レベル400
タルボサウルスがエレノアの理不尽に押し潰され、少しばかり可哀想に思いながらも2週間が経過した。
俺は既にレベル400という壁を越え、今となってはレベル410となっている。
やはりと言うべきか、このダンジョンの経験値効率が滅茶苦茶良い。
無限湧きしてくれる特殊個体の魔物達はとにかく強く、経験値が豊富である。
それでいながら効率的な狩りの仕方を覚えてしまえば、あら不思議。久々にサクサクとレベルが上がる、最高の狩場が誕生だ。
俺はもちろん、エレノアのレベルもあっという間に上がりエレノアの今のレベルは399となっている。
「グゴァァァァァ!!」
「顔を合わせる度にご自慢の隕石落としをするのね。ダンジョンから出てくる魔物が同一個体ではないと言うのは知っているけど、芸がなくてつまらないわよ。炎に焼かれて死になさい」
第八階層に出てくる最強の特殊個体、タルボサウルス。
エレノアと顔を合わせた瞬間に隕石を降らせてエレノアを襲うが、既に狩り方を確立してしまったエレノアにとってその隕石はなんの障害にもなり得ない。
エレノアは自身の世界を顕現させると同時に動き出し、タルボサウルスの足にトンと軽く拳を添える。
「ハッ!!」
そして、武術家のように腰と体の動きだけで内部を破壊する一撃を撃ち込む。
俺もそうだが、基本的に生物は体内を鍛えることは出来ない。
あの耐久力お化けである
外が硬いながら中から壊す。
ブラックドラゴンを相手にしていた時に学んだその戦法は、今になっても有効なのだ。
と言うか、外も中も頑丈なスカーキングがおかしいだけだ。どうやって体内を鍛えたんだ?あの魔物は。
エレノアと俺で色々と実験してみたが、剣は通らないし、内部への打撃も無駄。魔術への耐性もかなり高く、心理顕現による理不尽の押しつけにもある程度耐える。
これでもっと多彩な攻撃手段を持っていたら、やつが間違いなくこの魔界で最強の魔物であった。
隕石を降らせることが出来たら、それはもう魔界は王者の椅子となっていただろう。
ゴキィ!!と嫌な音が鳴り響き、タルボサウルスは悲鳴をあげる間も無く地面に倒れる。
体が大きく、そして体重が重い分、バランスを崩されることに弱い。
自分達よりも大きい魔物を相手にしまくっていたお陰か、巨大な魔物に対する戦い方を心得つつあった。
「後は焼かれて死になさい」
「グゴァァァァァ!!」
心理顕現の炎が、世界を焼き尽くしていく。タルボサウルスは何とか抵抗しようと魔力を含んだ咆哮を発したが、エレノアの前でそれは意味が無い。
「フッ!!」
パァン!!と鳴り響く音。
エレノアは音を拳で弾いた。
前々から人外じみた性能をしていたが、心理顕現の修行と今まで以上に巨大な魔物を相手にしていたからか、さらに人外じみたことができるようになってるな。
俺の魔術を当たり前のように拳で弾くどころか、観音ちゃんの無の力を拳で弾けるだけの事はある。
まぁ、あれば自身に心理顕現の炎を纏って殴っているので、拳だけの力ではないのだが。
相棒が更なる領域に足を踏み入れつつあることに軽い恐怖を覚えながらも、俺は無事にタルボサウルスを討伐し終えたエレノアの元へと行く。
一撃で相手の骨をへし折れたのが嬉しかったのか、エレノアの顔はとても爽やかであった。
「楽しかった?」
「とっても楽しかったわ。やっぱり思いっきり殴れる相手というのは、いい練習相手になってくれるわね。あまり練習できなかった内部を破壊するパンチの練習が出来るのが楽しいの」
「それは良かった。俺には使わないでくれよ?はじけ飛んじゃう」
「使う隙なんて無いくせによく言うわよ。ジークの手数を何とか掻い潜って、一発二発殴るのが限界だわ」
エレノアはそう言うと、残ったタルボサウルスの素材を回収する。
俺たちの身長よりも大きな肉塊と、骨。そして牙と魔石。
魔石はちょっとした岩ほどの大きさがあり、俺たちが見てきた魔石の中で1番大きい。
魔石は大きければ大きいほど魔力の量が多いとされている。もちろん師匠のような例外もあるのだが、基本的にはそうだ。
この魔力だけで魔術師何人分になるんだろう?
