えた末に出した答えだった。

だがその答えにオレはどう反応するべきか迷っていた。


…今、魔王って、言ったよな…?


「それって、魔王レベルの魔力があるって、ことか?」


「ええ、そうよ!」


「その魔力があれば、どれくらいこのアーマーを動かせれるんだ?」


「うーん、………人生百年分、かな」


女神は屈託のない笑顔で答えるが、オレからすればそれは驚愕で衝撃的なものだった。


「なんでハルさんはそんな魔力を持ってるんだ!?」


オレは女神の胸ぐらを掴み、ブンブンと揺らしながら尋問する。


「だ、だって、あの子は、魔女の生まれ変わりだから……」


オレはさらに衝撃的な事実を目の当たりにした。

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