孫弟子
かつて魔界で暴れ回り、悪魔からも悪魔と言われ恐れられた師匠が魔界に帰ってきた。
その友人である裏切り者の悪魔、ウルはどうやら師匠の事が好きらしい。
ライクではなくラブの方で。
こんな骸骨のどこがいいんだとは思うが、人の愛は人それぞれ。俺はこのことに関しては触れないでおこうと決めた。
触らぬ神に祟りなし。人の恋愛事情に首を突っ込めば大抵痛い目を見る。
「ほう。ジークとエレノアも弟子を取ったのか?しかも悪魔の」
「出会いは最悪だったし、最初は情報を聞き出したら経験値にしてやろうかとも思ってたんだけど、一緒にいる間になんやかんや情が移ってね。今じゃ可愛くて仕方がないよ」
「素直で真面目。それに、博識だから魔界のことを色々と教えてくれたわ」
「フハハハハ!!お前達が弟子を取る日が来るとは!!ココ最近の出来事の中では1番笑えるな!!」
ウルとの再会を果たした師匠は、ある程度2人でなにか話すとその後俺達に魔界はどうだったかと聞いてくる。
この大陸でも放置ゲーを始めていることには頭を抱えていたが、俺達に新たな弟子ができたという話を聞いて師匠はとても嬉しそうであった。
「で、その悪魔に魔術を教えちゃったんだけど、不味いかな?」
「フハハ。我が魔術を教えなかったのは、人類の大陸を守るためだ。悪魔が魔術を覚えたら厄介だろうと考え、情報が漏れることを懸念してのだよ。今はジークとエレノアが居る。悪魔の襲撃に対しても最低限の対策が取れていたのを確認できたし、どうせ悪魔達はお前たちの手によってほぼ滅びるからな。好きにするといい。王を殺すつもりだろう?」
「今のところはそのつもりだけど、明らかに実力が足らないね」
「いいとこ辺境伯級悪魔を倒せるかどうかってところだと思ってるわ」
「ふむ。侯爵級悪魔以上にはまだ勝てないと思っているわけか。いい判断だ。今の二人では、王おろか侯爵級悪魔にすら敵わぬだろう」
師匠がそう断言するってことは、例え天地がひっくり返っても俺達は侯爵級悪魔には勝てないってことだな。
もっとレベルをあげなきゃダメか。もう1つ2つダンジョンでも見つけに行こうかな。
この大陸に出てくる魔物は何故か恐竜にそっくりだし、観光ついでにレベル上げしたい。
モササウルスがみたいよモササウルスが。
某恐竜の世界で、1番いい所を全部持って行ったあのモササウルス君を俺は見たいよ。
出来れば、背中に乗せて欲しい。前世の頃、俺がまだ子供だった頃に、モササウルスの背中に乗る絵を書いた覚えがある。
子供の頃の夢を叶えたいなぁ。
そんなことを思っていると、師匠は後ろを歩いていたウルに話しかけた。
「あ、そうだウル。この子達にアレを教えてやってくれ。私は習得できなかったが、この子達ならばきっと自らの答えを出せるはずだ。覚えられれば、王をも殺す牙となるのは間違いないぞ」
「........ノア。お前変わったな。昔ならそんな事絶対に言わなかったぞ」
「フハハ。言っただろう?歳月とは人を変えるものだ。暇つぶしに取った弟子達が可愛く見えて仕方がないのだよ」
「暇つぶしに取ったと言うか、攫っただけどね」
「確かにあれは取ったとは言えないわね。半強制的に弟子にさせられたわ。後悔はしてないけれども」
「ジーク、エレノア、うるさいぞ」
あれを弟子に取ったと言ったらダメだろ。攫って強制的に弟子にしたという方が正しい。
師匠、自分を正当化しないで。
師匠も自分が人を攫って無理やり弟子にした事は認めているのか、すこし抗議するだけでそれ以上は何も言わなかった。
「........まぁ、お前がそんなになるまで可愛がる弟子だ。少し気になるし、教えてやろう。他ならぬ友の頼みだしな」
「フハハ。助かる」
「何を覚えさせようとしてるの?」
「それは見てからのお楽しみだ。私には覚えられなかった、魔術とはまた違う力の話だ」
魔術とはまた違った力。権能やスキルのような、魔術とは別物として扱われる技能を俺達に覚えさせるつもりか。
でもそういうのは、そもそもの種族が違ったり生まれ持った才能で決まるんじゃないのか?
