北の魔境
属性変換魔術とは
天魔くんちゃんが新たに放置ゲーの主役として抜擢され、それまでお世話になった悪魔くんは引退となった。
ありがとね悪魔くん。今まで良く頑張ってくれた。
とは言っても天魔くんちゃんの半分は悪魔で出来ている為、この先も彼らは生き続ける。
俺が死なない限り、悪魔くん達も天使ちゃん達も死ぬことは無い。
一部の悪魔くん以外の全てを回収し、新たに天魔くんちゃんに狩りを任せることとなった翌日。
俺は村に戻ってきて新たな住人となったポートネスの元を訪れていた。
丸メガネに白衣を着た悪魔の中の変人研究者。以下にも“私は研究者です”と言いたげなこの悪魔に、魔術についていろいろと教えてあげる約束をしていたからな。
「はへぇ、人間の考えることはすごいね。確かにこれなら権能よりは使い勝手がいい。問題点をあげるなら、才能と既に魔力に属性と言う概念が宿っている悪魔には少々自由が効かないことか」
「そういう事だ。だが、使えそうだろう?」
「そうだね。少なくとも、私が知っているものとは完全なる別物。とても興味深く、そして面白そうだ。暫くはこの研究をしていつの日か権能に生かせる時が来るかもしれないな」
ワクワクとした表情で魔法陣を見つめるポートネス。
元々研究者だということもあってか、彼女はとにかく理解が早かった。
軽く魔術に着いて教えてあげただけで、そのメリットやデメリットについて理解し、今も悪魔にとってどう作用するのかを完全に理解している。
正直、デモットよりも頭が回る。さすがは、1人で研究を続けてきた変人悪魔だ。
「この属性を他の属性に変えることが出来る魔術は無いのかい?」
「ない。おそらく誰かが研究はしているだろうが、成功したという事例は聞かないね。もしそんな機構を持った魔術があるのであれば、人類大陸の在り方か大きく変わっているはずだ」
「なるほど。と考えると、長年人類が考えても得られなかった何かが不足しているということか。是非ともその資料を読んでみたいな」
「魔術については最先端を行くと言われている、魔道国に行けば何かあるかもしれないな。あそこは大賢者マーリンが作った国とまで言われ、魔術の研究が最も盛んな国だし」
「盗み出したりできない?」
「無茶言うな。一応、人類大陸では人類の守護者たる冒険者としての肩書きがあるんだ。バレたらえらいことになるぞ」
サラッととんでもないことをお願いしてくるポートネス。こいつ、もし盗み出せると言ったら“よろしく”と言うつもりだっただろ。
やばい、師匠を思い出してしまう。頭のネジがぶっ飛んだあの師匠と同じような思考回路が見えるぞ。
寿命の問題は無いから、流石に街1つを生贄に捧げて骸骨になることは無いだろうが。
師匠、今となってはお袋に甘やかされて喜ぶ美人だけど、昔は相当な極悪人だからな。お前はそうなってくれるなよポートネス。
「残念だ。資料があれば無駄な研究をせずに済むというのに」
「その無駄な研究が時には役に立つんじゃないのか?」
「そんな都合のいい話がポンポン出てきてたまるか。ともかく、魔術についてはある程度理解した。取り敢えず、研究を始めるよりも実際に使えなければ意味が無さそうだということもな。早速だが色々と試してみるとしよう。えーと、確かこれをこうして........」
そう言いながら第一級魔術の取得を始めるポートネス。
魔術を理解するには、実際に使ってみるのが一番早い。それを理解しているポートネスは、早速魔術を使い始めた。
最初はゆっくり慎重に魔法陣を作る事すら難しい。こればかりは慣れでしかないので、頑張ってくれとしか言えないな。
「属性変換魔術。本当にあるのかしらね?」
「どうだろうな。作れたとしても、それを現実的な難易度に落とし込まないといけない。第十級魔術の属性変換魔術なんて、誰も使えないだろう?」
「そうね。私たちぐらいしか使えないし、私たちにそんなものは必要ないわ。あ、でも白魔術を使えるのは便利ね。自分の傷を治せるのだし」
