第22話 救出作戦

「ゴッドウィンドが皆さんを助けに来てくれています。被災者の方々は声や音を発して存在をアピールしてください」


 最初に到着した中学校から自衛隊によるアナウンスが流れる。


「さあ!あんたのその聴覚で埋まってる被災者を探し出して!」


 俺の背中にいる韋駄天が叫ぶ。はいはい。わかってますよ。俺は耳を澄ます。早速ヒットだ。俺はその地点に飛行する。


 瓦解した一軒家の瓦礫を取り除く。その下から目を泣き腫らした幼い少年が姿を現す。


「ゴッドウィンド!本当にゴッドウィンドだ!」


「やあ!君のようないたいけなキッズを救出して読者の好感度アップだ」


「何を言ってるの・・・?」


「ごめんよ。大人の事情だよ。今から君を助けるから安心して」


「僕以外にもパパとママも埋まってるんだ。助けてよ!」


「小説の都合上、省略するけどちゃんと助けるから安心して」


  俺は少年の元に寄り瓦礫の中から救い出す。韋駄天は少年をおんぶして膝を落とし身構える。


「ちょっと飛ばすけど我慢してね」


 韋駄天はそのまま少年とおぶったまま加速し消える。数秒後に戻って来た。こいつの能力はこうやって超高速で移動出来ることだ。


「さっきのキッズは?」


「避難所まで連れて行ったわ。ちょっと吐いちゃってたけど。これでもスピードを抑えてるんだけどね」


 こうした要領で俺と韋駄天は次々と被災者を救出していった。ああ、俺の能力がこのためにあったのだ。こうして人々を命を救うために。いま、俺は自らの存在意義を完全に見出したのだった。読者諸君、この俺がそのような高尚なことを思うとでも?それは甘い。これを70時間以上ぶっ続けだぞ。70時間以上だ。どんなブラック企業も真っ青になるレベルだ。


 というわけで俺と韋駄天は自衛隊の給水車のホースから放たれれる放水によって泥だらけの全身を洗われている。このクソ寒い真冬の東北地方で。韋駄天は自らの能力である加速能力により身震いによってあっという間に自らの身体を乾燥させた。羨ましそうに見ていると奴は気を利かせたのか俺の身体も超高速の振動によってあっと言う間に乾燥させてくれた。おえ、何だか吐きそうだ。

 

「ゴッドウィンド、韋駄天のお二方には大変お疲れ様です。現在は一旦、休憩時間となりますのでしばしゆっくりとご食事頂きたい」


 ここは中学校の体育館。俺と韋駄天は長机の前に無造作に置かれたパイプ椅子に両者座らされ餌を待っている。


「韋駄天、もう何時間経った?」


「もう30時間になるわね」


「というわけは。あと40時間あると?」


「ざっくり言うとそうなるわね」


「なあ、俺ら超人に人権って無いのかな・・・」


「あんたみたいな穀潰し、こんな時でもなけりゃ役に立たないでしょう」


「・・・・・・」


 こうして無駄口を叩いてるうちに飯の時間だ。自衛官数名によって俺と韋駄天が座る前の長机に弁当と緑茶のペットボトルが置かれていく。明らかに韋駄天の方が数倍の量が置かれてるのか。


「お前はフードファイターかよ・・・」


「私はね。この小さな身体に似合わず基礎代謝が常人の数倍だからそれだけエネルギーを欲するのよ」


 そう言って韋駄天は目の前に置かれた大量の弁当と緑茶のペットボトルを加速能力を活かして一気に平らげていく。


「さあ!腹ごしらえも済んだし行くわよ!」


「ちょっと待ってくれ。俺はまだ・・・」

 

 加速能力を活かして韋駄天は俺の口内に弁当とペットボトルの中身をぶち込んで行く。俺には食事を楽しむ自由すらないらしい。


 またも俺は韋駄天をおぶって救出活動に出動する事に。


「さあ、行くわよ!」


「はいはい」

   

 俺は気乗りしない返事をして再び飛翔する。天空では相変わらずアマテラスが光り輝きながらここら一帯を常夏にしているのであった。

 

 





 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る