おばあちゃんが死んだ

ママと二人っきりになっちゃった

おばあちゃんが死んだ。

先週まで元気だったのに。

部活や勉強で忙しいから

「別に良いよ」って何度言っても

「編み物は楽しいよ？やってごらん。教えたる」

そう言ってしつこかった。

「これも食べな」っていろいろ出してくるけど

太りたくないからもう食べないって言ってるのに

全然わかってくれない。

おばあちゃんが私に口を出してくるのは

ママが頼りないから。

結婚してすぐに父に浮気され、

そのあげく離婚を言い渡され、

抵抗もせずに離婚したママ。

父の顔は写真で見たことはあるけど、

匂いとか声とか、私は知らない。

父に会うのは私の権利だと思うんだけど、

「パパに会わないで…」

ママがそう言って泣くから、

物心ついてから一回も会ってない。

「会いたい」なんて、言えるわけない。

ママは優しいけどすごく頼りなくて、

いつもおばあちゃんに任せっきりだった。

食事の支度も、掃除や洗濯も、生活費も

私のことでさえ。

はじめて生理が来たときも「えー？」って言っただけ。

全部おばあちゃんが面倒見てくれた。

おばあちゃんが死んでから、ママはずっと泣いてる。

私も悲しいけど、ママみたいになりたくないから泣かない。

っていうか、ママが泣いているのを見ると

悲しさがすぅーっと消えて行く。

ママが笑ってても、楽しさがすぅーっと消えて行く。

ママが歩いてると、私は立ち止まりたくなる。

そんなママと、これからは二人暮らし。

これってもしかして絶望？

私ってもしかして、ヤングケアラーってやつじゃん？

おばあちゃんのいつも座っていた椅子に

私も座ってみた。

ママがソファに寝転んでテレビを見ている時も

この椅子にキチンと座って、編み物をしてたな。

おばあちゃんはもしかして、

ママみたいな子供を育ててしまったことに

後ろめたさがあったのかな。

だから私に、あれこれ世話を焼いていたのかな。

もう今となってはわからないけど

おばあちゃんがいてくれて、良かったな。

ホントに。

ホントに。