現実で死んだ俺は異世界で頑張る。え、死んでないの?
テイリル
プロローグ
何もない、ただだだっ広い空間に俺はいた。
よく思い出せないが何かの拍子で死んだことはわかっている。
ああ、そうか。俺死んだのか。
なんか儚い人生だったな。
思春期の頃は部活が大変で勉強も大変で色々なことに追われて死にたいと思っていたのに、いざ死んでみるとこうもあっさりとしているものなんだな。
もっとやりたいことは、ないが何かとても惜しい感じがする。
今更何をもがいてもしょうがないから座り込もう。
座り込んだら寝転がりたくなってきた。
死んだら脳がないのに考えることってあるのか?
もういいや、考えてもしょうがないし。
そのまま瞼を下ろし、眠ろうとした。
「...もう二度と顔を出さないでくれる?」
最近やったバイトのお客さんに怒られたことがフラッシュバックする。
「...あ!」
恥ずかしさと情けなさが入り乱れ、俺は誤魔化すように声を大きく上げる。
もう一度寝ようとする。
「...はあ!?」
バイト先の電話対応で何も変なことは言ってないはずなのにお客さんに怒られたことを思い出す。
「...もう!!」
寝ようとして何も考えないようにしているのに考え込んでしまう。
しょうがないから、ひたすら歩くことにした。
「本当に何もない空間だな」
口に出したってしょうがないが、何かを言ってないと気が狂ってしまいそうで声を発する。
「元気ですか!!」
大声で声を発する。
元気ではない。俺は。
なんとなく走ってみる。
走ると息が上がる。
息が上がり心拍が速くなる。
辛いが生きているって実感する。
ん? 死んでいるんじゃなかったんだっけ?
それをわかった途端にやめた。
もうどうでも良くなり、上を向いてへたれこむ。
本当に何もない。
「情けないですね」
どこからか声が聞こえた。
咄嗟に上半身を上げる。
「あなたは死んではいないです」
どういうこと?
「上をよく見てください」
え? そこには自分自身が何も変わらず学校に通っている姿が見えた。
「何にも変わり映えがしない毎日ですね。楽しいのですか?」
そんなこと言われても、どうしろというんだ。
まだ成人にもなっていない学生だし。
「友人もいないみたいですね」
うるさい。
「あなたのこれからをもっとより良いものにしていくために異世界で人生訓練をしてもらいます?」
人生訓練?
「異世界は好きでしょう?」
まあ嫌いではないけど。漫画や小説で見ただけでよくは知らないし。
「ではこれから人格形成プログラムを開始します」
「待って! 死んでないってどういうこと?」
どこからか息を吐く音が聞こえる。多分ため息だ。
「上を見てください。只今、現在午前8時半。あなたは何も変わらず今学校に通っている最中です」
確かにそうだ! なんで!?
「今あの中には、私の従者が体を動かしています」
ちょっとドン引きした。自分の体を他人が動かしているなんて。
「あの従者にはあなたの今までの記憶がインプットされています。あなたの今までの行動、考え、これからやるであろうあなたの選択全てが」
うーん、ん?
「...つまり、あれは今までのあなた本人です。私が魂だけを抜き取りました」
え、なんで!?
「あなた、最近死のうとしましたよね!?」
まあ、そうです。
「そういう方にもっと命を大事にしてもらおうと作ったのがこのプログラムです。あなたはこれから今まで住んでいた世界と全く違う、異世界という世界で暮らしていくことになります」
それを言われた途端、急激に元の世界に帰りたくなった。
「どうやって帰れる?」
声の主は、少し沈黙した。
「さあ? いつか帰れるんじゃないですか?」
「ふざけんな!! 俺の生活を返せ!!」
「捨てたように生活をしていたのによく言う」
声の主にそれを言われたあと、周りが真っ暗になった。
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