「あ、あとレベルが400になったわよ。ジークの言う通りかなりの強化を感じるわね」
「だろう?レベル100毎に上がる能力値はかなりのものだよな。魔力量が増えたおかげで、さらに天魔くんちゃんが増やせたのは良かったよ」
「私は身体能力がさらに上がったわね。もちろん、魔力量や操作もさらに上がったけども」
エレノア、ついにレベル400に突入。
人には個性があるように、レベルが上がった時に上がる能力値は人それぞれ。
俺は魔力関連が大きく伸びるし、エレノアは身体能力が大きく伸びつつも全体的なバランスが取れている。
もちろん俺も身体能力は上がっているのだが、エレノアと比べちゃうとね........
未だにパァン!!とかできる気がしないし。
「これで一旦レベリングは終わりかしらね?」
「一応そうなるかな。後で絶対に来ると思うけど」
「こんなに効率のいいレベリング場も早々見つからないものね。しっかりと骨の髄までしゃぶり尽くしてあげないといけないわ」
レベル400になったら、悪魔王に挑むための準備やら何やらをすると決めている。
もう魔界に来てから2年近くが経過し、そろそろ魔界のクリアを目指しても時期だ。
心理顕現と言う新たな力を手にしたし、進化と言う人間では確認されていなかった現象を確認した。
更には進化によって第十級魔術の壁を打ち破り、天魔くんちゃんと言う新たな軍隊を率いる事となった。
ここまでやってもなお、確実に勝てるとは言い難い相手だろう。
何せ相手は、あのウルと師匠を相手にして引き分けた悪魔たちの王。
その取り巻きとして出てくるであろう大公級悪魔達の力も、まだ判明していない。
ウルと同格だったら俺たち2人だけで勝つのは無理だな。
「宣戦布告のために色々と準備するか。レベリングは裏でコツコツやっておくとして」
「ふふっそうね。もしこれでジークが魔界を制圧したら、今後の未来でジークの名前が永遠に残るわよ?そうね........“悪しき悪魔の王の支配から悪魔たちを解放した英雄ジーク!!”みたいに?」
「勘弁してくれよ。俺は英雄でもなんでもない。ただのレベル上げが好きな冒険者さ。それで言えばエレノアも英雄扱いされるぞ?」
「........それは嫌ね。私はただのレベル上げが好きな冒険者と共に歩む、ただの相棒だもの」
「だろう?まぁでも、やるけどね。悪魔達の中で最も強い存在である悪魔王。やつを倒してやっと、俺たちの魔界の旅は終わりを告げるんだからな」
元々この魔界に来てから決めていた目標だ。
悪魔王を倒して、この魔界を締めくくるのは決定事項である。
エレノアもそれは、分かっているだろう。
「えぇそうね。ちなみに、魔界が終わったらどこに行きたいとかあるのかしら?」
「大賢者マーリンが建国したと言われている、魔術の国“魔導国”辺りに行きたいな。ほら、仮にも俺達は魔術師だし」
「それはいいわね。魔術について、私達の知らない世界がまだまだあるのかもしれないし」
「その後は........魔大陸でも目指してみるか。魔王がいるんだろう?」
「そうよ。噂ではね。実在するのかも分からないけれど」
「魔界だって御伽噺だったんだ。きっとあるさ」
さぁ、悪魔王。こちらの準備はある程度整った。
近い内に戦争を仕掛けに行くから、そっちも準備しておけよ?
後書き。
この章はここまで。書籍化報告がやっと出来たことが嬉しかったです。結構時間掛かってるからね。
それはそれとして、今回は修行回でした。またどこかでつまづいて修行をする回は出すと思うけど、しばらくは無いかも。
いよいよ魔界編も最終章に突入です。お楽しみに‼︎
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