ハメ技


 今までに見てきた魔物の中で郡を抜いてバカでかい魔物、アルゼンチノサウルス。


 デモットに名前を聞かなければ正確な魔物の名前は分からないが、取り敢えずはこうと呼ぶ事にしよう。


 全長約40m。体重約80t。


 ブラックドラゴンを凌駕するその巨大は、俺達にとって驚異ではない。


「行くぞ。どうせ魔術一発じゃ死なんだろうけどな!!」

「合わせるわ」


 俺はそう言うと、対単体ではよく使う魔術第九級白魔術“天輪:四重奏リング:カルテット”を行使。


 空に浮び上がる魔法陣が出現したその瞬間、アルゼンチノサウルスも俺達を認識したのかこちらを見る。


 向こうも攻撃態勢に入るが、遅い。


 1km圏内ならば全て吹き飛ばす天使の不響和音に飲まれて死ね。


 空に浮かび上がった魔法陣から、四つの天輪が現れてキィィィィン!!と不愉快な音が溢れ出す。


「消えろ」


 そして、その不響和音は白き光となってアルゼンチノサウルスを包み込んだ。


 それと同時に動き始めるエレノア。


 ブラキオルスですら耐えられる程度の威力だ。どう見ても彼らより強いこの魔物が、今の一撃で死ぬとは思えない。


 天からの裁きが下されて光が消えるが、案の定アルゼンチノサウルスはピンピンしている。


 多少傷が見える当たり、ブラックドラゴンよりは耐久力が低そうだ。


「キィェェェェェェ!!」

「本気で殴ったら、どこまだ吹っ飛ぶのかしらね?」


 俺の一撃を耐えきったアルゼンチノサウルス。


 彼は直ぐさま俺に反撃をしようと何らかの魔術(又は権能)を行使しようとしてきたが、それをエレノアが許すはずもない。


 足元に入り込んだエレノアは、そのトンファーを使って限界まで体を引き絞ると胴体に向かって拳を放った。


 ドゴォン!!と、鈍い音が第五階層に響き渡り、アルゼンチノサウルスの胴体が凹む。


 フワッとアルゼンチノサウルスの体が浮かび上がり、彼は10mほど横に吹っ飛ばされてそのまま地面に倒れた。


 ウッソだろおい。体重が80t以上ある魔物を、殴って吹っ飛ばしたぞ。


 どんな威力をしていたら、そんな一撃を撃てるのだ。


 出会ってきた魔物達をほぼ全てパァン!!してきたエレノア。そのパンチの威力は、計り知れないな。


 あんな本気の一撃、俺が普通に食らったら死にそうなんだけど。


「チッ、あまり吹き飛ばなかったわ。重すぎるわよあの魔物」

「吹っ飛ばしている時点で凄いんだけどね?ほら、起き攻め開始だ」


 本気で殴ったにもかかわらず、あまり吹き飛ばなかった事が悔しいのか舌打ちをするエレノアに呆れながら、俺は倒れたアルゼンチノサウルスに向かって起き攻めを開始する。


 あれだけ大きく、バランスの悪そうな体だ。1度倒れたら、起き上がるのにもかなりの時間がかかるだろう。


 そこを狙って、ボコスカ殴ればそれでよし。


 どうせなら、隕石でも降らせるか。


 流石に第九級土魔術の隕石は俺達まで巻き込むから使えないが、第七級土魔術の方は問題なく使える。


 ブラキオルスもそうだが、このダンジョンの魔物はどちらかと言えば質量による物理的魔術の方が効きやすい印象だ。


「星よ、落ちろ」


 俺は倒れ込んだアルゼンチノサウルスに向かって、第七級土魔術“隕石墜落フォールンメテオ”を行使。


 空から降り注ぐ隕石が、過去の地球の歴史を辿るかのように空に現れ落ちてくる。


 エレノアはそれを見て退避。


 衝撃波に巻き込まれないように俺の居る場所まで戻ってくると、少し遅れて同じ魔術を行使した。


「岩の雨を降らせましょう。きっと気に入ってくれるわよ」

「死んだ後も夢に出てきそうだな。それ」


 絶対気に入らないだろそれ。


 そんなちょっとした冗談を交えつつも、空から降っきた星は恐竜を殺さんと落ちる。


 ドゴォォォォォォン!!と爆音を奏で、空から落ちてきた星はアルゼンチノサウルスを的確に撃ち抜いた。


 が、これでもまだ生きてやがる。


 隕石の中でも生き残れるとは、凄まじく頑丈な体だな。なら、その体がどこまで耐えられるか耐久テストをしてあげよう。


