草食恐竜ダンジョン第一階層


 ダンジョンを見つけたからには、入らねば無作法と言うもの。


 例えそれが経験値効率が悪かろうと、やはりちょっと気になってしまうのが俺という人間だ。


 魔界という全く違う大陸のダンジョンとなれば尚更。


 生態系が全く違うこの魔界では、どのような魔物が出てくるのか。


 恐竜のような魔物が出てくる?それとも、毎度おなじみゴブリンのような普段の顔ぶれが出てくる?


 どちらにしろ、ちょっと楽しみである。


「おー、これがダンジョンですか。話には聞いてましたけど、初めて見ましたね」

「50年間一人で生きてきて、1度も見てないのか?」

「見てませんね。ダンジョンはかなり希少なものだと聞いてますし」

「まぁ実際かなり希少よね。私達も管理されていないダンジョンは滅多に見つけないし」

「5年間旅をして見つけたのは一箇所だけだったもんな。あとは、情報を頼りに見つけたり既に見つかったりしている場所だけ。そう考えると、普通に暮らしてたら見つけられないか」


 中にはダンジョンがない国だってあったぐらいだし、生成率はあまり良くないのだろう。


 未だに謎が多いダンジョン。その法則を理解出来れば、探すこともできるんだろうけどな。


 少なくとも、ダンジョンは生き物じゃない。この世界のシステム的な要素。


 ならば、何らかの法則があってもおかしくないが、人がその真理を理解する日が来るのだろうか。


 俺はそんなことを思いながら、早速エレノア達と共にダンジョンに足を踏み入れる。


 魔力で出来たゲートを潜った先は、見覚えがある光景ながらも初めて見る世界であった。


 少し細い葉っぱをつけた木が生い茂り、見たこともない植物が多くある。しかし、その景色にはどこか見覚えがある。


「ジュラ紀だ........今度こそ恐竜の住む世界に来ちまった........」


 そう。小さい頃(前世)に絵本で見た、恐竜達が生きていた時代“ジュラ紀”。


 そんな想像でしか語られなかった世界が、そこにはあったのである。


 さすがにこれには感動を覚えるな。男のロマンがそこにはある。


「森だけど、少し景色が違うわね。見たこともない植物が生い茂っているわ。デモット、何が何だか分かるかしら?」

「俺も初めて見ます。凄いですね。全くの別世界ですよ」


 ジュラ紀を知らないエレノアとデモットだが、この二人も魔界とは全く違う別世界に少し感動している。


 エレノアは興味深そうにキョロキョロと周囲を眺め、デモットは少年のように目を輝かせていた。


 エレノアはダンジョンに何度も潜っているから急に世界が変わる事を理解しているが、デモットは話に聞いただけで実際に経験したことは無い。


 話に聞くのと、実際に見るのだと感じるものが違う。デモットは、とても楽しそうであった。


「本当にダンジョンに入ると世界が変わるんですね。正直、眉唾物だと思ってましたよ」

「俺も最初はそう思っていたな。だが、世界とは摩訶不思議なんだ。ダンジョンにもよるけど、階層が変わると景色もガラリと変わるぞ。つい先程まで灼熱の大地だったのに、極寒の地に変わったりもする。寒暖差が激しすぎて風邪をひきそうになるぜ」

「魔術でその全てを無効化できるくせによく言うわ。さ、進んでみましょうどんな魔物がいるのか楽しみだわ」


 これが人類大陸ならば、サッサと黒鳥ちゃんを出して移動するところであるが、ここは魔界のダンジョン。


 見たことも無い景色ともなれば、どんな魔物が出てくるのかも気になる。


 なんやかんや、エレノアもワクワクが抑えられないのか早く魔物を見て見たそうであった。


 俺も見てみたいし、早く行こう。ダンジョンの出入口には魔物が集まらないルールがあるっぽいから、まずはココからは慣れないとな。


 そう思いながら、ダンジョンの奥へと進み始めた俺達。


 俺はデモットにダンジョンの簡単なルールを教える。


「へぇ。ダンジョンって不思議ですね」

「ここは魔界だから、少し違うかもしれないけどな。基本的にはこんなルールだ。魔物を倒せば素材を残して消えるし、階層やダンジョンの出入口は基本的に安全。これさえ覚えておけば、なんとでもなる。後は次の階層は入口から直線に進んだところにあるってことぐらいな」

