北の魔境攻略完了
観音ちゃんにオラオララッシュをされ、更には全身を焼かれたというのに最後の最後まで抵抗を続けた
一見、一方的な戦いだったように思えるが、傷だらけの王の抵抗は凄まじい。
一応言っておくけど、観音ちゃんの拳は一撃でアルゼンチノルスを砕くからな?そんな威力のパンチを何発も受け止めて立ち上がった傷だらけの王は、凄まじいなんてものじゃない。
こうして、俺達はこの北の魔境の主を倒した訳だが、この魔境にはまだ多くの魔物が残っている。
という訳で、ここからさらに2週間掛けて北の魔境の殲滅を続けた。
アカルビの甘い匂いに誘われた魔物達がやってきては、天と地獄に飲み込まれ、灼熱の業火に焼かれて行く。
これぞ魔境の狩り。まとめ狩りは最高だぜ!!
しかし、そんな狩りにもやがて終わりがやってくる。
当たり前だが、生物は死ねば減るのだ。ダンジョンのように毎度毎度復活してくれるわけじゃない。
結果として、日に日に甘い匂いに誘われる魔物は減り、気がつけば北の魔境はただの森へとなってしまった。
「そろそろ潮時かな。目に見えて魔物の数も減ったし、場所によっては数体しか寄ってこなくなっちゃった」
「狩りすぎなんですよ。普通はこんなに魔物を狩ることなんてないんですよ?」
「あら、私達の中では常識よデモット。その場にいる魔物は皆殺し。中には仲良くなれる魔物もいるでしょうけど、巡り合わせが悪かっただけの話だし」
「その仲良くなれた魔物の話が気になりますよ。誰なんですか?その幸運の持ち主は」
そりゃ、お前だよデモット。
俺もエレノアも悪魔は未だに経験値としてしか見ていない。もちろん、いくつかの例外があることは知っているが、それでも多くの悪魔は経験値でしかないというのが俺達の認識である。
ウルや村の悪魔達は師匠が残した思い出の場所と友人がいるという事でそもそも滅ぼす気は無かったが、それ以外は全部吹っ飛ばすつもりだったからな。
悪魔を見つけた瞬間ぶっ殺す!!と言わんばかりだった俺達を前にして、生き残るどころか弟子として可愛がられているお前は十分幸運な存在だと思うぞ。
まぁ、デモットもそれを抜きにしての話を聞いているのだろうが。
「純粋な魔物という点においては、ピィーちゃんが最たる例だな。フェニックスって知ってるか?」
「フェニックス?なんですかそれは」
「血を一滴飲めば50年の寿命が伸び、血をコップ一杯飲めば不老となり、血肉を喰らえば不老不死になると言われている魔物だ。人類大陸じゃ子供でも知っているような伝説の魔物なんだが、やっぱり魔界となると知られてないんだな」
「へぇ。そんな魔物がいるんですか。色々なところから狙われそうですね」
今の話を聞いて、色々なところから狙われていそうと言う感想が出てくる辺り、デモットは賢い。
デモットは理解しているのだ。どんな生物でも死は恐ろしく、決して死なない肉体を欲していると。
もしかしたら、悪魔も不老不死を探しているのかもしれないな。
「滅茶苦茶狙われているな。俺達が旅をしている時、そのフェニックスの子供に偶然出会ってな。保護したんだよ」
「ピィーちゃん、可愛かったわよね。今も元気にしているのかしら?」
「ジークさん達が魔物を保護した........?!妙ですね。そんな魔物、殺して経験値に変えるか食べそうなんですけど........ハッ!!分かりましたよ!!もしかして、そのフェニックスの子供を囮にして魔物を誘き寄せたら効率良くね?とか考えてたんでしょ!!」
大正解。
俺たちの事をよく分かっているじゃないかデモット。
そう。ピィーちゃんを生かした大きな理由の1つとして、ピィーちゃんが狩りに使えるってのはあったな。
後、普通に可愛かったからという理由もあるけど。
ちょっと我儘で手の焼ける(物理)子であったが、いつも元気で可愛らしい子であったのは間違いない。
なぜ猫が地球上で生存できたのか。それは、可愛いからだという理由が分かった気がしたもん。
可愛いは正義。可愛ければ、大抵の事は許せてしまう。
「鋭いじゃないかデモット。俺達はその子供の鳴き声を使って、魔物を大量に呼び寄せては狩りをしてたんだよ。ちなみに、お母さんも来たな」
「うちの子を返せ!!ってなってたわね。その後和解したし、お母さん公認で狩りをしていたわ」
「........???え、親が出てきて親が子供を使っていいよって言ったんですか?」
「周囲の魔物を狩ることは、結果的にフェニックス親子の安全に繋がる。利害が一致したんだよ」
「あぁ、そういうことですか。フェニックスの世界は厳しいのかと思ってしまいましたよ」
もうピィーちゃん家族と離れて五年ぐらいか?そろそろ大きくなっているのだろうか?
