眠れる力
ジーク達がダンジョンを発見し、はしゃいでいた頃。
ルシファーはリストネスを誘ってまたしても外に連れ出していた。
これだけ見れば、ルシファーがリストネスを気に入ったように見えるが、ルシファーにはルシファーなりの考えがある。
ルシファーはジークやエレノアよりも強い他にも、ある感覚が優れている。
それは、そのものにどのような力が眠っているのかある程度分かるという事だ。
正確なものまでは分からないが、何らかの力が眠っていることを察知することが出来る上に、その力がどのようなものなのかをある程度把握できるのである。
スキルと思われるかもしれないが、実際のところは天使の権能に近い。
まぁほぼスキルと思っても大差はないのだが。
例えばジークにはまだ底知れぬ力が眠っているように見えるし、その力が目覚めればルシファーを軽々と超えていくだろう。
エレノアにも力が眠っており、たくましくそして勇ましいものが轟々と燃え盛っているように見える。
その覚醒の仕方は分からないが、少なくともこの2人にはまだまだ先があることを予測させてくれていた。
そして、リストネスはどうかと言うと、力は眠っているのだが、何かがおかしいのだ。
眠っている力は確かにある。
しかし、それは本人の中にあるものではなく、外部的な何かによって齎されたものであり、ルシファーはそれが神と言った上位存在によるものではないかと推測していた。
かつてみた神の力。その一端を僅かに見たことがあるルシファーは、その力と同じものをリストネスに感じているのである。
そして、その力がどんなものであれ、今後自分に必要なものなのではないかと考えているのだ。
それこそ、自分の人生に大きく影響を与えるほどの。
「ルシファーさん!!これは凄いですよ!!私の腕がぶくぶくと膨れ上がってます!!こんな毒は初めてです!!」
「いや、いやいやいや!!今すぐに治療しろ馬鹿者!!腕が吹っ飛ぶぞ?!」
「あはは!!痛いですね!!」
「いや、痛いですね!!じゃなくて治療!!」
冒険がしたくて神の言葉を偽り聖女候補と言う安定した地位を捨てたリストネス。
その好奇心は、無限大であり、この大陸最強の魔王を持ってしても止められるものではない。
ルシファーは、死ぬほど振り回され、最後には疲れ果てて寝る以外のことができなくなる。
ある意味最強の魔王に勝っているリストネス。
ジークやエレノアさえも疲れさせるその元気は、世界最強と言っても過言ではないのかもしれない。
「はい、治りました。ルシファーさん、そんなに慌てなくてもいいのに」
「いや慌てるだろ普通?!何が腕がぶくぶくしているだ!!自分の命を大切にしなさい!!」
「まるで母親のような感じですね。私はルシファーさんの娘といったところですか?」
「こんなお転婆娘ができたら、私が死ぬぞ?いやほんとに。過労死させられるわ」
「ですが、世の母はこのような事を平然とやってのけるのですよ」
「いやすごいわ。世の母に尊敬の念すら覚えるわ。すごいんだな。母という存在は」
「えぇ。まぁ、私は母の顔なんて覚えていませんがね」
「私もだ。孤児のようなものだったしな」
そんな事を話しながら、リストネスの冒険は続く。
今日は拠点から北に向かって探検をしており、リストネスは好奇心のままに行動していた。
「で、ルシファーさん。私に何を求めているのですか?」
「........何の話だ?」
「さすがに無理があるでしょう?私をこうして連れ出しているのは、何らかの目的があるため。あなたの言っていた“加護”が関係しているのでは?」
2人っきりの空間で、リストネスは口を開く。
流石のリストネスも、馬鹿では無い。
ルシファーが毎回こうして自分を連れ出しているのには、それ相応の理由があることは察している。
そして、思い当たる節と言えば“加護”だ。
リストネスはアスモデウスから魔王の加護を受け取っているが、それとは別の何かがあるのではないかと疑っている。
「隠しきれんか」
「そもそも隠す気すら無かったでしょう?私に気が付かれても良いという態度でしたからね」
「確かに私はリストネスの加護について考えている。私の目は、そのものが持つ潜在的な能力を見ることが出来る。例えば、ジークなんかはさらに大きな何かを秘めており、それを覚醒させれば私容易く超えていくだろう」
「なるほど。その目で私を見て、何かを感じとったと。私にも才能があるという事ですか?」
「........正確には違う。外部的な何かの力を感じている。だが、本人にそれを扱えるだけの技量がない。そんな感じだと私は考えているのだ」
「私の技術不足という事ですか。何が足りないのですか?」
「それが分かれば苦労はしない。だが、純粋に強さが足りてないのは間違いないな」
力の覚醒には、それ相応の力が必要である。
突然身に余る力を渡されても、人は滅びの道を辿るだけ。
精神的か、それとも肉体的かは分からないが、強くなることで力の解放に近づくのは間違いないのだ。
「なるほどなるほど。なんというか、ワクワクしちゃいますね。私にすら分からない眠れる力があると。本当に神から授かった力かもしれませんよ?」
「恐らくだが、それに近いと思うぞ。昔、1度だけ神に近い存在を見たことがある。力の質は、それに近い」
「なんと。神を偽る私が、その力を得たと?」
「まだ分からんが、私の予感が言っている。それはきっと、私の人生を大きく変えてくれるものだと」
ルシファーはそう言うと、リストネスの手を掴んで膝まづく。
そして、頭を下げてこう言った。
「もし展開に戻るまでに力を得られなければ、私と共に来て欲しい。天界にも強くなれる場所がある」
「........困りましたね。とても魅力的な話ですが、私には私なりの責務があるのですよ」
「........確か、魔大陸での資源の確保や調査が主な仕事だったな?」
「えぇ」
「ならば、天界の調査た天使達との友好関係の構築という名目で来ればいい」
人類はまだ天界の存在を知らない。
それは神の領域であるとされているのだから。
しかし、この天界が実在し、天使達との友好関係の構築な成功すれば人類の得られる恩恵は少なからずあるだろう。
要は、ルシファーが勝てば人類に優しくしてもらえるという事だ。
やり方次第では、リストネスは大きな力を得ることになる。
「なるほど。そう来ましたか。そこまでして私の力が欲しいのですか?」
「私の勘が言っている。それは、私に必要なものだと」
「勘が外れて、お前を殺すとなっても困るんですがね。私は死ぬよりは生きている方が好きなんですが」
「そんなことをしてみろ。ジークとエレノアが嬉々として私を殺しにくるぞ。奴らは間違いなく、大義名分がないという理由だけで私と戦わないだけだからな」
その通りである。
現在はそれに加えて、天界の情報源でありまだ自分達が明確な勝てるわけじゃないと言う強さとしての壁があるからいいが、もしその壁がなければ、あとは大義名分だけ。
もしリストネスを殺せば、いつか自分にその牙が向くことだろう。
ルシファーは知っているのだ。あぁ言うタイプは、自分の中に明確なルールがあり、それから外れれば容赦なく敵対してくるという事を。
のらりくらりとコウモリをしているやつの方がまだマシである。
何故ならば、そのルールはルシファーには分からないから。
「んー、ちょっと考えておきます」
「是非とも考えてくれ」
その後、リストネスは天界に向かう事になる。
果たしてルシファーの勘は正しかったのか。それを知るのは、もう少し未来の話だ。
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