第22話 アラルの勇者
僕の名は川尻亮、友人はアキラと呼ぶ。
九州の長崎県の島の出身、以前は炭鉱で賑わっていたらしい、
島の至る所の古びた建物を、炭鉱時代のの遺産と言われてもむなしい。
高校に入る為の、健康診断書が必要になり、診療所に言ったが、
思わぬ事を言われる「あんた心臓肥大、いや腫瘍かも知れん」
15で死ぬのか、死亡宣言に聞こえた。
親同伴で話を聞きに行くと、「大学病院に紹介状を書くのが普通だけど、
一度、福島県の山都の山都町立病院に行かんかね?」躊躇気に話しだす。
医学部時代に同級生に、同様の所見持ちが居て、これは病気ではなく
末裔の遺産だと言った言葉を思い出したと言う。
医学部に懸かればモルモットだろうし、ご先祖様に何かを思い当れば、
同期生を紹介すると言う。
何気なく「爺ちゃん6本指だったね」、医者の顔色が変わった
「まさか…、本当だったのか」紹介状と住所のメモが渡された。
長い旅の末着いた所は、お世辞でも立派な病院とは言い難い。
頭のCTと胸のレントゲンを取られ、結果の話に成っるが、
自分の胸と頭の写真の横に、二枚づつ同じものが同様に張られている。
「これが君の写真、この二枚が僕、こちらが同世代の健康体、視てごらん、
じっくり比較してみて」言われるがままに見比べる、付いて来た親父も
穴が開く程見ていたが「おまえと先生の同じに見えるが」と動揺している。
それから、この身体の違いは、進化によるもので、一族と呼ばれる者だけの特徴
いずれ役に立つ時が来るからと、病気でも奇形でもないと言われ、
この地域の一族の多い成り立ち、一族の連絡網等の話も聞き、
ここに来て何故か知らない人に親近感を覚えて挨拶すると、笑顔で返される
不思議な体験、一体感が一族と言うものだと知った。
その後親子で移住したのだが…
壁の騒動後にスキルの向上は目覚ましく、身体能力の向上の他、
危険を察知する能力は、日常でも無意識に発動し、この変化に
この地を訪れた時の医者の言葉を思い出す
「進化によるもので、一族と呼ばれる者だけの特徴、いずれ役に立つ時が来る」
クランの話を聞いた時、参加を決意し父母に話すと意外にも両親も同じだった。
「俺は山歩きが好きで、歩きながら鉱物を探す、山師って事をしていてな、
これでも結構、石は詳しくてな、人工衛星で探査する様になるまでは、
需要も有ったんだが、まあ夢が無くなって、…
母さんと知り合った後、実家に篭って漁師してきた、お前が生まれてきたからな」
「私も薬草詳しいのよ、漢方薬の原料を元々採取で稼いでいたの、母さんの稼ぎが
妊娠で無くなって、父さんに頼ったの、でも両親も他界したから、二人食べるだけ
なら何とでもなるから、元気なうちに異世界に行こうかと話してたのよ」
「昔を思い出してワクワクしてな」「異世界は薬草の効果が高そうなのよ」
見た事の無い両親の姿に、親子三人で野山を歩くのも有りかとアキラは思った。
ーーー
アランはB級冒険者であり、ギルド内ではほぼ頂点にいる。
「ギルド長さんよー、俺も出るんですかい、初心者の訓練でしょうが」
不満タラタラと宣う様子に「先日ギルド内で伸びてた奴は何処の誰だ?」
「あれは例外でしょうが」「相手は、あの時点では登録なしの初心者だぞ」
「そんな奴が、今回の初心者研修に居るかもしれないって、ですか?
