第18話 前線へ

 


 魔力弾の精度と威力の調整も良くなって少しした後、グレイさん達が前線から下がってきた。


「おう、ソフィー。怪我の治療はもう大丈夫なのか?」


 グレイさんが、ソフィーさんを見て少し申し訳無さそうな顔をしていた。


「えぇ、見ての通り足を治せる人はいませんでしたが傷は治りましたよ、そちらはどういう状況で下がってきたんですか?」


「あぁ、とりあえず第2波のスタンピードが終わって補給に来たって感じだな。まさか嬢ちゃんまで来るとは思わなかったが、前より魔力の安定感があるし大丈夫か。」


「はっはい! 付焼刃かもしれませんが、魔力弾と魔道具のシールドがあるので、できることはしたいと思ってます!」


 グレイさんがいつもと雰囲気が違うから少し怖く感じる。


「攻防どっちもできるなら問題ないな。ソフィー、引き続き後方で防衛を頼む。今回のスタンピードはセオリーから外れすぎて嫌な感じがしてならねぇ。」


「やめてくださいよ。グレイのそういう感って大抵嫌なときほど当たるんですから。」


 ソフィーさんがため息を漏らしながら話していると、急に周りの空気が冷たくなるような感覚に襲われた。


「っ! 第3波がもう来たってのか! ソフィー! 嬢ちゃん! 俺らはまた前衛に戻るが、もしもの時は逃げろよ!」


 グレイさんが向かっていく方向に紫色のような禍々しい何かがあった。なんでなのか、あれを見てると気持ち悪くなってくる…


「ソフィーさん…あれは何なんですか…?」


「あれは魔族が使う空間魔法です。魔族の魔法は人族と違って魔素が違うのであのような色になるのです。後、魔族の魔素は過剰に体に取り入れると魔族ではない限り毒なので気をつけてください。天音さんは危険な好奇心などはないと思いますが、魔族の空間魔法の中には間違えても入らないようにしてください。」


 ひぇ…死にたくないし気をつけよう…


「わ、わかりました…絶対近づかないです!」


 ソフィーさんが「よろしい。」と言いながら頷いて椅子から立ち上がった。


「余談ですが、先程魔族が使うと言ってましたが、今回はスタンピードなので土地自体が使っている魔法になるので規模がだいぶ違います。普通の魔族が使う10倍くらいでかいので違いはわかりやすいと思いますよ。大体は2~3波来てモンスターを全滅させると沈下できます」


「じゃあこれを乗り切れば終わるんですね! よかった…」


「そうですね、今回は空間魔法のサイズも大きいですし土地の魔力も無くなって休眠に入ると思います。」


 まだまだこの世界の知識がないから色々と覚えないといけないな…


 第3波の戦闘が始まって森の方で戦っている音がしている。


「さて、ここで待っていても良いのですが、先程戻ってきた人数的に少し不安なので私も前線に戻りますね。天音さんは引き続きここで後方の負傷者を守ってあげてください」


「え…その足で前線に戻るのは自殺行為ですよ!」と言いたくなったが、ソフィーさんは覚悟を決めたと言う面持ちでいた。どうしようもなく怖いけど、もう身近な人に誰も死んでほしくない…!


「……いえ! 私もソフィーさんについていきます! 私はソフィーさんを守るために来てるので!」


 私も冒険者をするんだから覚悟を決めよう…これからもこういう危険なことはあるんだから。


 ソフィーはため息混じりに「…過保護もよくありませんよね。わかりました、では前線へいきましょう。」と言ってくれた


 少し恐怖に震えながら天音はソフィーと共に森に向かった。

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