第3話 初めての街

 

 食事を終えて採取クエストに向かっているところで近くの街のことを教えてもらえた。


 街の名前はイセリアというらしく、魔の森付近なこともあり宿と食事処が多いらしいので、宿はとりあえず確保できそうで安心した。


 魔の森の魔獣は結構強いらしく、駆け出しが生き残ることはほぼ不可能と言われるくらいには絶望的だったらしい…グレイさんとソフィーさんに出会えてよかった!


 採取の内容は薬草とさっきの湖での水だそうで、後は薬草だけ取れれば終了だそうだ。


 採取場所に到着した所で、グレイさんが「俺は薬草のことは全くわからねぇから戦闘と荷物持ち担当だ!」と堂々と言ってたけど、わかる気がする。薬草を見分けるのはとても難しそうでどれも似たようなものなのに形を見て、匂いを嗅いで判断している。


「ソラなら狼だし、匂いならわかると思うんですけど手伝えないですか…?」


「お、そりゃいい。ソフィー、嬢ちゃんの犬っころが手伝ってくれるってよ!」


「ワフッ」とソラがやる気を見せてくれていたが「ありがたいお願いですが、もう少しで終わるので大丈夫です。それにこれは私とグレイが受けた依頼でもありますから。」と断られてしまった。真面目だ…


「わ、わかりました…」と少し無言の間ができた後、「よし。」と言って立ち上がった。ソフィーさんの採取が終わったようだ。


 街までの道では無事森を抜けられた。


 森を出て街までは徒歩で大体20分くらいらしい。辺りは草原と丘が広がっていて、都会ぐらしだった私からするとすごく素敵だと思える風景だった。ソラも嬉しそうでよかった────


「え!?嬢ちゃんどうした!?」


 突然グレイさんが私に言ってきて「ちょっと、グレイ!天音さんになにしたんですか!」と杖でぽかぽかと叩かれるグレイ。


「何を───あれ?」頬を伝う涙に驚いた。


 多分色んな感情があったんだと思うけれど、前の世界でもソラを散歩する以外にお出かけとかはしてあげられなかった申し訳無さと、今喜んでもらえていることに自分が思ってる以上に嬉しかったんだろう。


「す、すみません!大丈夫です、多分森から出て気持ちが緩んだんだと思います!」と答えておいた。


「そうですか、なら良かったです」


「俺は全く良くないけどな!!!なんで何も聞かずに叩いてくるんだよ!」とまた少し喧嘩をしていたのをみてほっこりした。




 落ち着いた所で、街に向かっている所で街に入るにはお金を払わないといけないそうで、冒険者は登録してると無料で通れるらしい。


 パスポートみたいなものなんだろうし早めに登録しておきたいなぁ、などと思っていたけどここはファンタジー世界。私みたいなミジンコみたいな人間でも登録できるんだろうか。


 日本みたいにミジンコでも助けてくれるシステムなら嬉しいけど…とりあえずグレイさんとソフィーさんにお願いして、冒険者ギルドまで付いて行くことにした。頑張った…私…



 途中疲労もあり休憩しながら無事イセリアまで到着。


 門番さんが「ギルド証か通行料銀貨5枚です」と言われ、ソフィーさんとグレイさんはギルド証を提示した。私はお金がないのでアタフタしているとグレイさんが「こっちの嬢ちゃんの分だ」と支払ってくれた。優しい…!


 グレイさんが顔を耳に近づけてきて「出世したらお返し期待してるぜ」と冗談交じりに言ってきてくれたので、申し訳無さが少し薄れて絶対モテるんだろうなと思った。


 ギルドに到着して入ってみたら、意外と多種族の人たちがいた。獣人、エルフ、ドワーフ、ヒューマン…あれ?なんか私見られてる…?なんで?なにかしちゃいましたか???ちょっと怖いからソフィーさんの近くに寄って歩く。


 目線を見るに見られているのは、ソラだ。テイマーって最初に言われたっけ?珍しい職業なのかな?


 受付まで着いたらソフィーさんが、「依頼を達成したので確認をお願いします。」と受付の女性に依頼品を渡し「確かに受け取りました、確認に回しますので少々お待ちください。」と裏に持っていった。


 数分後、受付の人が帰ってきた。「どれも間違いなく依頼品の物でしたのでクエスト完了です。お疲れ様でした!」と満面の笑みで報酬を渡していた。眩しいなあの笑顔…


「後、この子の冒険者登録をしたいのですが今構いませんか?」とソフィーさんが取り次いでくれた。


「構いませんよ、こちらにお名前と職業を記入し、血を一滴で構いませんのでそのカードにつけてください。」


 えっと、藤宮天音、職業はテイマーかなぁ~、そしてこの針で血をとる~………血!?自分で刺すの?怖い怖いムリムリムリムリム───


「嬢ちゃん怖いのか?だったらちょっと針貸してみな」


「え、あっはい…」


 グレイさんに渡した瞬間、躊躇ちゅうちょなく指に刺された


「いったああああぁぁぁぁ……くない?」


「だろ?コツがあるんだよ。その血を垂らしな。」


 指先から血が垂れた瞬間、カードがポワッと光った。


「はい、これで登録完了です。お疲れ様です、お時間ありましたら簡単に冒険者のご案内をさせていただいてもよろしいでしょうか?」


「よ、よろしくお願いします…」


 う、受付嬢さんすごいクールだ…慣れてるんだろうな……


 説明内容は要約すると



 ※ランクがFランクからAランクまであり、国王に認められたAランクの中でも優秀とされた方を特例としてSランクとしている。


 ※1ヶ月依頼を受けないとギルド証の再発行になる


 ※依頼の失敗にはペナルティーがかかって5回失敗するとランクダウンもしくはギルド証の剥奪はくだつもある


 ※試験等は無くみんなFランクスタートで、依頼を10回達成していくことでランクが上がる。


 ※冒険者ギルド内での暴力行為など、ギルドに不利益になる行為もギルド証の剥奪



 登録が終わって、グレイさんとソフィーさんが泊まっている宿に泊まることになった。3日分の宿代を、ソフィーさんが負担してくれると言ってもらえて、自分がヒモ過ぎて泣きそうになった。


 二人は依頼が終わったけど、宿を一週間分取っていて後3日程滞在してから拠点としている街に戻るらしい。


「何かわからないことがあれば、この部屋にいるので訪ねてきてください。」とソフィーさんに鍵の番号を見せてもらい解散した。

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