キャラメル(書き下ろし)

冷たい廊下を歩いていた。

真新しい電灯の下、僕は歩いていた。

キャラメルを口に入れて噛まずにころころと溶かす、いつしか廊下には、カサカサと僕の歩いた軌跡だけが、取り残された。

廊下はやがて溶けていく、廊下の立っている人も、溶けていく、だんだん周りも溶けていって、ぼく、だけ溶けずにろ紙の底にいる。

甘ったるくなった口の中をほったらかして、今日も、夜が深けていく。

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