論破


 リエリーがシレッとこの国の三大大国の一つ聖王国を出禁にされたという話を聞きつつ、俺達はその後も関係の無い話で盛り上がった。


 魔界での話はもちろん、そこで出来た弟子の話。骸骨に恋をした変わり者の悪魔の話や、“ソレ”と呼ばれたアビスと吸血鬼の遺跡等。


 まぁ、話の大半はデモットの話であったが。


 エレノアもなんやかんやデモットの事を弟子として大切にしてきたのだ。俺達の初めての弟子であるデモットの話が多くなるのは、仕方がない。


 シャーリーさんも、楽しそうにその話をずっと聞いていた。


 尚、吸血鬼の話にはリエリーが興味を持ったようであれこれ聞かれた。


 どうやら人類大陸に出現した吸血鬼達との関わりがあるかもしれないとの事で、一応冒険者ギルドに報告を入れておくつもりらしい。


 そういえば、人類大陸に吸血鬼が居たっていう話は聞いたことがあるな。もしかしたら、あの吸血鬼達の子孫がこの大陸にいるかもしれない。


 ........吸血鬼って経験値多いのかな。


 そんなこんなで色々な話をした後、エレノアはようやく本題を切り出す。


 その本題は、エレノアの生まれ故郷スピル王国についての話であった。


「そろそろ国王が叔父様に変わる時期だと思われるわ。お母様とお父様を殺し、シャーリーを傷つけたあの二人を、私は始末しようと思っているのよ」

「........」

「シャーリー、あなたも来る?」


 それは、長い間ために溜めた復讐の炎を燃え広がらせる一言であった。


 エレノアの両親は既に他界しており、エレノアの親族と呼べる存在はスピル王国にいるであろう叔父や祖父母しかいない。


 父方の親戚は全滅していたはずだ。


 叔父は確かかなりのシスコンで、妹であったエレノアの母の事をとても可愛がり裏で相当手助けしていたようだが、祖父母はゴリゴリのエルフ至上主義者で人間との間に生まれたエレノアの事を排除したがっていたと言う。


 5年近くは何とか守り通していた平穏であったが、ある時その平穏が崩れ去ってエレノアは肉親を失う事となった。


 もし、祖父母が人間に対して理解があり、エレノアの事を可愛がっていたら俺はエレノアと出会うことも無く旅をする事となっていただろう。


 極めて不謹慎だが、祖父母が人間嫌いなお陰で、俺はエレノアに会えたと言える。


 だが、それを理由にエレノアの両親が死んでしまっていい訳では無い。


 俺は相棒であり、普段エレノアに付き合わせている立場でもあるため、この件に関してはエレノアを手伝いはするが何も言わないつもりであった。


 既に国を滅ぼすつもりは無いみたいだし、親を殺された復讐相手を殺すだけなら手伝うよ。


 俺だって父さんや母さんが殺されたら、たとえこの大陸を消し飛ばしたとしてもその犯人を見つけ出して殺すからな。


「私は........私が行ってもいいのでしょうか?奥様を守ることも、旦那様を守ることも出来なかった私が」

「いいえ。貴方はちゃんと私達を守ってくれたのよ。きっとお父様もお母様もシャーリーには感謝しているわ。問題はシャーリーの気持ちよ。見たいなら連れていくし、見たくないなら私は無理強いするつもりは無い。それだけの話なのよ」

「........強くなられましたねお嬢様」

「そりゃ、魔界にまでレベル上げに行くような相棒に振り回されていたらね。嫌でも強くならなきゃいけないのよ。ねぇ?ジーク」

「いつも助かってるよエレノア。出来れば、手合わせの際に俺の腕をへし折るのはやめて欲しいかな」

「無理ね」


 即答ですかい。


 悪魔王とやり合った時にも思ったが、エレノアの突破力はイカれている。


 なんで悪魔王でも苦戦するような弾幕の雨を、易々と潜り抜けて俺の骨をへし折れるんですかねぇ?


 もちろん、お互いに殺す気ではやってないんだけどさ。


「ふふっ、お嬢様、ジークさんの腕をへし折っているのですか?」

「えぇ。よく折ってるわね。でも聞いてよシャーリー。ジークは狡いのよ?白魔術も使えるから、当たり前のように怪我を治して何事も無かったかのように暴れ始めるのよ。確実に一撃で仕留めようにも、流石にジークもそれは許してくれないし........困ったものだわ」


 俺から言わせれば、大抵の攻撃を拳で弾くエレノアも大概だけどね?