またあの元気な何声を聞きたいが、一緒に旅ができるぐらいまで強くなってからという約束がある。
まだ会いに行くのは早いだろう。
「純粋な魔物で言えば、このフェニックス親子だけかな。ほかは師匠とか元人間の幽霊とかだし」
「そういえばそうね。大抵の魔物は殺してしまっているし、フェニックス親子ぐらいね」
「魔物からしたら、ジークさんとエレノアさんは死神ですね。出会ったら最後、死の鎌を振り下ろされてあの世行きですよ。いやー、俺は本当に運が良くて助かりました。いやホントに。最初に出会った悪魔で良かったですよ」
「俺達からしても、博識なデモットと最初に出会えてよかったよ。お陰で魔界のことについて色々と知れたしな」
「ふふっ、今じゃ私達の可愛い弟子よ。人生、何があるのかわかったものじゃないわね」
エレノアはそう言うと、偶然通りかかったアロルスの生き残りに向かって炎を飛ばし燃やし尽くす。
デモットの顔が若干引きつっている気がするが、気の所為だと思うことにしよう。
「そういえば、デモットはレベル幾つになったんだ?一応ここでの狩りもそこそこな経験値が入ったと思うんだが........」
「あ、俺はレベル99です。あと一つで夢の三桁に到達しますね」
「おぉ!!マジかよ!!というか、それを先に言えよデモット!!こうしちゃ居られねぇ、エレノア、デモットのためにちょっと魔物を集めてくるぞ!!」
レベル99とレベル100には大きな差がある。
悪魔もおなじなのかは知らないが、少なくとも俺達はかなり大きな違いがあったからな。
というか、デモットよ。レベル99で止まっているのって気持ち悪くないのか?俺だったら、徹夜してでもレベル100までは上げようとするぞ。
キリのいいところでレベリングって終わりたいものじゃないのか?
「誰かのために魔物を集める。昔じゃ考えられなかったわね。ふふっ、ジークも成長したという事かしら?」
「あの、嫌な予感がするんですけど」
「喜びなさいデモット。今からレベル100になるまで延々と魔物と戦わされるわよ。今の間に準備しておきなさい」
「え、マジですか。ゆっくりレベル100になっても........」
「デモット、ジークの性格を知っているでしょう?あぁなったら止められないわよ」
「エレノアさんが何とかしてくれれば........」
「そして私も乗り気満々よ。だって気持ち悪いでしょう?あと一つでキリのいいレベルになるというのに、足を止める理由はないわ」
「あぁ、これは無理だ。死ぬ気でやらないと........」
こうして、北の魔境に残った魔物たちは全てデモットの養分となり、約6時間のレベリングでデモットは三桁の壁を突破した。
ちなみに休み無しで戦わせた為か、デモットの顔が死んでいたが最後はちょっと嬉しそうであった。
今日の晩御飯はブラックドラゴンステーキだ!!
後書き。
この章はこれにておしまいです。いつも沢山のコメントありがとうございます。全部読んでるよ。
結局狩りこそが正義のお話でした。次回は、この世界のちょっとした歴史に触れるかも?(間話を1話挟みます)
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