第21話 変異種



「"聖なる光よ、我らを照らしたまえ"ライト」


 ライトで周りが明るくなり奥の魔物が見えた。


「あれは、シャドウウルフでしょうか…ですが、少し雰囲気が違う…変異種エボルブでしょうか…?」


 ソフィーさんが考察していたが、間もなく冒険者たちが奥へ走っていくとシャドウウルフが咆哮ほうこうしてきた。


 途端に、ほぼ全員の動きが固まった。


「なんだこれ、動けねぇ…!」


「どうなってるんだこれは!」


 全員がざわめいていたが、奥へ走っていった前衛の人達だけが動けなくなっているみたいだった。


 後方でいた私とソフィーさんと他の魔法使いの冒険者と前方にいたグレイさん含め数名は動けていた。


 原因がわからないけど、動ける前衛は全員シャドウウルフに向かった。


 魔法使いはアンチドートと言う状態異常に効く魔法を使ったら、動けるようになったようだ。


「シャドウウルフだと仮定すると、気をつけることは影に隠れて攻撃してくることと影を使って棘を出してくる闇魔法です。」


 先行していたグレイさん達冒険者はシャドウウルフに攻撃しようとしているが、確かに剣や槍は届いているのに当たらないようだ。


「こいつは、普通のシャドウウルフと違って物理は効かねぇ! 魔法が使える剣士は魔法を使って攻撃してくれ!」


 グレイさんが指示し、武器に魔法を纏わせて攻撃しようとするとシャドウウルフが的確に避けてきた、どうやら魔法は効くみたいだ。


 攻撃はシャドウウルフと同じで影を使った移動と影の棘を地面から出してくる。


 ガウッと鳴いた後に攻撃が来るので対応はできているが、頭上のライトの上と森の中から棘を飛ばしてきたりもしてくるので厄介な敵だ。


 何名かの冒険者もそれに耐えられず負傷していて下がってきた。


 かすり傷や切り傷はファストエイドで治せるが重症になってしまうと私ごときでは治せない。


 とは言え他の魔法使いは攻撃魔法もしているので、何もできない私がするべきなのに…


 でも、グレイさんが流石Aランクなのもありほぼ一人で前衛で攻撃していて、周りの冒険者はそれに合わせてできるだけヘイトをもらうように動いていた。


 だが、それもすぐにできなくなってしまった。


 シャドウウルフの口から黒い霧が出てきて辺りは霧に包まれて光も通さなくなってしまって、グレイさんも敵の位置を正確に把握できなくなった。


「ソフィー! 風魔法で霧払いしてくれ! このままじゃ全滅する!」


「わかりました! "風よ、風よ、その優しき風──」


 詠唱を唱える途中でソフィーさんが何も喋らなくなった。


 どうなってるの…?近くにいるソラ以外誰も見えない…怖いよ…あれ、なんかクラクラする…


「ソラ…大丈…夫…?なんか力が…入ら…ない…」


 パタリと体が制御できず倒れてしまった。


 ソラがウォンウォンと吠えているのが聞こえるが体が全く動かないし気も遠くなっていく。


 これは…毒なん…だろうか…ダメだ…何も考えられない…


 天音は気を失った。

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