デモット、レベル50


 馬鹿でかい恐竜アルゼンチノサウルスに似た魔物、アルチノルスを討伐したあとも俺とエレノアはデモットがレベル50になるまで狩りを続けた。


 ちなみに、ダンジョンボスの馬鹿でかい魔物についてデモットに聞いたが、こいつは魔界でも滅多にお目にかかれない超貴重な魔物として知られているらしい。


 誰も見た事は無いが、誰もが知っているみたいな伝説的な存在だったんだとか。


 ブラキオルスよりも大きなその体は、どんな攻撃も跳ね返し1歩歩けば街が壊滅して悪魔達に死を告げる。


 そんな誰もが恐れる魔物として、アルチノルスは君臨していたそうだ。


 デモットも実際には見たことがなく、折角なので見せてやろうと言うことで連れて行ったが、その凄まじい大きさに目を輝かせて“デッケー!!これが伝説!!”とはしゃいでいたね。


 自分よりも明確に強いやつの圧を目の前にして、恐れるのではなく目を輝かせている辺りデモットはメンタルが強い。


 時としてそのメンタルは命取りとなるが、どれだけ強い相手だろうがビビらないと言うのは割と重要な要素だったりするからな。


 どうしても避けられない強敵と戦う場合は、恐れたらダメだ。


 その点、デモットは強いヤツと戦うための心構えができている気がする。


 最初に出会った時も、俺に向かって喧嘩を売ってきただけの事はあるな。


「遂にレベル50に到達しました!!」

「おめでとうデモット。これで一旦は一区切りかな」

「おめでとうデモット。よく頑張ったわね」


 今日も狩りを終えて、俺達の家に帰ってくるとデモットは嬉しそうに今日の戦果を報告する。


“褒めて褒めて!!”と言わんばかりに何かを期待するその顔に釣られて、俺は思わずデモットの頭を撫でてしまった。


 こいつ、マジで可愛いな。こう、見た目の可愛さと言うよりも、内面の可愛さが溢れ出てて構ってあげたくなる。


 多分、お袋とかに見せたらものすごく可愛がられるタイプだ。


「えへへ。これで少しは強くなれましたかね?」

「そりゃレベルが上がれば誰だって強くなるさ。この世界における強さは、レベルが第一でその次に技術だからな。どれだけ才能のないやつでも、レベルが100もあれば大抵のやつには勝てる。もちろん、戦闘における技術も必要不可欠ではあるけどね」

「そうね。デモットはその辺かなり頑張っていると聞いたわよ。効率的に魔物を倒すだけではなく、自分に縛りをつけて技術を磨く練習もしていたと聞いたわ」

「悪魔君さんにアドバイスされたんです。下手にごり押す癖が付くと、中々治せないから最初から技術を磨きながら戦えって。実際、レベル上げしていてその通りだなと思いました」

