第17話 魔力弾

 


 ソフィーさんに肩を貸しながら、イセリアの門まで向かっている間に、スタンピードで出てきているモンスターの詳細を教えてもらった。


 スタンピードのモンスターは魔の森の本に載っていたモンスターに加えて、キラーアントと言う地底モンスターも出てきているらしい。


 ソフィーさんの足を切断したのもそのキラーアントだそうだ。


「今回のスタンピードは、それなりに大きい規模で、そう言った時は別の地域のモンスターは出ないのがセオリーなんですが、そういったセオリーに慢心した油断した結果がこれです。」


 そう言いながら、ソフィーは自嘲気味な笑みを見せた。


 片足が無くなって尚、戦場に行こうとしてるのに、何故ソフィーさんがこんな顔をしないといけないんだろうか。自分のやるべきことだと、頑張っている人が、イレギュラーでこうなってしまっただけなのに。


「仮に油断なのだとしても、こんな怪我をしてもう一度戦いに行こうとしてるんですから、私はそんなソフィーさんを尊敬します」


「……ありがとうございます、イセリアの入り口に着きますのでもう肩は貸していただかなくて大丈夫です。お手数おかけしました」


 少し頬が赤くなっているように見えたけど気のせいかな…?




 イセリアの門に着いたら、扉の前に軽傷者を治療している医者と冒険者がいた。


「ここで軽症者の治療をしてすぐに戦闘に戻れるようにしているんです。外に出て少し奥に行けば戦闘になっているはずなので、行きましょう」


「はい!」


 門を出て、魔の森の手前の丘で戦闘が起こっているのが見えた。


「天音さん。私がやられたように地中でもモンスターは居るかもしれないのでできるだけ近くでいてください。探知魔法を使って敵の位置を把握しておくのでもしもの時は魔道具で防御して対処するように。」


「わかりました! 一応魔力弾は使えるように覚えているんですけど使わないほうがいいですか?」


「使えるなら使っていただいて構いませんが、誤射はしないように気をつけてくださいね」


 絶対間違えないように気をつけよう…


「最前線はグレイと他の冒険者が戦っていると思うのでそちらはおまかせしても大丈夫だと思います。今はここの後方で流れてきたモンスターを倒しましょう」


「わかりました!」


 グレイさんは大丈夫なんだろうか…でもめちゃくちゃ強そうだったし大丈夫だよね! それに心配する前にスタンピードを乗り切ることを考えないと死ぬかもしれない。


「今のところ探知に引っかかっているのは今戦っている方達の敵のみですので、とりあえず休憩しておきましょう。」


「戦闘に加わらなくてもいいんですか?」


「今戦っている戦闘に加わっても、連携も取ったことのない相手を助けようとしても邪魔にしかならないことのほうが多いですし、一人でどうしようもない時は変にプライドが高い人ではない限り助けてほしいと素直に言ってくるはずですよ。」


 確かに、邪魔になるかもしれない可能性もあるのか…今後こういったことがないと思いたいけどあった場合は考えて加勢しないといけないな。


「わかりました、すぐ片付けれるのでこの椅子に座ってください。」


 と言って、折りたたみ椅子を買って取り出す。


「そうですね、それなら座らせていただきますね。」


 今のうちに魔力弾の練習をしておこう。


 魔力弾は魔力をそのまま弾にして打ち出す魔法で、魔力に依存する魔法だからイメージで言うと拳銃かな?


 指の先に魔力を溜めてそれを飛ばすイメージ…あの木の真ん中に当てる…よし…撃つ


 バシュッと指先から音が出て魔力弾が木を貫通して穴が空いた。


「天音さんは魔力の込め方がとても上手ですね。ですが、結構小さな穴ですのでもう少し魔力を込めたほうがいいかもしれませんね。大きい方が魔物を倒しやすいので。」


 銃の弾のイメージが強すぎて細くなりすぎたのかな?次は少し多く魔力を込めて撃とう。


 魔力弾の形状を大きくして放つと木が抉れるように折れた。


「それくらいなら魔物にも使えるでしょう。戦闘の時後方に魔物がいた場合はそれで対処をお願いしますね。」


 ソフィーさんの役に立てるんだと思うと、そうなって欲しくはなくても、なって欲しいなと少しばかり思う天音であった。

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