シミ
三夏ふみ
シミ
こんな日に限って、
エアコンも動かない。
気休めでつけた、
扇風機の独特なリズムが、
なまぬるい部屋をかき混ぜる。
雨音はまだ止まない。
眠れず見上げた天井に、
見覚えの無い、
シミを見つける。
ついていないときは、
とことんついていない。
これって、
敷金はどうなるんだろう。
ぼんやり考える。
虚ろな目が、
泳ぐ。
その先に、
またシミを見つける。
ひとつふたつ。
寝返りをうつ。
壁にシミ。
見つめる。
耳障りな雨音。
仰向けになる。
増えている。
吹き出た汗が背中に張り付く。
位置が違う。
目が離せない。
ゆっくり動き出す。
水面に映る、
小魚の群れのように。
ああそうかこれは夢だ、
夢なんだ。
安堵から思わず笑う。
幻想的な光景を追って横を向くと、
壁一面に広がったシミが、
大きく口を開ける。
扇風機の独特なリズムが、
だれもいない部屋をかき混ぜる。
雨音はまだ止まない。
シミ 三夏ふみ @BUNZI
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