バディ・ソウル:オーバーライド

加持蒼介

Field 0 記録された未来

 eスポーツは21世紀に入りその人工を増やし、その数は2020年には世界全体で4億人を突破、2050年には30億人に膨れ上がる一大産業になっていた。

 それに伴い職業として活躍するプロゲーマーも増加。世界各国で大会が開催され、賞金は1億円を超えるほどの一大産業へと発展を遂げていた。

 日本でも法律の緩和から、2030年以降、eスポーツが盛んになる。2037年に世界各国の政府が推進した『国民電身化計画』により、人類は仮想空間へのアクセスが脳内のナノバイオマシンを通じて感覚的に可能となり、日常生活に欠かせないものとなっていった。


 2058年、パラダイムシフト社が開発した対戦型仮想空間シューティングゲーム『バディ・ソウル』が圧倒的なシェア率を獲得し、eスポーツ界で不動の位置に君臨するゲームとなる。

 仮想空間を使用したバーチャルリアリティゲームが盛り上がりを見せるなか、四年後の2062年に不可思議な事件が起きた。

 とあるゲーマーが偶然撮影した現実世界での映像に仮想空間ゲームの敵に酷似した人体型の人影が映り込んでいたのだ。


 警察の捜査により、男性が装着していたヘッドギアが『バディ・ソウル』の開発元であるパラダイムシフト社制のものと判明。

 男性は撮影時には仮想空間からログアウトした状態であったこと。直前まで装着していたヘッドギアのままたまたまベランダに出たところ、その人影をヘッドギア越しに確認して咄嗟に撮影したことが警察の捜査でわかった。


 警察が同社製のヘッドギアを装着して人影の存在を実際に確認することに成功するも、調査に当たった警察関係者が全員謎の死を遂げる。

 同年、パラダイムシフト社の内部告発により、一連の事件が同社のAIによる暴走が起因されることが警察上層部に報告される。


 翌年の2063年、増え続ける突然死の原因を隠しきれなくなった政府は事実を公表した。

 その内容は、パラダイムシフト社のAIシステムによる人工衛星のハッキングで仮想空間が常時強制展開されていること、またそれによって仮想空間と現実との境がなくなり、暴走した仮想空間ユニットが電身化した人間に危害を加える可能性があることが世間に知れ渡ることとなる。


 政府は仮想空間ユニットをイドラ(幻影)と命名。また、これらを掃討する大規模な作戦を自衛隊が展開するも、仮想空間での戦闘に慣れていない自衛隊は苦戦を強いられることとなる。


 疲弊する戦いのなか、2064年には日本国民の数は三分の一にまで減少していった。世界多発的にイドラによる侵攻が開始され、電身化を推進してしていた国々を中心に大混乱が生じる。


 同年の夏、この事態を人類滅亡の危機と判断した世界の主要政府は国連解放軍を設立し団結する。これにより、対イドラとの第一次仮想空間大戦が勃発。


 世界は現実と仮想空間を巻き込んだ混沌の時代を迎えることとなる。

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