あなたが支えてくれたから

神楽堂

第1話 春

先輩のことが大好きです。

何でも教えてくれるし、とってもしっかりしているので尊敬しています。


ある春の日、私はまったくの初心者としてお仕事を始めました。

私のお仕事は、みんなの食べ物を作ることです。

といっても、料理をするのではなく、食材を作ると言った方がぴったりくると思います。

私の作った物は、さらに別の物に作り変えられるからです。


私が作る食べ物は、ちょっと不思議。

作るのには、自然の恵みが必要なのです。

食べ物を作るって聞いた時、私はてっきり、部屋の中でお仕事をするのだと思っていました。

しかし、私のお仕事は外でするお仕事でした。

雨が降ったら濡れてしまいます。

強い風が吹いたら飛ばされそうになります。


仕事を始めてすぐは、たくさんの時間をかけても、ほんの少ししか作れませんでした。

他のみんなは、短い時間でたくさん作っています。

なので、どんどんみじめな気持ちになってしまいます。


そんな時、先輩は優しく、こう言ってくれました。


「ずっと同じ、ってことはないですよ。何事も変わり続ける。そのことを忘れてはいけませんよ。あなたも、だんだん成長して、上手にできるようになります」


先輩はそう言ってくれるので、私もいつか、先輩の期待に応えることができるよう、たくさん作れるようになりたいと思います。


春なのに、まだまだ寒い日が続きます。


寒くても、私は外でお仕事をしています。

正直、辛いと思うこともたくさんあります。

けれど、外でのお仕事も慣れてくると、とってもいいものです。

部屋の中では知り得なかったことを、たくさん知ることができるからです。


暖かい春の日差しを浴びて、私の周りでは雪が解け、地面が見えてきます。

今まで眠っていた生き物たちが、目を覚まして動き回ります。

外の様子は、毎日毎日変化していきます。

部屋の中にいたときは、私はそんなこと、まったく気づいていませんでした。


今では、自然の中で働くことに喜びを感じるようになりました。


とは言っても、外でのお仕事はいいことばかりではありません。

雨の日は、仕事がはかどりません。

私がどんなに頑張っても、ほんのちょっとしか作れないのです。


私は、自分の無力さに落ち込みました。

すると、先輩は優しく、こう言ってくれました。


「ずっと同じ、ってことはないですよ。何事も変わり続ける。昨日できたことが、今日はできないかもしれません。みんな、うまくできる時と、そうでない時があるのです。そして、それが普通なのですよ」


先輩はいつも、私を励ましてくれます。

私の仕事がうまくいかなくても、決して叱ったりはしません。

私が頑張っていることを、分かってくれているのです。


だから、私は先輩のことが大好きです。


先輩のお仕事は、私のお仕事とは違っています。


先輩は、私が仕事で使う原料を、私に運んでくれます。

そして、私が作ったものを他のみんなの所へと運んでくれます。


私だけがいても、仕事になりません。

同じように、先輩だけいても、仕事になりません。

作る人と運ぶ人、両方がいて、私たちの仕事は成り立っているのです。

そういうことを教えてくれたのも、やはり先輩でした。


先輩は何年も、運ぶ仕事をしているそうです。

なので物知りです。

私は、この春に仕事を始めたばかりなので、知らないことがたくさんです。


私はみんなのために必要な存在なのだということを、先輩が教えてくれました。

だから、私は今、こうやって張り切って仕事をすることができるのです。


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