 俺だけが理不尽みたいに言わないでくれよ。


「白魔術かー。私は使えないからなー。白魔術と黒魔術を仕えるジークってかなり凄いんだぞ?」


 話が逸れて、エレノアが俺の理不尽さをシャーリーさんに愚痴り始めてしまった。


 それを見て口を開いてもいいかなと思ったのか、リエリーが話しかけてくる。


 国王を前にして実験を始めてしまうような頭のぶっ飛んだ空気の読めない子ではあるが、こういう時はちゃんと大人しくできるんだな。


「自覚しているよ。昔は教会関係で面倒事を起こしたくなかったから、隠してたし」

「今は違うのか?」

「今は教会関係に関しても、そこまで大きな問題にならなくなったしね。オリハルコン級........今はアトラリオン級冒険者の権力のお陰さ。下手に手を出すと冒険者ギルドと敵対する」

「やっぱりある程度の権力は必要だよなー。私もオリハルコン級冒険者になってヒシヒシと感じるよ。ちなみに、教会関係で問題になったりはしなかったのか?」

「一回揉めたね。アレは俺も大人気なかったし、向こうも向こうで悪かった。昔は色々とあったけど、今じゃそれなりに仲良く話せるんだよ?」


 聖女ちゃんは元気にしているかな?


 彼女に会うと、多分お袋に会いたいとか言い始めるだろうけど。


 昔は喧嘩もしたし、滅茶苦茶仲が悪かったが、今となっては割と仲がいい。


 俺も彼女も大人になったという事だろう。後、お袋効果が強かった。


「ほへー。あのジークがちゃんと社会に適応できるだなんて意外だなー」

「失礼な。俺はオリハルコン級冒険者の中では1番まともだろ」

「........???それ、本気で言っているのか?」

「どこでも爆破にアル中ドワーフ、オネェ武闘家にバトルジャンキー、そして常に行方不明の迷子。フロストはともかく、残りの4人は一般人にどれだけ迷惑かけていると思っているんだ。俺は人様に大きな迷惑をかけた覚えはないぞ」

「........あー!!なるほど。ジークの言うまとも、私達の言うまともの観点がズレているんだな!!いいかジーク。一般人に迷惑をかけていない事だけが“まとも”の基準じゃないんだぞ?人々の常識から外れた行動を取る者が、異常として見られるんだ」


 おっと?俺もしかして今、リエリーに“まとも”という概念について説明されている?


 あのリエリーに?


 ところ構わず魔術実験をして、三大大国の内の2ヶ国から入国禁止とか言う処分を下されているリエリーに?


 なんだろう。とてつもない敗北感が襲ってくる。


「私達も確かに少し変かもしれないが、少なくとも破滅級魔物が蔓延るダンジョンに入り浸ってレベル上げを始めたり、悪魔がレベル上げに適しているからとか言う理由で魔界に乗り込んで王に喧嘩を売ったりはしないんだぞ。しかも、聞いた話じゃ魔王が魔物を生成する能力を持っていることを知って、グランドマスターに魔王が居ないか聞いていたらしいじゃないか。理由を聞いたら、その能力を使ってレベル上げをするとか言って、何を言っているのか理解できなかったぞー?」

「........で、でも人様に迷惑はかけてないぞ?」

「だから、変人として扱われる理由に他者への迷惑が入っていることはあっても、他者への迷惑だけが変人と言われる理由にはならないって事だぞ。で、オリハルコン級冒険者以上の中で、ジークは私たちよりも変人という扱いをされているんだ。分かったかー?」

「........」


 こうして俺は、リエリーに論破されてしまうのであった。


 クソッ!!何も言い返せない!!でも、俺がオリハルコン級冒険者以上の中では1番まともと言う考えを改めるつもりは無い!!


 なお、シャーリーさんはスピル王国に戻ることを決心していた。


 エレノアの過去に決着を付ける時は近い。



 後書き。

 毎回リエリーが出てくると、洗練されるコメ欄。流石リエリー。可愛いだけはある。

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