again vs傷だらけの王者
特殊個体のみを集めるかなり変わったダンジョンに出現した
もちろん、俺達が前回倒した個体とは異なる存在であるのは間違いないが、それでも強さは変わっていないはずだ。
いや、全盛期の頃を再現されていたらさらに強い可能性すらある。
俺とエレノアは魔術及び体術だけではこの王に勝てないと即座に判断すると、己の魂をこの世界に向けて顕現する。
それは万物の根源にして無たるもの。
それは炎の真髄にして愛憎たるもの。
幾千幾万もの腕を持つ観音が、地獄の業火ですら生温い燃え盛る炎が。
王者たる者の前に顕現する。
「グゴォォォォォォ!!」
「かち上げろ」
「燃え尽きなさい」
俺達を一口で飲み込もうとする欲張りな傷だらけの王者。それに対して俺とエレノアはそれぞれの力をぶつけて迎撃する。
観音ちゃんによるアッパーカットで顎をかちあげられ、エレノアの炎によって焼かれていく。
しかし、やはり傷だらけの王者と呼ばれるだけあって、その耐久力派凄まじいものであった。
綺麗に一撃入ったと言うのに、傷だらけの王者はグラりと体を揺らしただけで倒れなかったし、炎に焼かれても悲鳴一つ上げずに耐えながら俺達を睨みつける。
一応言っておくが、エレノアの心理顕現によって生み出された炎は一瞬でそこら辺の湖が蒸発するレベルだ。
水蒸気爆発が湖規模で起きるレベルの火力なのである。
それをさも当然のように耐えている傷だらけの王者。やはり王者のしての風格がある。
「マトモに一発食らってなんでピンピンしてんだよ。本当に生物か?」
「私の炎に焼かれながらも立っていられるその根性は相変わらずね。皮膚が爛れ、肉が焼け焦げ、骨すらも燃え始めているはずなのに」
「この先の階層はこれよりも強いやつが出てくるってことだよな?久々に苦戦を強いられそうだ」
「悪魔王に挑む前の準備運動としてはいいんじゃないかしら?さらに一つ上の段階へと進めるわよ」
骨まで焼かれていたら普通死ぬんですけどね。なんでこの魔物は当たり前のように立っているのだ。
本当に同じこの世界に生きる生物なのか怪しく思いつつも、俺とエレノアは徐々に心理顕現の出力を上げつつ容赦なく傷だらけの王者を攻め立てる。
観音ちゃんの無数の手による激しいラッシュに、エレノアの焼き焦がす炎。
更には白魔術と黒魔術を使って傷口を広げ、トンファーによる打撃で肉を破壊する。
一見一方的なやり口に見えるが、俺やエレノアにとっての一方的な戦いというのは、そもそも一撃で相手を消すことだ。
この攻撃のラッシュに耐えられている時点で、一方的ではない。
ちょいちょい反撃しようとしている素振りもあるしな。
観音ちゃんにお願いして、その動作を無理矢理停めさせているけど。
そうしてラッシュを仕掛けること数十秒。ようやく傷だらけの王者は膝を着いてその冠を地面に落とす。
ふぅ。やっぱりこいつ強すぎる。
耐久力という点においては俺達が出会ってきた魔物の中で、最も優れていると言えるだろう。
最後の最後まで俺達を食い殺そうとしていたし、その闘争心は決してバカにできるものでは無い。
どうしてかな。ただの経験値でしかないのに、こいつには敬意を払いたくなる。
単純に強いと言うだけではない。ひとつの生命として、一人の王者としての風格と決意が見え隠れしているのだ。
「やっぱり、他の魔物と違ってただ殺したという気分にはならないわね。ほぼ何もさせずに勝っていると言う点では同じなのに、何故かこの魔物には敬意を払わなくてはならないと思ってしまうわ」
「俺もそう思う。王者としての風格かね?ただ強いだけなら師匠やウルも同じなんだが........何かほかのものを感じるよな」
「傷だらけの王者。出会い方が違えば、いいライバルになれたのかしら?」
それがなんなのかと言うのは表現出来ない。しかし、確実にほかの魔物達とは違う何かを持っていた。
