サイコ・バレット

夜風

心の弾丸

零弾 支度

θ

「……ゃあな、そいつは置いてく」

「待ちなさい! ちょっと……!」


 絶望の色をした言葉を吐きながら、その男はドアの向こうへと姿を消した。

 引き留めようと叫ぶ声が、自分の耳を打った。

 つんざくような、悲痛で、悲壮的なその声は、いつまでも自分の耳に纏わりついた。


「……ごめんね、今日からおばあちゃんと二人で暮らそう」


 諦めと失望が入り混じった瞳で、すまなそうに頭を下げる。

 何が起きたのか、何で男は出ていったのか、まるで自分には分からなくて。抱き着いて、涙を流す祖母を見て、ただ腕を回し返すことしかできなかった。


 本当は、わかっているくせに、理解できない自分が許せなくて。


 そんな可笑しさが自分を苛つかせ、心をかき乱す。


 あの時わかっていれば、知っていれば、そんなたらればを空想する。


 全て自分のせいだというのに――――

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