ノアvsウル1
ウルに連れられてやってきたのは、なんとダンジョンであった。
村の結界を抜けて少し歩いた場所にダンジョンがあるとは、この村の立地は滅茶苦茶いいな。
態々そういう場所を探して村を立てたのだろう。
「フハハ。このダンジョンも懐かしいな。ここで最後の夜を明かした」
「懐かしい記憶だ。まさか、またこうしてお前と来る日が来ようととは思ってもみなかった。声は聞けるが、会えるとは思っていなかったのでな」
「私もだ」
ダンジョンの中に入るとそこにあるのはだだっ広い平原。第一階層で暴れると地上にも被害が出るとのとこで、第二階層へと降りてゆく。
途中でパキケファルスが出てきたが、こんな化け物パーティーに敵うはずもなくコンマ数秒で消し炭にされていた。
南無三。
「よし。ここならば派手に暴れても問題ないだろう。第一階層に被害は出るかもしれんが、地上が吹き飛ぶことは無い」
「フハハ。では、我から遊ぶとするか。ジーク、エレノア、離れて身を守っているといい。巻き込まれて死ぬでは無いぞ?」
「人を殺すような威力で遊ばないで欲しいんだけどね。分かった。お互いに、気をつけて」
「ウル様、ノア様。お願いですから怪我はしませんように」
「分かっている。軽く遊ぶだけだ。軽くな」
そう言うと2人はゆっくりと後ろを向いて歩き始める。
2人が再び目を合わせた時、この階層は吹き飛ぶだろう。
今の間に離れて防御魔術を展開しておこう。流石に第九級魔術の防御をぶち破って来るほどの威力で遊ぶとは思いたくないが、師匠は楽しくなると周りの被害とかあまり考えないからなぁ........
そんなところはエレノアに似ている。
エレノアの方がもっと酷いが。
「失礼なことを考えたでしょ」
「気のせいだよ。ほら、始まるぞ」
第二階層も平原のこの場所で、師匠とウルがお互いに視線を合わせる。
師匠は骸骨姿に戻り、魔力を無駄なことに回さないつもりだ。
「先手はくれてやる。アレを使ってこい」
「フハハハハ!!随分と生意気ではないか!!私と殺し合いした時、引き分けだったのを覚えてないのか?」
「弟子に現を抜かしたお前と、今も尚戦っていた私。どちらが衰えが少ないと思う?」
「フハハ。私の種族を忘れたか?私は、エルダーリッチだぞ」
師匠はそう言うと、バッと横に手を差し出す。
なんだ?と思っていると、地面に魔法陣が映し出され、そこからひとつの棺桶が出てきた。
ゾワリ。
と、背筋が一気に寒くなる。
おそらくはアレが師匠の本気であり、切り札なのだろう。そして、あれはやばい。
俺の本能が危険信号を送り続けている。
今すぐにでもこの場から逃げ出した方がいいと。
「........何なのかしら。あれは。とてつもなくやばいと言うことだけは分かるわよ」
「ぜ、全身の震えが止まらないです........なんなんですかあれは」
「あぁ、この感覚。懐かしいですね。あれを見た悪魔達は敵味方構わず恐れを成していましたよ。この目で見るのは何時ぶりですかね」
本能的な恐怖を感じるのは俺だけではない。
エレノアもその頬に冷や汗を垂らし、デモットに至ってはガタガタと震えてしまっている。
師匠の切り札を見た事があるガレンさんだけは唯一懐かしそうにそれを見ていたが、足が静かに震えていた。
この場で唯一、師匠の今の姿を見ても怯えてないのはウルだけだ。いや、黒い布で目隠しされてるんだけどね。
「ガレンさんはあれを知ってるの?」
「えぇ、知ってますよ。ノア様と共に戦場を駆け巡った一冊の本。確か、“
え、大公級悪魔を殺してんの?
