弟子達の旅路に幸があらんことを
魔界の旅路に終わりを告げて、俺達は冒険者ギルド本部へとやってきた。
グランドマスターに魔界での旅が終わった事と、これ以上魔界からの侵攻は無いという事を伝え、そしてデモットとナレちゃんを冒険者にしてもらう。
手土産に魔物の素材を大量にくれてやったら、グランドマスターはあっさりデモット達を冒険者にしてくれた。
が、悪魔ということもあり、今までに前例がないためしばらくの間は冒険者ギルド本部で監視させる事となる。
デモットとナレちゃんはこれを了承。まだ人間社会というものがどういう物なのか分かっていないデモット達は、この冒険者ギルド本部で人類の事を多く学んでから旅に出たいと言っていた。
とは言えど、既にこれは旅の始まりである。
魔界から飛び出して、人類大陸に来た時点で旅は始まっているのだ。
最初は心配だった俺達は、四日ほどデモット達と行動を共にする。
冒険者として必要な最低限の心がけと技能を教え、鉄級冒険者としての立ち回り方等も教えてあげた。
ちなみに、どれだけ強かろうが、最初は鉄級冒険者からスタートである。
人智を超えた強さをしていたとしても、冒険者になったばかりは冒険者としては素人なのだ。
たくさんの経験を積んで、銅級、銀級まで上がれば飛び級が許される。
俺達がオリハルコン級冒険者になる前は、銀級冒険者だったしな。
と言うか、そんな規則があったとは知らなかった。
冒険者ギルドで教えられるのって、仕事の内容通りに仕事をしろと言うのと、喧嘩はダメですよぐらいだからな。
冒険者には馬鹿が多い。社会のセーフティーネットとしての一面もあるので、細かい規則なんかは冒険者に教えられる機会は少ないのである。
それぞれの事情があって、学がないやつも沢山いるのだ。文字が読めなかったり、書けなかったりする者も少なくない。
「それじゃ、俺達は行くよ」
「何から何までありがとうございました。ジークさん、エレノアさん」
「いいのよいいのよ。可愛い弟子の初仕事を見たかったと言うのもあるんだし」
「ん、助かった」
デモットとナレちゃんが冒険者になってから四日後。
俺達は次の旅に出ることにした。
正直、俺もエレノアもデモットともっと一緒にいたい。初めてできた愛弟子であり、多くのことをデモットから学ばせてもらった一面もある。
魔術を教える過程で、復習にもなったし、魔界については様々な事を教えてくれた。
悪魔はお約束を守る種族であると言う、ちょっと意外なところがあったり、弱肉強食が顕著であると知れた。
俺達が初めて魔界でであった悪魔。出会い方が違えば........いや、デモットが二番目に出会った悪魔だったら、間違いなく俺達はデモットを殺していただろう。
俺もエレノアもそう言う人間なのだ。
しかし、そうはならず、今じゃ可愛すぎる愛弟子だ。
人生何があるか分からないとは言うが、本当にその通りだと思う。
デモットも最初に出会った頃から性格が変わった........いや、素に戻ったし、昔とは考えられないほどに強くなったものだ。
「世界を巡って、色々な人達と出会うといい。デモットやナレちゃんぐらい強かったら、大抵の事は何とかなるはずだ」
「あ、出来れば冒険者の階級を高くしてから旅に出た方がいいわよ。この大陸じゃ、暴力よりも権力の方が勝るのよ」
「はい。そうします。あの、えぇと、マリーさん?という方と手合わせしてみたところ、そこまで強くなっかったですし、オリハルコン級冒険者になるぐらいまでは簡単かと」
「私はぼろ負けしたから、先ずは勝つのを目標に頑張る」
「ハハハ。頑張ってくれよナレちゃん」
デモットは既にオリハルコン級冒険者並の強さを持っている。魔界ではそれでも伯爵級に届くかどうかレベルだったと考えると、魔界は修羅の国であることがよく分かる。
もう少し強いやつが人類大陸に呼ばれていたら、もっと大きな被害が出ていた事だろう。
「デモットなら銀級になった瞬間にオリハルコン級冒険者になれそうだし、いいんじゃないか?今はとりあえず、仕事のやり方を覚えるといいよ。グランドマスターやマリーもかなり2人の事は気にかけているだろうしね」
「気にかけていると言うか、監視しているの方が正しいですけどね。マリーさんは普通に話しかけてきますが、グランドマスターは未だに警戒心を感じます」
「それがあの人の仕事だから。許してやってくれ」
「分かってますよ」
マリーは意外と人を見る能力が高い。デモットやナレちゃんの純粋で優しい心を、既に見抜いているのだろう。
悪魔だからとか考えず、普通に人として接しているのを見たしな。
マリー、あの姿さえなければかなりマトモなのに........
