魔界大戦:天、覆いしは白黒翼が群れ
切り札を使ったらしい悪魔王の手によって、天魔くんちゃんの一体が吹き飛ばされた。
俺は即座に天魔くんちゃんを補充しつつ、できる限り悪魔王にやられないような立ち回りを天魔くんちゃん達に命令する。
観音ちゃんにも数を減らされないようにする立ち回りをお願いし、悪魔王を逃がさないようにしつつ消耗戦を続けた。
対する悪魔王は、その切り札とも言える権能が時間制限付きなのか、かなり強引な攻めを見せている。
天魔くんちゃんではなく、その主である俺を倒せば戦いは終わると理解しているのか、それはもう凄まじい勢いで俺に迫ってきていた。
が、引き上げられた能力値に振り回されているのか、動きがかなり単調で攻撃してくるタイミングがわかりやすい。
俺の魔術の中には短距離転移が出来る素晴らしい魔術があるため、悪魔王の射程の範囲外に逃げるのは簡単であった。
「くっ........!!ちょこまかと!!」
「視界に入っている距離を転移できるこの魔術は、攻めにも逃げにも使えて便利だな。普段は移動にしか使わないから実践で使う機会が少ないが、こうして見ると改めて転移の理不尽さを感じるよ。ちゃんと対策しないと詰む魔術の一つだな」
どれだけ凄まじい速度で突っ込んできたとしても、転移で距離を無視して逃げられたら追いつけるはずもない。
使い方が難しい魔術ではあるものの、使い方をちゃんと理解していれば転移系統の魔術は本当に理不尽である。
最近は攻撃と防御の魔術の開発に勤しんでいるというのもあって補助魔術は殆ど研究していないが、そろそろ第十級魔術の補助系の研究をしてもいいかもな。
火力、防御、共に手札は揃ってきているし。
特に、俺自身の肉体を強化する魔術が欲しい。
肉体強化系の魔術は、ある一定のラインを超えると使用者にデメリットがあるのだ。
主に、肉体が魔術に耐えられないというかなり大きなデメリットが。
そのデメリットを帳消しにして、エレノアと最低限殴りあえるようになったらさらに上のステージに行けるだろう。
多分、エレノアも喜んでくれるはずだ。俺の相棒は、殴り合いとか大好きなので。
「戦闘中に考え事か!!余裕があるようだな!!」
「時間制限付きの強化だろう?見た感じ。焦って俺の間合いに無理に入ってくるのがいい証拠だ。なら、逃げ続けて体力切れになるのを待つのが鉄板だろ。幸い、俺は逃げることに関しては上手くてな」
「だぁぁぁ!!また逃げやかて!!」
凄まじい勢いで突っ込んできては、拳を振るう悪魔王。
天魔くんちゃんや観音ちゃんが攻撃を加えてその足を止めさせようとしているのにも関わらず、被弾覚悟で突っ込んでくるのはとても怖い。
が、転移で逃げてしまえば問題なしだ。
エレノアとかが相手なら、転移する瞬間の視線の動きから俺の移動先を読んで先回りしてくるとか言う神業を当たり前のようにやってくるが、この転移のシステムを理解していない悪魔王からしたら、本当に理不尽極まりないだろう。
というか、エレノアがおかしいのだ。
視線の向きから転移先の方角を絞るのは、まだわかる。だが、その距離までドンピシャで当ててくるのはおかしいだろ。チートだよチート。人の思考を完全にハッキングしてるよあの子。
逃げて、逃げて、逃げ続けて。
日が暮れて朝日が登り、再び日が暮れる。
いつの間にかエレノアは大公級悪魔との戦闘に勝利しており、運良く生き延びた悪魔の殲滅までも終わってこの戦いを眺めていた。
そして、三日目の朝。
悪魔王はついに限界を迎える。
「........ぜぇ、ぜぇ........」
「ようやく動けなくなったか。さすがにまる2日もやり合うとは思ってなかったよ。ま、俺は1週間ぐらいならずっと全力を出せるから、まだまだ元気はあるけどね。徹夜にも慣れてる」
「化け、物が........!!」
もう一歩も動けなくなったのか、その場に膝を着いて崩れ去る悪魔王。
最後の戦いとしては随分といやらしい戦い方になってしまった気もするが、こう言うのは勝ったやつが正義である。
勝ち方なんてどうでもいい。そもそも、持久力も強さのひとつだしな。
「もう限界だね。それじゃ、終わらせようか」