「俺達に覚えられるの?」
「思考のある意志のある生き物ならば、覚えられる可能性がある。誰にでも習得の機会はあるが、誰でも覚えられる訳では無いな。現に、私は覚えられなかった」
師匠ですら覚えられなかったものを俺達が覚えられるとは思えないが、どうやら師匠は俺たちなら習得できると思っているらしい。
一体何を覚えさせようとしているのか気になるが、今はデモットを紹介する方が先だな。
しばらく村の中を歩くと、ナレちゃんと遊ぶデモットが見えてくる。
どうやら花の冠を作っていたらしく、花を詰んで丁寧に編み込んでいた。
デモット、マジで器用だな。料理もできるし、指先が結構器用だなとは思っていたが、こんなことも出来るとは。
「デモット!!ちょっといいか?」
「あ、ジークさん!!ナレちゃん、ちょっと待っててね」
「ん。わかった」
デモットは慣れた手つきでナレちゃんの頭を優しく撫でると、作りかけの花冠を置いてこちらへ走ってくる。
ちなみに、師匠は今超絶美女ちゃんなので、デモットは師匠に気づいてない。
「お師匠様を連れてきたんですか?」
「あぁ。この人が俺たちの師匠だ」
「フハハハハ!!こやつがジークとエレノアの弟子か。ふむ........なるほどなるほど。男爵級悪魔ぐらいか。ジークとエレノアの師、ノアだ........弟子の弟子ってなんというのだ?」
「孫弟子だね。ちなみに師匠の師匠は大師匠だよ」
「ふむ。では孫弟子デモットよ。よろしく」
「は、はい。よろしくお願いします大師匠様。天炎魔の弟子、デモットです........あのー、失礼なことをお伺いするのですが、ジークさんやエレノアさんから聞いた話では骸骨姿なのでは?」
「フハハ。これは魔術で姿を作っているのだよ。それを見抜けぬとは、まだまだだな」
師匠はそう言うと、美女から骸骨に戻る。
デモットは目を大きく見開き、100点満点のリアクションをしてくれた。
デモット、こういう時気持ちのいい反応をしてくれるから好きなんだよな。ちゃんと求めてた反応をしてくれると言うのは、意外と大事な要素である。
「フハハハハ!!いい反応を見せてくれるな!!ジークやエレノアが気に入る理由も分かる!!」
「素直でいい子だろ?俺達と出会った時はチンピラだったけど」
「ジークさん、その話はやめてください。強く見せるためには必要だったんですよ」
「フハハ。どれ、少し私が遊んでやろう。孫弟子の実力を見てみたいしな。いや、その前にウルと遊ぶとするか?」
「........私とやるのか?私は構わんが」
「いいだろう?私と本気で遊べる相手は数少ないからな。久々に本気で運動するのも悪くない」
どうやら師匠は久々に会った友人と遊びたいらしい。
その体から闘志が溢れだしている。
そして、その闘志を見たウルも静かに闘志を燃やしていた。
ウルは小さく笑うと、師匠を煽る。
「フッ、怪我をしても泣くなよ?」
「フハハ。その言葉そっくりそのまま返してやろう。その布が濡れないことを祈れ」
「フフフッ........」
「フハハ........」
徐々に大きくなり始める闘志。
不味い。ここは村の中で、近くにはナレちゃんがいるんだぞ。
俺が止めようか迷っていると、ガレンさんが1歩前に出た。
「ウル様、ノア様。ここは村の中ですのでお控えください」
「む、確かにそうだな」
「私としたことが、少々熱くなりすぎた。ではいこう。暴れるには最適な場所があるんだ」
ウルはそう言うと、先にスタスタと歩いていく。
俺はこの二人の戦いが見られるのかと、少しワクワクしながらその後を追うのだった。
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