 俺は隕石が墜落したと同時に、もう一度同じ魔術を行使。


 その間にエレノアの行使した隕石がアルゼンチノサウルスを襲い、何とかして立ち上がろうとしていた彼は再び地面に叩きつけられる。


 あー、はめ技完成しちゃった。


 1度倒したら、あとは起き上がりに合わせて隕石を降らせるだけの簡単なお仕事。


 見た感じ、何らかの能力を使う時はそれなりの溜めが必要そうだから、隕石に対しての回答が無いんだろうな。


「ブラックドラゴンよりは弱いと思っていたけれど、ここまで弱いとは思わなかったわ」

「ブラックドラゴンと出会った時に比べて俺たちがかなり強くなっているのと、俺達よりも大きい魔物に対しての戦い方をしっかりと理解しているのが大きいな。デカイ魔物は倒れたら起き上がるのに時間が掛かることが多いから、あとはそれに合わせてぺちぺち殴るだけで問題ないんだし」

「これなら1人でも余裕で倒せそうね」

「そうだな。復活したら今度は1人で戦ってみるか。このハメ技も1人でできるだろうしな」


 ドォォォォォン!!ドォォォォォン!!と、俺とエレノアがのんびり会話している中で鳴り響く爆音。


 リエリーが魔術実験を失敗した時のような爆発音が常に一定リズムで鳴り響き、アルゼンチノサウルスに何もさせないままボコスカに殴っていく。


 まだ死なないのか。無駄に耐久力だけは高いな。


 昔の格ゲーをやっているみたいな感覚だぜ。昔の格ゲーはゲームバランスが崩壊していて、特定のキャラがハメ技を使えちゃうんだよな。


 某ストリートなファイトをするゲームに出てくる、ベ〇とか。


 2の時マジでぶっ壊れてたからな。対策を知らないとずっとボコられ続けるのだ。


 で、このアルゼンチノサウルスは無限に降り注ぐ隕石に対して対策ができていない。


 転ばされたらジ・エンド。何とかして起き上がろうにも隕石が先に降り注いでくるし、迎撃ようにも溜めが長くて攻撃が間に合わない。


 そんな可哀想な状態になってしまっているのだ。


 恨むなら、自分をこんな風に創造した神様でも恨んでくれ。デカイだけが強いわけじゃないからな。


「耐久力だけは凄まじいわね。もう10発近く撃ち込んでるわよ」

「俺と合わせたら20発だ。真正面からまともに戦ってたら、ちょっとは苦戦したかもしれんな。でも、転んだ後が弱すぎる。いいカモだ」

「そうね........あ、終わったわよ」


 24発の隕石を食らって、ようやく力尽きたアルゼンチノサウルス。


 耐久力だけは1級品だったが、転んだ後の対処がダメダメで一方的にボコられたな。次からは、転ばされた後の対策か、そもそも転ばない対策をしてきて下さい。


 俺としては楽に倒せるからそのままでいいぞ。


「ん、レベルが上がったわ。ジークは?」

「俺も上がった。これでレベル308だ」

「私は302ね。次の目標は400だけど、レベルも上がりにくくなり始めているからかなり遠くに感じるわ」

「魔界を周り終えるまでに400には到達したいな。このダンジョンは貴重な絶望級魔物が狩り放題のダンジョンだし、しばらくの間は時間を見つけて通いつめるか。転移で移動はできるしな」

「デモットにとってもいい狩場になってくれるから、暫くはお世話になるでしょうね。竜のダンジョンと一緒で」


 竜のダンジョンも未だにお世話になってるからな。絶望級魔物相手はちょっと厳しい悪魔くん達の放置狩り場だし、自分達がどれだけ強くなったのかを測る為にブラックドラゴンを狩ることも多いし。


 それにこの草食恐竜のダンジョンが追加されたのだ。


 やったね!!狩場が増えたよ!!


「デモットがレベル50になるまではここにいるか。その後は1日2~3時間ぐらい通う方針で」

「旅を続けるならそのぐらいがいいわね。さて、素材を見に行きましょう。お肉がきっとあるはずよ」


 こうして、草食恐竜ダンジョンの攻略が完了し、あとはありったけの経験値をかき集めるだけとなるのであった。




 後書き。

 ジーク達にとって、隕石は小パン程度。アホみたいに連発できるよやったね‼︎

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る