嵐の前の静けさ
悪魔王との決戦に向けて、大公級悪魔達の街に転移用のポインターを打ち込みに行ったり、もうちょっとだけレベリングをしたりして1週間ほどが経過した。
現在俺のレベルは413。エレノアはレベル402にまで上がり、レベル400代の力を存分に発揮してた。
心理顕現の維持時間もかなり伸び、その気になれば最大出力を一日近く維持できる。
節約して使えば、まる一週間は戦えるだろう。
更に、公爵級悪魔や大公級悪魔と言ったあからさまに強い悪魔たちを除いた悪魔の街を、徹底的に潰しに回った。
数が力だ。俺達ぐらいのレベルまで来ると、個が軍を圧倒することもあるが、それでも驚異であることに違いは無いのである。
天魔くんちゃん達をフル稼働させ、あっちこっちの潰し残しを徹底的に潰してもらった。
こういう時、街の連携を取らない悪魔達の社会は便利だよな。
近くにある街が潰れても、彼らがそれを知る機会は少ないのだ。
人の出入りが少ないから、街が滅んでも誰も気が付かない。
悪魔王は気がついているかもしれないが、奴は弱い同胞が死ぬ程度では動かないのだ。
「いよいよ明日ですね........俺がやるわけじゃないのになんだか緊張してきました」
「ハッハッハ。適度な緊張感を持つのは大切だよデモット。俺と少しは緊張しているしね」
「そうね。私も少し緊張しているわよ。何せ、魔界全土を巻き込んだ大戦争だもの。悪魔達の未来を決める戦争ともなれば、尚更ね」
色々と下準備を終え、残すは実行に移すのみとなった前日。
俺達は翌日の戦争に向けてちょっとした決起集会というか、パーティーのようなものを開いていた。
自分達の、そして同じ戦場には立たないが一緒に戦うウル達の士気を高めるために開いたものであり、主に戦闘に参加する悪魔達がこの場にはいる。
非戦闘員は既に退避済みであり、彼らは今頃明日の戦争の勝利を願っていることだろう。
「これが終われば、魔界の攻略は終わりだ。そしたらデモット、お前は冒険者となって世界を見てくるといいよ。俺たちから学べるものはもう少ないだろうし、後は実践して多くの経験と出会いをするだけだ」
「私達もそうやって強くなったのだしね。寂しいけど、これが終われば一旦お別れよ」
「分かっていますよ。いつの日かは来ると覚悟していましたから。あ、それとナレちゃんを連れていくことは可能ですかね?」
「ナレちゃんを?」
魔界の攻略が終われば、デモットは俺たちの元を離れて人類大陸で旅を始めることになる。
旅は思いがけない成長をもたらしてくれるものだ。旅をしてなければ、師匠と出会うこともなかったし、こうして魔界に来ることも無かったのだから。
デモットには、多くの景色を見てきて欲しい。
旅の重要性を知っている俺とエレノアは、デモットに旅をするように促した。
で、その旅にナレちゃんを連れていきたいらしい。
「冒険者としてナレちゃんも連れて行けませんかね?」
「まぁ、やろうと思えば出来ると思うぞ。悪魔との友好的な関係はギルドにとっても悪い話じゃない。魔界の資源を参考程度に渡したし、その価値が分からないほどグランドマスターも馬鹿じゃない」
「そうね。1人増えるぐらいなら問題ないとは思うわよ。でも何故急に?」
「いやー、ナレちゃんにこの話をしたら泣かれまして........絶対について行くと言って聞かず、冗談抜きに着いてきそうだったので、もういっそのこと共に旅をした方が安全かと思いまして」
そう言えば、ナレちゃんはデモットの事が大好きだったな。
魔界から離れ、人類大陸に行くとなれば数年いや、下手をすれば数十年会えなくなるかもしれない。
ナレちゃんは割と執念深く、狙った獲物は逃がさないタイプなのでデモットにより着く虫を排除したいんだろうな。
世の中骸骨と悪魔がイチャイチャしているのだ。人類と悪魔の夫婦が生まれてもおかしくは無い。
「一人旅よりも二人旅の方が楽しいし、デモットがいいなら連れてくるといいよ。話はこっちで付けておくから」