俺はそう思いながら、デモットに近づくと“しゃがんで”とジェスチャーする。
デモットは首を傾げながらしゃがんだが、次の瞬間俺に抱きしめられた。
可愛い可愛い俺達の愛弟子。最後ぐらい、ギュッと抱きしめてもバチは当たらないだろう。
あの師匠だって、俺達が旅立つ前に頭を撫でたのだ。
「もし何かあれば魔術で連絡して来いよ。俺達がどこで何をして居ようが、すぐに会いに行くからな」
「そうね。私達の唯一の弟子だもの。勝手に死ぬのは許さないわよ」
エレノアもそう言いながら、デモットの頭を優しく撫でる。
エレノアもエレノアでデモットにかなりの思い入れがあるのだろう。その手は、いつも以上に優しく、そして柔らかかった。
「........はい。必ず、連絡します........グスッ」
「おい泣くなよ。可愛い顔が台無しだぞ?」
「だっでぇ!!俺、ジークさんとエレノアさんに........!!グスッ」
「あら、弟子は甘えん坊さんね」
そして、ついにデモットは泣き出してしまう。
多分、別れるのは辛いけど笑って俺達と別れようと思っていた堪えていたのだろう。
しかし、俺が抱きしめ、エレノアが頭を撫でた事によりその涙腺が崩壊してしまった。
今まで一度も俺達の前で泣いたことなどなかったと言うのに、こんな時に泣かないでもいいのに。
つられて俺達まで泣きそうになるよ。
と言うか、ちょっと泣いている。赤ん坊を卒業してから泣く事なんて無かったのにな。
初めて旅に出た時ですら、俺は涙を流さなかったと言うのに。
エレノアを見れば、エレノアも涙を拭いていた。
俺達にとって、初めての弟子というのはそれ程に価値がある存在なのだと、改めて認識した。
「ん、エレノア。私も」
「........あら、私達の事は苦手じゃないの?」
「苦手。特にジークは色が見えない。でも........悪いやつじゃないし、沢山お世話になった。ありがとう」
「ふふふっ、そうね。ごめんなさいね。ナレちゃんを初めて見た時、普通に殺そうとして」
「それは気にしてない。あそこはそういう世界」
弟子と師が泣いていると、仲間はずれにされていたナレちゃんがエレノアにハグを要求する。
ナレちゃんもナレちゃんで、色々と思うところはあったのか。“ありがとう”と言ってエレノアに抱きついていた。
「エレノア、暑い」
「ふふふっ、そうね。私の魂は燃えているのよ。ナレちゃんも頑張ってね」
「ん!!次会う時は、もっと強くなってる」
「楽しみだわ」
そうして、デモットが泣き止むまで待ったあと。
俺は最後にデモットの頭を撫でながら離れる。
そして、笑顔でこちらを見るデモット達に向けて手を振った。
「この大陸は広い!!色んな奴がいる!!折角なんだし、全部見て回ってみろよ!!」
「はい!!」
「元気でね!!また会った時に、その成長を見せてもらうわよ!!」
「ん!!」
「はい!!」
「「じゃぁな(ね)!!また会おう(いましょう)!!」」
「はい!!また!!」
「バイバイ!!」
こうして俺達は、初めて出来た弟子にも一時の別れを告げる。
ここからは、また俺とエレノアの二人旅。でも今は、こう言うべきだろう。
弟子とナレちゃんの旅路に幸があらんことを。
後書き。
魔界編完。
本編は、まだまだ続くぞい。
デモット君が一番大きな変化と言える、魔界編でした。正直、最初は殺す気でいた。でもなんか気がついたら弟子になってた。
ウルやポートネス、デモット達はまたどこかで出すつもりです。
次は人類大陸のお話を少し挟んで、魔王大陸編が始まります。お楽しみに‼︎
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