「エレノアが自己治癒なんて覚えたに日には、ほぼ全ての生命体が勝てなくなりそうだな........」
馬鹿みたいな身体能力と、馬鹿みたいな魔力量。さらに、心理顕現による絶対的な領域を持った超理不尽なラスボスの登場になってしまう。
討伐しに来た勇者が“こんなんチートやチート!!”と言いながら、涙目で敗走するだろう。
現に、今の時点でも人類大陸においてエレノアよりも明確に強いやつは師匠ぐらいしかいないしな。
「あら、白魔術を使っているジークがそれを言うの?私からしたら、相当理不尽な力よ。どれだけダメージを与えても、魔力さえ残っていれば全部回復されてしまうのだから。昔は黒魔術の方が戦闘において優秀で使いやすいと思っていたけど、今では白魔術のインチキさに嘆いているわ。炎魔術で自分の体を治せたら最高なのに」
「それこそ、炎の不死鳥フェニックスのようになるしかないだろうな。あの不死の力が宿れば本格的に死ななくなるぞ。魔力が続く限りは不老不死だ」
「魔術でフェニックスになれる魔術でも作ってみようかしら?」
「いいんじゃないか?変身系の魔術だなんて、ロマン溢れるな」
フェニックスに変身できる魔術とか、すげーかっけぇじゃん。
いいなそれ。俺もなにかそういう感じの魔術を作ってみたいよ。
ドラゴンに変身する魔術とか作れたら、すごく楽しそう。強いかどうかは一旦置いておく事になるだろうが。
「そういえばジーク。またなにか新しい魔術を作っていたわよね?順調なのかしら?」
「昔作った魔術を少し改良してる。もし完成したら、ロマンあふれる魔術になるだろうな」
「へぇ。それは楽しみね」
「そういうエレノアは?」
「丁度魔術の新作が作り終わって、実験段階に入るところよ。それが終わったらフェニックスの魔術でも作ってみようかしらね」
実験段階(ダンジョン崩壊のお知らせ)。
毎度毎度魔術の試し打ちとして吹き飛ばされるアルゼンチノルス君には涙を禁じ得ないよ。
4時間に一度復活するのだが、その度に魔術の実験台として燃やされて斬られて、消滅させられて叩き潰されてるからな。
無駄に耐久力だけはあるから、魔術の威力実験なんかには最適すぎるのだ。
多分そろそろ1000体を狩るぐらいだと思う。
「お?これでいいのかな?んーでも行使されている様子がないね」
「失敗だな。炎系の魔術には適性がなかったらしい。補助系の権能だから、無属性分類されていると思ったんだがな........」
「全魔術を使えるのではないかと思っていたけど、違うのね。悪魔の魔力は摩訶不思議だわ」
第一級炎魔術“灯火”を使おうとしたポートネスだが、残念ながら才能がなかったようだ。
補助系の権能は魔力に属性が宿っていないと思っていたのだが、どうやら違うらしい。
それとも、無属性というひとつの属性を有しているのか?そうなると、身体強化魔術とかがメインになるかもしれんな。
やったねポートネス。脳筋研究者悪魔とかいうキャラになれるぞ!!
「私が手順を間違えた可能性は?」
「見ていたけど、無いね。間違ってたらいってる」
「無いわね。魔力操作も魔法陣の構築もちゃんとできてきたわ。だから、適性がなかったというわけよ」
「ますます属性変換魔術とやらを作ってみたいな........いや、先ずは私の使える魔術を探してみなければならない。もう少しだけ付き合ってくれないか?」
「もちろん。もう少しは見ていてあげるよ。最初のうちは魔術を使うのも割と危険だからな」
「そうね。もう少しだけ付き合ってあげるわ」
その後、ポートネスは予想通り補助系統の魔術に適性があったことがわかった。
権能を持っている悪魔の場合、無属性もまた属性として分類されている可能性もありそうだな。
悪魔の魔力は結構融通が効かないのかもしれない。
後書き。
魔術実験の度に雑に殺されているアルゼンチノルス君。悲しいことに、ジーク達はコイツを経験値がもらえる実験動物としてしか見ていない。泣いてもええんやで?
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