俺はそんなことを思いながら、先へと進むのであった。
ちなみに、この第五階層には
このダンジョン、もしかしたら滅茶苦茶経験値効率いいかも。
【特殊個体ダンジョン】
魔界の南部に存在する、魔界に存在した歴史上最強の特殊個体達を集めたダンジョン。ジークたちは知らないが、それぞれにちゃんとした二つ名があり、悪魔達からも恐れられていたという過去を持つ。
ダンジョンの中でもかなり特殊なダンジョンなのだが、なぜこのようなダンジョンになったのかは不明。
第五階層をで傷だらけの王者と再戦した俺達は、第六階層に入った段階で一旦村へと帰ってきていた。
心理顕現のコントロールや持続力と言う点ではかなり成長したと思っていた俺とエレノアだが、それなりの出力を出しつつ数時間も戦い続けるのは流石に無理があったのだ。
エレノアと手合わせしている時も、そんなに長い時間顕現はさせていなかったから見えてこなかった足りない部分。
出すだけなら丸1日でも余裕だが、戦闘となるとまた話が変わってくるのである。
「あー........疲れた........長時間の心理顕現を用いた戦闘はほぼやってなかったから、疲れが酷いな」
「そうね........さすがに疲れたわ」
維持だけなら簡単だが、戦闘となれば魔術を使ったりほかの要素も絡む。
それを全部処理しながら大体5時間ほど暴れ回っていたのだ。普通に疲れるのは当たり前と言える。
しかし、俺は四六時中狩りをしたいと言う欲求が抑えられない放置ゲーマーであり、どうせなら観音ちゃんを放置ゲーのように天魔くんちゃんたちのように使えるようにしてみたい。
放置狩りの効率は多分そこまで上がらないが、その訓練を行うことで強くなれるし、身の回りに出てきた魔物を積極的に狩ることでちょっとでも経験値が稼げるのだ。
「........またあの訓練をやろうかな」
「何をやるのよ」
「寝ていても心理顕現が使えるようにするアレ。昔は母さんの持っていた魔道具で魔力を寝ていても操れるように訓練していたけど、そいえば心理顕現ではやってないなーと思って」
「あー、あれね。私もジークにやらされたわ。お陰で2週間ぐらいは寝不足だったもの」
「いや2週間でできるようになるのは普通にすごいと思うけどな?俺は数ヶ月かかったし」
持続的な戦闘を可能にするためにはいくつかの条件がある。
その中でも最も重要なのは、無意識にその力が使えるようになる事だと俺は考えていた。
最初は箸の持ち方もままならない子供が、何度も何度も箸を使う内に無意識で動かせるようになるように。
リフティングが出来なかった子供が練習をして、息をするかのようにリフティングができるようになるかのように。
その力を無意識の内に操れるようになると言うのは、それだけで脳へのリソースの負担が減るのだ。
心理顕現もほぼ無意識で使えるようにはなっているのだが、やはりまだ意識して動かしたり命令したりする部分というのが存在する。
それを無くすために、寝ている間にも心理顕現を使い続けると言うやり方を身につけるのである。
それが出来れば、もっと長い時間の戦闘が可能になるだろう。
ココ最近は魔界の攻略に忙しく、最低限の訓練しかしていなかったしな。
また一度立ち止まり、自分達を見つめ直すとしよう。
「
「ふふっ、そうね。本人はそのつもりは無いでしょうけど」
こうして俺達はまた修行に取り組むこととなる。ありがとう傷だらけの王者。
やはりお前は敬意を払うべき存在だ。
後書き。
ダンジョンについてすごい考察コメが来て、めっちゃ嬉しい今日この頃。
ちなみに、傷だらけの王者は私が気に入っていたからと言うのもあるけど、割と重要な要素。
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