魔界大戦:思ってたんと違う
ジークとエレノアが、魔界の最終決戦に挑んでいた頃。
ウルとノアが建てた村では、その凄まじい魔力の波を感じながら襲撃者に備えていた。
悪魔王ソロモンは、この村の存在を知っている。
お互いに引き分け、その村の設立を許され、そして今の今まで平和に過ごしていた村であったが、悪魔王に手を出せば流石に襲撃が来るだろうと予想していた。
ノアとの約束もあり、必ずこの村を守りきると意気込むウルと弟子が魔界を破壊してしまわないか心配なノア。
悪魔王との戦争が始まり、魔界が揺れる中でその時が来るのを今か今かと待ち構える。
「........来ないな。隠れているのか?それとも、私達が油断するのを待っているのか?」
「フハハ。どうだろうな。案外、本気でジーク達と戦うために全戦力を向こうに注ぎ込んでいたりしてな」
「あのソロモンがか?」
「奴は確かに賢いが、戦闘狂としての一面を持つ。ジークやエレノアのような馬鹿げた強さを持った者を見て、即座に戦力を集中させることを選んだのかもしれん」
ノアの言っている事は正しい。
最初こそ悪魔王ソロモンもこの村へ襲撃を仕掛けるつもりであったが、ジークとエレノアを一目見て“これは手が抜けない”と察し、戦い方を変えたのだ。
ウルやノアが参戦してきたら不味いことになっていただろうが、ジークがエレノアとデモット以外に経験値を譲ることはまず無い。
悪魔王も何となくそれを感じとっていたと言うのもある。
狂人は狂人を理解する生き物なのだ。
その点で言えば、ジークの経験値に対する執着をあまり理解出来ていないノアはマトモだと言える。
「まぁ、あの二人を相手にして手を抜くなんて有り得ないのは確かだな。私の知る限り、あの二人は滅茶苦茶だ。どこの世界に心理顕現の修行をするからと言って、寝ている間も心理顕現で戦う奴がいると言うんだ」
「フハハハハ!!昔からそんな子達よ!!あの二人は。寝ている間の睡眠時間が勿体ないからと、自動で経験値を集める仕組みを作り出したのだ。確か........放置ゲー理論とか言っていたな。ジークはそれで世界最強になるための証明をしたいのだろう。私が色々とジークと話なした中で、最も目を輝かせていたのがその時だ」
「イカれているな。自分の考え着いた理論を証明する為だけに、この魔界を滅ぼしに来たのか?」
「そういう事だ」
「イカれてるよ。本当に」
ジークは昔、ノアに自分の放置ゲー理論について語ったことがある。とは言っても、その理論を用いて世界最強になる事を証明したいとは言っていない。
あくまでも、“寝ている間に経験値が得られたら、効率がいいよね”という事だけを話したのだ。
しかし、ノアはその少年らしい夢を見た子供の表情を見て、ジークがその理論を用いて世界最強になろうとしていると感じている。
長年生きてきた年の功と言うやつだろう。
弟子の考えは、師の前では見透かされるものだ。
「あー、そういえば、そんな話もしてましたね。確かにあの時のジークさんの顔は、とても輝いていましたよ。言われてみれば、あの時のジークさんの顔が一番楽しそうでした」
「だろう?あの子はそういう子なのだよ。全く、デッセン殿もシャルル殿もまるでそういう事に興味はなかったというのに、誰に影響されたのだろうな?」
「意外と頑固なところは私に似たか?」
「フハッ!!自覚があったのか?!」
「多少は自覚もしているさ」
冗談交じりにそういうウルの言葉に、思わずノアが吹き出してしまう。
ウルは臨機応変な対応ができるように見えてかなり頑固な性格をしている。
特に、ノア関連のことに関しては頑固であり、頑なに約束を守ってから再会をしようとしていた程だ。
ノアも昔のウルを知っているので、ウルが頑固者であることはわかっている。
それを自覚しているとは思わなかったが。
「フハハハハ!!自覚があるのに治そうとしないとは。そんなんだから、冷徹の女王などと呼ばれていたのだぞ?」
「余計なお世話だ。笑いたければ笑えばいい」
「やーいやーい。頑固者の融通が聞かないなんちゃって女王!!何が世界の流れを悟ったものなりだ。世界は不変で変わることは無いと悟るべきだったのではないか?!」
「お前........!!」
容赦なくウルを煽るノアと、その煽りに乗せられるウル。
このまままた喧嘩が起こるのかと思われたその時、ウルとノアが同時に動く。
「心理顕現────」
「来たれ────」
二人はほぼ同時に心理顕現と
遅れてデモット達もこちらに迫ってくる魔力に気が付き、戦闘態勢をとる。
「流雨砕石」
「
降り注ぐ豪雨と、その豪雨に合わせるように出現した水の聖域。
ウルとノアの出した水の聖域に流れを加えると、形を変えて威力を受け流せるようにする。
ゴウッ!!