「ダンジョンに関してはジークさん達の方が圧倒的に詳しいですね。案内人としての仕事が出来なさそうで、心配です」

「気にすんな。今はもうあんまり案内にんとしての役割を求めちゃいない」

「そうね。悪魔の常識を教えてくれただけで十分よ。王という、私達よりも明らかに強い存在が居ると分かってるだけでだいぶ違うわ」

「そう言ってくれると気が楽ですよ。魔物に関しては教えられることもあると思うので」


 そんなことを話しながら歩いていると、早速見慣れない魔物が姿を現す。


 かなり小さい魔物だ。


 全長2mちょい。頭に若干のトゲトゲと、平たい頭部。


 恐竜によく見られる特徴である短い手と二本足。そして、茶色い肌。


 えーとなんだっけ。結構有名な恐竜にそっくりなんだけど........


「お、ドレコレウスですね。草食の魔物ですが、性格はあまり温厚ではなくどちらかと言えば攻撃的です。ですが、そこまで強くないので見つけたら晩飯になります」


 あー!!ドラコレックス!!


 某恐竜映画や世界的有名な魔法使いの映画に出てきた、名前が肉食恐竜っぽい奴だ!!


 レックスという名前がついているのにも関わらず、草食恐竜であり恐竜種の中ではかなり小型とされているドラコレックス。


 そんな恐竜に瓜二つの魔物が、俺たちの前に現れたのである。


 やっぱりこのダンジョンは分かってんねぇ!!ちゃんと期待通り恐竜を出してくれるとは、なんと空気の読めるダンジョンなのだろうか。


 正直、ここでゴブリンとか出てきてたらこのダンジョンを速攻でクリアしてぶっ壊してたね。


 男のロマンを分かっているということで、壊すのはやめてやろう。その代わり、経験値は置いていけ。


「この大陸の魔物は不思議な形をしたものが多いわね。生態系の違いがこんなにも出てるのかしら?」

「陸の魔物と海の魔物じゃまるで形が違うだろ?それと同じなんだよきっと。彼らがこの魔界で生き残るには、こんな進化をするしか無かったんだ」

「魔物の進化も面白いわね。世界中の魔物を見たあと、それを纏めてみるのも面白そうだわ」


 本にしたら売れそうだな。


 そんなことを思いつつ、俺は静かに指を鳴らし魔術を行使する。


 この強さなら、第五級魔術位で十分かな。


 相手は恐竜にそっくりとは言えど、所詮は魔物。そして、ダンジョンにいる魔物となれば敵でしかない。


 一切の躊躇無く殺すのが、常識であり礼儀だ。


 ハローダンジョンくん。俺達がやってきたぞー。


 一瞬にして闇に囚われ、死に絶えるドラコレウス。


 もう少し弱い魔術でも良かったな。


「だいたい上級魔物ぐらいかしらね?それも下の方の。第一階層にしてはまずまずなんじゃないかしら?」

「だな。このダンジョンの階層次第だが、かなり期待できるダンジョンだ。もしかしたら、絶望級魔物レベルの強さを持った魔物が現れてくれるかもしれん」

「おぉ、本当に素材だけ残して消えた........ダンジョンってすげー」


 第1階層から出てくる魔物の強さでは無いので、それなりの経験値が期待できそうな事に喜ぶ俺とエレノア。


 そして、デモットは思いっきり素が出ていた。


 初めて見るとそんな反応になるよね。俺達はもう慣れたから何も思わないが、ダンジョン初心者のデモットにとって、この光景は新鮮である。


「ふふっ、昔の自分を見ているみたいね」

「だな。デモット、次はお前がやって見るか?」

「いいんですか?お二人の狩りの邪魔になりますよ?」

「この程度の魔物じゃ経験値効率は悪いし別にいいよ。それに、ダンジョンは無限湧きだからな。別に殺した所で失うものもない」

「本当ですか?なら、魔術を試してみたいです!!」


 やる気に満ち溢れるデモット。


 やっぱりこいつ可愛いな。根は純粋な良い奴である。


 俺とエレノアは顔を見合わせると、静かに笑い合いデモットの獲物を探しに向かうのであった。

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