ヤミに囲まれながら、僕は一筋の光を求める
木種
プロローグ 2ーA「多加良 将」
「どうして僕は、いつもこうなっちゃうんだーーー!」
目の前で婚姻届けを片手に立つ彼女を見て、
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
この学園において、人気のある男子生徒は二強だと言われている。
クールな顔立ち、学業優秀かつ教師である父の血を引き継いだ教え上手な
笑顔輝く好青年、テニス部部長でスポーツ全般においてセンスが良く、リーダーシップのある
しかし、その陰に隠れて密かに複数の女性から好意を受けている男が一人。
それが多加良将だ。
突出した部分を上げろと言われれば、先の二名と比べて学業は学年360人のなかで100位程度、長距離走がすこし得意なだけで成績は5段階中3,前で引っ張るというよりも相手の考えを一度受け取り理解しようとするタイプで特にはないといってもいい。
ただ、聞けば分かる通り、能力面のコスパが良い。加えて顔面偏差値は55。こちらも隣に居て恥ずかしくなることは少ないだろう。
だからこそ、高嶺の花に手を出そうとするよりも狙いやすい存在の彼に目を付けられる堅実な人間、あるいは観察眼の優れている人間は二人の取り巻きがわーきゃーしている間にここに手を出し始める。
「多加良くん――」
その先に待ち受ける沼に気付けずに。
◇◇◇◇◇◇◇◇
さて、作品を進める前に、これだけは言っておきたい。
この世には人の内面的な思考や、言動を形容する言葉の一種として「ヤンデレ」や「メンヘラ」がある。
この二つを一括りにするのはやめて欲しい。
たしかにどちらも感情の暴走が激しい面や依存気質を持ち、それゆえ人間関係に問題が起こりやすい存在だ。
しかし、その起因の対象がそもそも違う。
「ヤンデレ」は大切な相手を、「メンヘラ」は自分自身を思って行動に直結する。
だから前者は相手に依存した場合、そこから逃れる選択肢を持ちにくいが、後者は新たな依存先を探し始める。
そしてなにより「ヤンデレ」に自傷癖は常備されていない。傷をつけるのは邪魔者にだ。
とにかくはこの2点を把握してもらえれば有難い。
それではメンヘラ製造機ならぬヤンデレ停留所になってしまった多加良将のコレクションをご覧いただこう。
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