ひとり

ひとり。


それはただ一人でいるということ。


それはただ独りであるということ。


ひとり。


部屋に響く呼吸音は小さく、一定のテンポで行われ、口は言葉を発することなく、よって耳が捉える音はない。


静寂。


ひとりであることを際立たせるものがある。


それは他人だ。


自分とは違う呼吸のリズム、発する言葉を受け答えの言葉、それを捉える耳、感じる体温。


それらすべてが違っている。


声が違う。言葉が違う。音が違う。リズムが違う。テンポが違う。体温が違う。場所が違う。顔が違う。体型が違う。


自分と全く同じ存在などない。


私は、ひとり。


ひとりきりだ。


そして君が去ったとき。


一つになった呼吸音、聞こえない声、消えたあたたかさ。


それらがなくなって、自分だけになる。


これこそ本当の孤独だ。

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