「クソッ........」
俺がそう言うと、悪魔王は小さくそうつぶやく。
もう動けないし、見た感じ魔力も残ってない。
それはつまり、悪魔王の敗北を意味する。
が、ここで油断してはならない。トドメを刺す時まで絶対に気を抜かず、トドメを刺すなら最大火力で消し飛ばす。
俺は、そう師匠に教わっているのだ。
「最後に言い残すことは?」
「ハハッ、ハハハ。ようやく妻に会える」
「そうか。よれば良かったな」
最後の最後で少し嬉しそうな、悲しそうな目をしていた悪魔王。
悪魔王は噂で聞く限り愛妻家であった。妻が亡くなった時、悪魔王は彼女が生まれた地にこじんまりとした墓を立てて、その死を弔ったらしい。
それから何年、何十年、何百年経っているのかは知らないが、悪魔王にとって妻は本当に大切な者であったのだろう。
最後に言い残す言葉に“ようやく会える”なんて言えるやつはそうそういない。
「せめてもの他向けだ。あの世にも響き渡るほどに、本気で殺してやるよ」
俺はそう言うと、特大の魔法陣を空に描き出す。
準備はしたものの、悪魔王の権能である鎖が怖くて使えなかった魔術であり、俺の持っている魔術の中で最も破壊力と範囲が大きい魔術。
第十級魔術と第九級魔術の大きな違いは、その自由度であり実はそこまで火力に関しては違いがなかったりする。
もちろん、第十級魔術の方が一撃の威力は大きいのだが、使用した魔力量で割ると第九級魔術とさほど変わらないのだ。
なら、第九級魔術を乱発させた方が強くね?という事で生まれたのがこの魔術。
俺のお得意の数の暴力による、圧倒的な蹂躙である。
「さらばだ悪魔王。楽しかったよ」
「ハハッ、どの口が─────」
第十級魔術“
空に現れたのは、何千もの小鳥ちゃん達。
その姿は白と黒に分かれており、空を覆い尽くし始める。
この小鳥ちゃんたちは、ただの小鳥ちゃんたちでは無い。
第九級魔術を1つ搭載した、完全爆撃型の小鳥ちゃんであり、思考力も限界まで削ぎ落として殺戮に特化させた滅茶苦茶な魔術である。
第十級魔術の中に第九級魔術魔術を幾つも入れることで、本来ではありえない破壊力を生み出す。
天魔くんちゃんシリーズを作っていた過程で俺が見つけ出した、魔術の穴だ。
まぁ、アホほど魔力が持っていかれるから、正直俺レベルの魔力がないと使えないズルではあるが。
この魔術を使うために、天魔くんちゃん達を撤収させてるし。
「さらば。悪魔王ソロモン」
刹那、世界は破壊されていく。
第九級魔術を搭載した小鳥ちゃん達が一斉に魔術を展開し、馬鹿みたいに撃ち込んでいく。
何千羽もいる小鳥たち全てが、第九級魔術を一斉に使ったらどうなるのか?
答えは簡単。その大地は残らず、何もかもが破壊されつくし最後には音すらも聞こえなくなる。
ふっと視界が白くなったかと思えば、次は真っ暗に、次は真っ白にと交互に混ざりあって次から次へと魔術が降り注ぐ。
外から見た時のこの魔術は、地上に降り注ぐオーロラのようにカーテン場になっていた。
オーロラとは似ても似つかないほどに悲惨な光景が残っていたが。
「........っ。この魔術は魔力消費量がエグイな。一気に魔力が持っていかれる感覚を味わうのは久々だ」
この魔術には大きな弱点がある。それは、第九級魔術を連発する都合上、魔力消費が凄まじいということだ。
レベル400を超えた俺の魔力量でも、ふらっと来るほどに魔力を持っていかれる。
だから、この魔術は決戦兵器のような扱いを俺はしていた。
そして、白と黒の破壊が止まった時。
魔界の中心部、かつて大きな湖があったははずのその大地は、地平線のかなたまで奈落へと続く道に変わっていたのであった。
後書き。
ソロモンの切り札は、爆発的な身体強化を得る代わりに寿命がエグい勢いで削れます。
不老とかそう言うのを完全に無視するので、ジークやエレノアでも使えないレベルでデメリットがエグい。代わりに、馬鹿みたいな強化が得られる。
まぁ、ジークの場合転移があるから意味ないんだけど。
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