数瞬後、凄まじい光の光線が大地を砕きながらその盾を襲い、盾はひかりを受け流して大きく横に逸れて行った。
「........襲撃ですか?」
「........これなら襲撃の方がマシだったかもしれんな」
「フハハハハ!!普段なら絶対にやらないだろうが、私たちが村を守っていると分かっているから容赦なく斜線上に魔術を放っているな?全く、容赦のない弟子たちよ!!」
「今の攻撃........もしかしてジークさんのじゃ........」
その一撃はあまりにも強大で、ノアとウルが居なかったら防げなかっただろう。
そして、その一撃を放ったのはどう見てもジークであった。
白い光線を防いだウルは、ノアを睨みつける。
「思っていた防衛と違うぞ。おいノア、お前は一体弟子にどんな教育をしているのだ」
「フハハハハ!!それだけ私達を信用しているという事よ!!この程度の戦果の火の粉は振り払えると分かっているから、ジークも手加減せずにめちゃくちゃやっていると思うぞ?守りのない東側の避難場所には魔術を放っていないはずだ」
その通りである。
ジークの魔術は、ものによっては射程が馬鹿みたいに広い。それこそ、座標さえ分かれば、その場所に向かって直線上を破壊し尽くす魔術も使えるのだ。
魔法陣によって制御はしているものの、制御はジークの思考力をわずかながら持っていく。
普段は周りの被害も考えて、ちゃんと途中消すようにと心かげているのだが、こと魔界においてはそんな気を使う必要など欠けらも無い。
唯一気をつけなければならないのは、東にある遺跡だけなのだ。
「さて諸君、どうやら私達は味方からの攻撃からこの村を守らねばならないらしい。暇をしている私達への気遣いなのかね?」
「巫山戯るなよ。こんな気遣い、ない方がマシだ」
「アハハハハ!!さすがはジークさん!!こういう時周りの被害を何も考えないところが、とてもジークさんらしいですよ!!俺の師匠なだけはあります!!」
「エレノア嬢の攻撃は警戒せずともいいのか?」
「エレノアはどうせ肉弾戦が楽しくなって殴りあっているだろうよ。私には分かる。絶対“アハッ!!”と笑いながら、あの物騒な武器を振りまわしているぞ」
これも正解である。
エレノアは広域系の破壊魔術を好んで使う傾向にあるが、真の強者を相手にすると肉弾戦を挑むくせがある。
それに、本気で周囲の被害を考えない時のジークの方が破壊範囲は圧倒的に広い。
ジークにとって、この世界は狭すぎるのだ。
「ま、暇つぶしの遊びができたと思えばいい。ジークも多少は気を使ってこちらに飛ばす魔術は控えるだろうしな」
「いや飛ばすなよ」
「飛ばさないで欲しいですけどね」
ノアは心の中で“それはそう”と思いつつも、大きく成長した、いや、大きく成長しすぎた弟子の影を喜ぶのであった。
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