ゲームで恋をしたら相手が同性の既婚者だった話

Lake

第1話「ゲームでも一目惚れはある」

「初めまして! やっと会えましたね!」


 私は格好良い男性キャラクターを操作しながら、約束の場所について、目の前にいる同じような背丈の男性キャラクターに声をかけた。Twitterでは何度か話してはいたものの、ゲームの世界で会うのはこれが初めてなのだ。

 良い人だったらいいなあ。楽しく遊べたらいいなあ、なんて思って反応を待っていると、彼が、此方に視線を向けた。

 その瞬間、容姿が特にこれといって好きと思う部分はなかったのに、ただ綺麗な金色の瞳だな、と思っただけなのに──それでも間違いなく私は、ゲームで出会った彼に、彼女に、一目惚れをしたのだ。


 それから、何度も交流を重ねた。Twitterでゲームで遊ぶお誘いをしたり、ただただ日常会話のようなものを繰り広げたりするのも、楽しかった。……薄々気づいていた。私は、この人に恋をしてしまっている、と。けれど出会いはゲームだぞ、Twitterだぞ、そもそも、恐らく男性キャラクターを操作しているものの、喋り方からこの人は女性だぞ……?! 私も女だぞ……??


「なんで……?!」


 パソコン前で小さく呟いて、顔を覆って……自分がおかしいんだろうと思った。こんな実際会ってもいない人に恋をするなんて。相手が私のことを好きなはずはないし、迷惑をかけるのだからこの感情は閉まっておかなければ。そう、要らないのだこんな感情は。……そもそも私には彼女がいる。恋人には誠意を持って接しなければいけないというのに、私はどうして他の人を、しかもゲームで出会った人を好きになってしまったんだろう。最低だ。クソ野郎だ。死んでしまえと何度も自分を責めた。


 ──心臓が貫かれるような一目惚れだったのだ。好きな容姿でもない、会ったばかり、性別もわからない、でも……雰囲気が酷く穏やかで、優しくて、ああこの人しかいない、この人に出会うために生まれてきたのかもしれないと思う程、謎に苛烈で激情を含んだ恋心。


 こんなの知りたくなかった。でも、感情は日に日に増すばかり。こんな感情を持ったまま彼女と接していて本当に誠意と呼べるのだろうか。彼女の為を思うのなら話した方が良いのだろうか。悩んで、悩んで、何度も忘れようとした。色んな人とゲームで遊びまくって、寂しさを埋めて。どうしようもない感情に蓋をした。


 ──筈だったのに。


「すきです」


 どうして。


 どうして、この人も私と同じ思いなんだよ。


 嬉しい筈なのに、泣いて喜ぶところなのに、両想いなことに絶望してしまった。だって、私には付き合っている彼女がいて──この人だって、男性と結婚していたのだ。


 どうやって叶えろというんだ、こんな絶望的な恋を。

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