ヘイヘイ判りましたです、行かせて貰います」
ーーー
クランの訓練日、予想以上に人が居た。
僕も含め皆、フロンティアスピリットの血が騒ぐなのだろう、やる気が漲る
主催者の予定も超えた様で、急遽、隊列を成してゲートを超えた。
ゲートに足を踏み入れた瞬間、エレベータのフワリとする感覚と同じものを
感じたが、次の足を出した時には、異世界にいた。
標高 1000m程と聞かされていたが、成る程涼しい、空気も香りも違う。
前に付いて歩いていて気付かなかったが、列の方向が変り、目の前が開けた。
むき出しの地面が、ただただ広がっていて圧倒される「おい、歩け」注意され
再び列について歩く、止まり左を向けと指示された時、正面に人の群れが居た。
耳、牙、角、髪の毛代わりに獣毛、防具からのぞく手足に獣毛の有る者も
尻尾に爪…夢では無い…特殊メイクでもない、来たのだ異世界に!、心が躍る
「弱そうにしか見えんが」「期待して損した」落胆を口々にする言葉を耳にし、
「ザワ~ッ」と一族の全員の心に闘争の炎が燃え上がるのを感じる。
ーーー
ヤマトからの人数は異世界ギルドのの講師の役の倍ほどいた。
冒険者は調子に乗って、相手を初心者と舐めて2対1で構わんと見得を切った。
力量を図る為の模擬戦は呆気なかった、魔法やスキルも使わず、身体能力だけで
ほぼ全員の冒険者が打ち負け、力量を図る暇さえなかった。
「一対一だとこうはいかんゾ」アランも焦る、相手はアキラ
誘いで隙を見せても打ち込んでこない、逆に本気で打ち込みを掛けると、
予備び動作の段階で察知され距離を取られる、旨く打ち込みさらに踏み込む、
普通なら踏み込む速さに、バックステップで交わせるはずが…
何度目の攻防での踏み込みの際、アキラが体を回転させアランの腰を突いた、
手にする武器の柄で行ったもので、たまらず、たたらを踏んだ時、すでに
得物が首にあった。
「同じ繰り返しで間合いを覚えました、ありがとうございます」
笑うしかなかった、悔しいより、礼お言われて自分の愚かさに気付き、
相手の謙虚さと勤勉さに感服してしまい、これは負けを認めるしかなかった。
ーーー
この研修は数日続き、終えた時成果が表れた。
アキラの父母の相手は弱すぎ訓練にも成らなかった、戦闘力よりギルド貢献で
Ⅽ級になった様で、依頼の内容も採取や届け物、弱めの狩をする事が多く、
便利屋さんで戦闘の実力が無い為、遠出も出来ず燻ぶっていた。
二人の実力を知り、依頼が採取と探索と聞き、歩き回る事なら、仲間にと懇願、
ガイドとポーターでの世界歩るきを実現させた。
アキラがアランをギルドで待っていた。
ネットで見た事の有る四人が横を通る、無意識に見つめ過ぎた様で
「なんだ?」メンチを切られる。
「ネットで見たよ」怪訝な表情後「ああん」そこから質問攻めが始まった。
アランが到着した時、美咲の念話で呼ばれて、龍司も転移してきて、
状況をハークすると同時に、全員連れてヤマト・ランド転移した。
ドナウド三世による召喚と、ドラゴン・ランド分離からの現状迄が話される。
四人の動画もアップされ、家族も見ているが、死んだ事実が有り、
悪戯での処理となっている。
龍司としては、何れ合わせる予定だったが、本人達より家族が騒動を起こす事を
危惧して控えていたのを話した、その上でネットの動画を見せた。
改めて画像を見てブルっている、壊れた車体に減り込む自分を観るのだ、
冷静でいられないだろう。
「君達以上にご両親は取り乱す、この画像を見せたのも抑止の為なんだ。
冷静に話が出来ればいいけど…、君達の姿を観たら高郷に帰ろうと言い出す、
その後出てくる言葉は一族のせいだ、裁判だとなり兼ねない、そこ迄なら…」
言葉に詰まる僕の傍に美咲が来て手を握る
「あの極限状態の時、貴方が現れなければ、私は別人に成っていた、心を閉ざし
生きているだけだったと思います」三人も頷き雄二がハニカンダ表情で
「あの時、粋がってたけどよ、怖くて怖くて、何時殺されるかってな
そんな時、あの騎士達手なずけて、俺達に希望をくれたお前には感謝だ」
「粋がって居られたのも、法律とマッポのお陰だと知ったよ」武史がぼやく
志保が美咲の手を取りながら「また死ぬのかと思ったわ、二度目とか…」」
段取りを話して、対応を相談し、四人の携帯を復活させる。
「ププププ」「はい、安藤建設」「親父か俺雄二」
「声色迄真似て、何処のどいつだ、死んだ奴が俺俺言うか!」
「切るな!糞親父、切ったら浮気の事おっかーにチクるぞ」
「なななにお…お前ホントにユーか?」「あー、川井の坂で死んじまったよ」
「あの動画って事は生きてるのか?」「そっちじゃ死んでるだろうが糞親父!」
「ちょ…ちょっと待て」「おおい~、かか~何処いる、ユーだ、早よ来い」
「何言いよる、死んだもンが…、あんたボケたか騒いで」「ユーチクるなよ」
電話を渡される「糞親父が…」「あんた誰ね、死んだ息子の真似される…」
「グズグズ言うな、シミたれ婆~、ちゃんと聞かんか」「あっ、あんた…」
「今から言う事ちゃんと聞いて、親父と相談せんば」…
他の三人も似た様なやり取りの末、会う事に成る。
トラブルを避ける為、家族は当人のみの対応とした。
会うなり泣く事から始まる、落ち着いたら亡くなる前の継続事項の話、
さらに、死ぬ事に成った原因を愚痴りだし、最後に帰ろうとなる。
用意された部屋にドアは二つ、地球と異世界だ。
お互いが入った側のドアしか使えない事を実際に体験してもらう、
押しても、引いても入れない残酷な現実を。
会うのも一緒に過ごすのもヤマト・シティなら可能な事、
もしトラブル行動を起こせば、便宜は一切図られなくなる旨を告知する。
その上で四人はこの地にに居を構える為働く事。
家族は加護を与え出入り自由となり、改めて死亡している事を認識させる。
四人と共にアラン、アキラが加わり、アラルの勇者を立ち上げる事に成った。
ーアラルの勇者ー
アラン 中衛、遊撃
雄二 前衛、剣
武史 前衛、盾、槍
志保 後衛、弓
美咲 後衛、魔法、回復
アキラ 先鋒、探索、遊撃
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