強すぎだろ師匠。一体どれだけ実力を隠してんだ。
嘘じゃん。俺達が修行の成果を見ていた時に“今の私では無理”みたいな事言ってたけど、無茶苦茶余裕俺達に勝てるじゃん。
やっぱり嘘つき師匠は嫌いだ。拗ねてしばらく口を聞いてやらない方がいいかもしれん。
「暫くは冷たく接しましょうかね?」
「奇遇だな。俺も同じことを考えてた」
どうやら、エレノアも同じことを考えていたらしい。
弟子の喜びを返せ。後出しでとんでもないものを持ち込んでくるな。
「来たれ、
棺桶が開き、その中に包まれた本が姿を現す。
おそらく、あれが本体なのだろう。棺桶は封印かな?その封印の上からでも凄まじい気配を感じた辺り、その本のやばさを感じる。
「それを見るのも懐かしいな。何か分かったのか?」
「残念ながら、未だ何も分かっていない。著者も作られた意味もな」
「そうか。それが分かればもっと力を引き出せるかもと言っていたのにな」
「フハハ。かもしれんな。では、お言葉に甘えて先手は貰うとしよう。良いのか?一撃で終わるぞ?」
「安心しろ。お前のへなちょこな魔術で私が傷つく────」
ドゴォォォォォォン!!
刹那、ウルの姿が掻き消える。
師匠が攻撃したのは分かったが、俺が攻撃を認識したのは既に攻撃が終わってからであった。
何が起きたんだ。師匠は魔術を行使する際の魔法陣を隠す技術を持っているのは知っているが、今のは無詠唱で発動できるレベルを超えていたぞ。
目を離していなかったはずなのに、魔力をゆらぎが一切見えなかった。
どんな魔術を使ったのかもさっぱりだし、俺はこんなヤベー奴に喧嘩を売ったのかと今からながら過去の自分の愚かさに頭を抱える。
「い、今何が起こったんですか?気づいたらウルさんのいた場所が吹っ飛んでたんだすけど........」
「奇遇だな。俺もだ。喜べデモット。今、俺達とデモットが見ている景色は同じだぞ」
「そうね。何も分からなかったわ」
「何度見ても意味不明ですね。今の一撃で大半の悪魔は死にますよ」
あまりに一瞬すぎる出来事に、この観客席でその動きを捉えられたものは誰もいない。
唯一、その動きを捉えられた者がいるならば、それは師匠と相対する人物だろう。
「人が話している最中だと言うのに、礼儀を知らんのか?昔、親から習わなかったか。人の話は最後まで聞きましょうとな」
舞い上がる砂埃が一気に霧散し、そこにはウルがポツンと立つのみ。
ダンジョンの地面を彩っていた芝生は、ウルの足物にだけ残り、その後ろにあったものは全て消えてしまっていた。
今の攻撃に反応したのかよ。しかも、当然のように無傷。
伊達に師匠と共に立っていた訳では無いらしい。このイカれた師匠と共に立つには、最低限これに対処できるだけの力が必要なのか。
「フハハ。生憎、長く生きたせいで親の言葉など忘れたわ。どんな顔だったのかも思い出せんよ。なんなら、つい最近私の肖像画を見るまで自分の顔すら忘れていたほどだ」
「ふん。その口は昔と変わらずよく回る」
ポツ。
地面に一粒の雫が落ちてきた。
今は防御魔術で物理、魔術共に耐性のある壁を用意しているので俺達が濡れることは無いが、今確かに地面が濡れた。
「........ウルほどでは無い。そして、お前は相変わらず雨が好きだな」
「私の根源にして、得た悟りだ」
ポツポツ。
雨は徐々に大きくなり始める。
「その悟りとやらが、私には理解ができん。抽象的過ぎないか?もっとこう........論理的な話であると思っていたのだがな」
「だからこそ、至る価値があるのだ。ノア、お前には一生分からんだろうがな」
ポツポツポツ。
最初は静かな囁き。しかし、雨の囁きも数が増えれば騒音へ変貌する。
やがて雨は豪雨の如く降り始め、気づいた時にはこのダンジョンの中は滝のような雨が降り注いでいた。
「心理顕現。我、世界の流れを悟ったもの也。“
「フハハハハ!!来い!!ウル!!久々に本気で遊んでやる........!!」
ここからが本番。かつて共に王へ剣を抜いた悪魔と骸骨の、楽しい時間が始まった。
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