「すいません。最後の最後まで」
「気にしなくていいわよ。弟子の面倒を見るのは師匠の義務なのなだからね。そうでしょう?師匠」
「フハハハハ!!盗み聞きしていたのがバレていたか!!」
エレノアがそう言うと、こっそり俺達に近づいてきてきた師匠が笑い声を上げる。
普段の骸骨姿ではなく、人の社会に紛れるために美女の姿をした師匠は楽しそうであった。
ちなみに、ちゃんとお袋に休暇の許可を貰ってから来ているらしい。もう完全に従業員扱いだ。
ウチは、骸骨を雇う店になってしまったみたいだな。宗教関係の人に見つかったら騒ぎになりそう。
........いや、見つかったらその人が行方不明になるだけか。
「孫弟子よ。甘えられる内に沢山甘えておくこといい。私も含め、師という存在は弟子が可愛くて仕方がない生物なのだからな。とは言えど、それも全て生き残ってからの話だ。この戦争を生き延びた後、可愛らしいお願いごとでもしてやれ」
「大師匠........」
「ところでジークよ。私にもそう言うお願い事は無いのか?」
「無いよ。父さんと母さんを守ってくれてるんだし、それ以上に言うこともないさ。念の為に天魔くんちゃんを仕込んであるけどね」
「エレノアは........」
「無いわよ。そのゴツゴツとした硬い骨に抱きつきたいとか、そういう事を思ったことは無いもの」
どうやら師匠は“弟子はもっと師匠に甘えるべき!!”と言って、俺達に甘えさせようとしたかったらしい。
かつて戦争の抑止力として生きてきた天才魔術師が、今じゃ弟子に甘えてこいと要求するとは。
天国で見ているであろう友人が、なんと言うか知りたいものだ。
尚、俺もエレノアもちゃんと師匠には感謝しているし、甘えているつもりである。
ただ、骸骨の体にハグされたりするのは勘弁願いたかった。
普通に痛い。骨が硬すぎて痛いから。
やるなら頭を撫でるぐらいにしてね。師匠の手は冷たくてゴツゴツとしているが、どこか暖かくて柔らかいのだから。
「........デモットよ。こんな弟子になるでは無いぞ。というか、大師匠という立場なのだから、デモットが私に甘えてもいいのでは?」
「何言ってんのさ師匠。師匠は殆どデモットに教えなんて授けてないでしょ?」
「そうよ。私達の可愛い弟子よ?横取りは頂けないわね」
サラッと俺達からデモットを取ろうとする師匠。
俺もエレノアもそれは許さんと言わんばかりに師匠を睨みつけると、それを見た師匠は大笑いする。
どうやら、試されたらしい。
「フハハハハ!!あのジークとエレノアがここまで師匠馬鹿になるとはな!!私も似たようなものだが、なにかに執着し強く生きてきたものほどこう言うのには弱いのかもしれんな!!良かったなデモットよ。この二人は確かに人間として必要なものが欠落しているちょっと頭のおかしな者達だが、弟子の事は好きでたまらないらしいぞ?」
「知っていますよ。ジークさんも、エレノアさんも、俺の事をよく気にかけてくれる優しい師匠です。ただ、手合わせの時だけは容赦ないですが。誰に似たのでしょうかね?」
暗に、“お前の教え方を引き継いだおかげで、こっちは苦労してんだよ”と言うデモット。
師匠はその言葉を聞くとニヤリと笑い、俺たちの頭にポンポンと手を載せると盛大に笑った。
「フハハハハハハハハ!!誰に似たのだろうな?!私には分からんな!!」
あんただよ師匠。
俺とエレノアはそう言いたくなる気持ちをグッと堪えつつ、久しぶりに感じた師匠の手の冷たさと何故か感じる暖かさに笑うのであった。
後書き。
X(旧Twitter)でサイン本のキャンペーンをやってるらしいです。10月21日までらしいので、お早めに‼︎
多分、#を付けてこの作品の名前で調べれば出てくるはず。
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