「........(デモット、素直でちゃんと言うこと聞くし頑張り屋さん。きっと強くなれる)」


 腕を組んでうんうんと頷く悪魔君。


 後方師匠ヅラするなよ悪魔君........いつの間にか悪魔君がデモットを気に入ってしまったみたいだな。


 だが、言っていることは間違っていない。俺とエレノアは効率が悪いという理由でやらないが、魔物に対して技術で戦うのも必要な要素である。


 技術は使わなければ上手くならない。


 それは間違ってないし、急に始めて身に付くものでもない。


 俺とエレノアの場合は、お互いに手合わせをして技術を磨いている。


 レベル上げと技術磨きを別々にやっているということだね。


「悪魔君さんも、俺の護衛ありがとうございます。お陰で安心して狩りができますよ」

「........(お礼なら主に。僕は何もしていないからね)」

「ジークさん。ありがとうございます」

「気にすんな。流石に弟子に死なれるのは目覚めが悪すぎるしな。それに、面倒を見てやるのも師匠としての勤めだよ。面倒を見てるの、ほとんど悪魔君だけど」

「まぁ、悪魔君はジークの魔術だから、ジークが面倒を見ていると言っても過言では無いわよ」


 そう話していると、メイドちゃんが料理を作って持ってきてくれる。


 今日はデモットがレベル50に到達した記念だ。せっかくなら豪華な料理を作ろうということで、メイドちゃん達をフル稼働で動かして手の込んだ料理を作ってもらった。


 俺が作っても良かったのだが、デモットの話が聞きたくてダメだったよね。


 デモットの話は結構面白いのだ。この前パキケファロルス相手に頭突き勝負したとか言ってた時は、流石に声を大にして笑ったよ。


“なんてそんな事をしたんだ?”と聞いたら、“頭突きを鍛えておこうかと”と大真面目に答えられた時は面白すぎてダメだった。


 頭突きなんてほぼ使わないし、相手を間違えてるよ。


「........(おまたせ致しました)」

「ありがとうメイドちゃん」

「ありがとねメイドちゃん。今度一緒に温泉に入りましょう」

「........(エレノア姐さんのはだk────はい。楽しみにしています)」


 ん?なんか一瞬メイドちゃんから物凄く興奮し感情が読み取れたような........気のせいか。


 用意された料理は、以前パーティーで作ったのと同じ料理。


 メイドちゃん達は賢いので、基本的に1度覚えたものは忘れない。


 俺は果実水が入ったコップを手に取ると、音頭を取る。


「それじゃ、デモットがレベル50に到達した事に、カンパーイ!!」

「「カンパーイ!!」」


 コツンと、3つのコップがぶつかり、楽しい夕食の時間が幕を開ける。


 そういえば、俺達が師匠の元で第七級魔術を習得できた時もこんな感じで乾杯してたな。


 懐かしいし、やっていることがほぼ同じだ。


 やはり、弟子は師に似るものなのか。


「ん、このお肉美味しいわね。アルチノルスの肉だったわよね?」

「それは確かそうだな。口に合ったか?」

「えぇ、とても美味しいわ。脂身が少なくて私好みね」

「おー、これも美味いですね。こんな料理ばかり食べていたら、元の生活には戻れないですよ」

「料理の作り方は覚えたんだし、デモットだけでも作れるだろ?調味料の調達だけだ少し面倒だけどな」


 悪魔は基本料理をしない。調味料は塩オンリーのことが多いらしいし、砂糖やハーブなんかは中々手に入らないだろう。


 デモットも同じことを思ったのか、俺の考えと同じことを言う。


「塩はともかく、砂糖とかハーブの類は大きい街に行かないと無理でしょうね。それこそ、伯爵級........いや、侯爵級悪魔ぐらいはないと。かなり大きいらしいですし、物好きな悪魔が個人でチョロチョロと栽培して使ってそうです」

「悪魔が作るハーブか。なんというか、違法性が凄そうだな」

「言葉だけ聞いたら絶対麻薬ね。そういえば、魔界には麻薬とかあるのかしら?」

「麻薬ですか?あー........一応はありますよ。口の中に含むことで頭の働きを鈍くさせて、痛みを緩和する植物があります。基本は薬草として使われるんですが、正常者が多量摂取する事で幸福感と幻覚が見える薬物に変わりますね」


 あるんだ。悪魔の中にも麻薬として使われる植物が。


 デモットに色々と植物やら何やらを教えてもらったが、まだまだデモットの知識の引き出しは多そうだな。


 さすがはデモペディアだ。“OKデモット”って言ったらなんでも答えてくれそう。


「薬も過ぎれば毒になるって訳か。何事も用途を守って程々にじゃないとダメそうだな」

「当たり前よ。権力だろうが財力だろうが、それこそ暴力にも言える話よ。魔界のように人間がいないならともかく、人の大陸では程々に暴れないとダメなんだから」


 程々に暴れるってなんだよ。


 俺はそう思いながらも、確かになんにでも言える話だなと思う。


 魔界は別として、人の大陸は暴れにくいからな。ダンジョンの中ぐらいしか派手に暴れられない。


「いや、魔界でも程々にして欲しいんですけどね?」

「伯爵級の街は滅ぼしてないし、程々なんじゃないか?」

「普通は街を滅ぼさないんですよ」


 こうして、俺達は楽しい夕食の時間を過ごしながら旅を再開するのであった。


 先ずは師匠の友人を見つけに。どんな人なのか気になるな。あ、いや、悪魔か。





 後書き。

 これにてこの章はおしまいです。いつも沢山のコメントありがとうございます。全部読んでるよ。

 恐竜はロマンカッケー‼︎回(ダンジョン君がいじめられるいつもの)でした。モササウルス出したい。

 さて、次は皆さんお待ちかねのあの人が出てきます。あれだね師匠繋がりの人だね。

 お楽しみに‼︎

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る