学校一のイケメンに求愛されて困ってます。

雪ウサギ

第1話 癒やし

「よしよし、元気いっぱいだね。」

生物部の彼は、うさぎ達に癒やされながら世話をすることが毎日の日課となっている。

「美味しい?いっぱい食べるんだよ。」

人参やキャベツを与えながら、動物達に語りかければ嬉しそうな表情をみせる春斗。


しばらくして世話を終えて帰ろうと振り返ると、ある人物と目が合う。

「なに?」

「いやー俺もうさぎが見たいなぁなんて!」

相手は彼が振り返ったことに驚いてスマホを落としたようだ。それになんだか慌てている様子である。


「良かった、さっきのデータ無事だった!」

その人物は急いでスマホを拾うと、安堵したような表情をみせた。

何か大切なデータでも入っていたのだろうか?


「じゃあ僕は帰るから、見たいなら見れば。」

「えっ、ちょっと待って!君生物部の子だよね!」

「そうだけど…」

春斗はそのまま帰ろうと歩みを進めるが、その人物が邪魔をしてなかなか前へ進めない。


「えーと俺も動物好きだから仲良くなれたらなーって思って!」

「帰る」

「なんで!?じゃ、じゃあ名前だけでも教えてよ!俺は2年の七瀬千隼ななせちはや、よろしくね!」

「嫌です」

ぐいぐい迫る相手に対して、彼は不審に思いつつ冷たい態度を取り続ける。

急に名前を聞いてくるのに、大した用件もなさそうでいかにも怪しい。

その人物は春斗の返答に残念そうな表情をすると仕方なく道をあけた。


「じゃあね、また会いに行くから!」

「来なくていいです」

あんなに冷たい態度をとっていたのに、まだその人物はニコニコしながら会いに来るというではないか。

これは一体どういうことなのだろう?

春斗は足早にその場を離れると、先程の人物の言動について考えながら帰路についたのだった。








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