やっぱ闇狼って神


 魔力に変化をもたらす権能を持つ悪魔は、その属性の魔術しか使えないと言う地味ながらも何気に重要な情報を得た俺はその後もデモットに色々と魔術を教えていた。


 これは実験的な部分もあり、デモット程の実力を持つ悪魔が第何級魔術まで行使出来るのかを確認するのだ。


 これでもし魔術を扱う悪魔が出てきたとしても、大まかな予想が立てられるだろう。


「おぉ!!これが闇狼ですか?」

「そうだ。第三級魔術も問題なく使えそうだな。ちなみに、その子は命令をしないと動いてくれない。ちゃんと意志を持たせたいなら、最低でも第五級魔術まで使えないとダメだぞ」

「なるほど。ここから意志を持たせる魔法陣を足していくわけですね。魔術って凄いなぁ........」

「師匠曰く、魔術に不可能は無いらしい。その気になれば、世界そのものを創成することすら可能だろうよ。現在確認されている最大階級の魔術が第十五級魔術。もし、その領域に立つことが出来れば、本当に生命や星々を作ることが出来るかもしれないな」


 悪魔の中でも変わり者と自負しているデモットは、魔術の魅力にどっぷりハマってしまった。


 足し算引き算だけの簡単な話ではなく、複雑な理論をいくつも重ね合わせて無限の可能性を生み出す魔術は悪魔をも魅力するらしい。


 精霊も魔術にハマってたし、魔術を作ったとされる大賢者マーリンは本当に偉大な人物なんだな。


 いつの日か、彼の遺産が残されていると言われている魔導国にも行ってみたいものだ。


「元々権能で魔力の動かし方を理解しているのか、魔術の習得速度が早いわね。後、単純に頭がいいわ。理解が早い」

「まだまだ簡単な部類だからって事もあるだろうが、少なくとも俺が魔術を覚えた時よりも覚えが早いな。やっぱり優秀な師が付くと覚えが早いのかね?俺、魔術はほぼ独学だし」

「あのねジーク。普通は最初から師が付いて教わるものなの。全部一人で魔術を覚えた貴方が可笑しいのよ?」

「分かってる。師匠にも耳にタコができるほど言われたよ」


 でも、ちゃんと理解するだけの頭があれば独学でも行けると思うんだけどな。流石に、教科書は必要だけれども。


 そういえば、師匠があんなことを言うということは、師匠に魔術を教えた存在が居るってことだよな?


 あんな化け物じみた頭のぶっ飛んだ師匠を教えた人は、一体どんな人だったのだろうか。


 既に亡くなってしまっているとは思うが、話ぐらいは聞いてみたいものである。


 もし話せるのであれば文句を言ってやりたいね。魔術よりも先に、人としての道徳をなぜ教えなかったのかって。


 待ち一つを滅ぼしてエルダーリッチに堕ちるとか、どんな教育をしているんだと。


 まぁ、そんな機会は訪れないだろうが。


「よし、それじゃ次行くぞー」

「はい!!よろしくお願いします!!」


 すっかり弟子のような存在になってしまったデモット。その顔は、退屈な日々から解放され、新たな光を見た少年のように輝いている。


 あんなチンピラのような悪魔が、今や眩しすぎて直視できない青年になってしまった。


 あれ?キャラ変わってね?


「悪魔ってたった1週間足らずでここまで変われるものなのね。市民の悪魔でも捕まえて、性格を変えられるか実験でもしてみようかしら?」

「デモットが変わってるだけだと思うぞ。話を聞く限り、悪魔の中じゃ相当変わってるしな」


 そんな事を話しながら、デモットに第四級黒魔術を教える。


 デモットはこれも難なくクリア。悪魔のポテンシャルはかなり高いな。人間ならば、第四級魔術を行使できるのはミスリル級冒険者レベルの強者に限られる。


 俺たち基準で言えば弱いが、人類基準で言えば上位15%には入れるレベルで強いだろう。


 人類と言う枠組みの中ならばある程度は無双できる。


 歴代で言えば間違いなく下の方になるが。


 そういえば、この人類史の中で俺達は何番目ぐらいに強いんだろうな?


 話に聞く限り大賢者マーリンそして師匠(生前)よりは弱いだろう。それと、竜を殺した英雄ジークフリードも多分俺たちより強い。


 まだまだ先は長いな。御伽噺の世界の住人にも勝てると自信を持って言えるようにならなくては。


「よし。それじゃ次は第五級魔術をやってみよう。これが出来れば、友達が作れるぞ」

「マジですか!!頑張ります!!」

「友達を魔術で作ろうとしている時点で、なにか間違っている気がするのは私だけかしら........まぁ、本人がそれでいいなら何も言わないけれども」

「エレノア、お口チャック」

「×(キュッ)」


 それを言ったらおしまいだろうが。後、悪魔くんやメイドちゃんを友人だと思っている俺にもナイフが突き刺さるからやめて。


 なんなら自分も突き刺してるからなエレノア。エレノアも悪魔くんやメイドちゃんを友人と思って接しているのは、見ていて分かってるんだぞ。


 確かに友達を物理的に作るのは、本当に“友人を作る”と言っていいのか疑問だが。


「んじゃ、これが闇狼(意思ありバージョン)の魔法陣だ。上手くいくことを願ってるよ」

「頑張ります!!」


 先程よりも真剣な表情で魔法陣を形成するデモット。第四級魔術まで余裕でクリア出来たから多分行けると思うんだけど、どうなんだろうな?


 そんなことを思いながら、デモットが魔法陣を書き上げるのを待つ。


 2分後、何とか魔方陣を書きあげたデモットは、神妙な面持ちで魔術を行使した。


 あ、今更だけど詠唱があれば多少楽になることを忘れてた。俺もエレノアも詠唱とかほぼ使わないから、完全に忘れてたぜ。


 地面に映し出される魔方陣。そこから漆黒のモフモフな狼がゆっくりと現れる。


 お、成功した。この調子なら第六級魔術までは行けそうだな。第七級魔術からは一気に難易度が上がるから難しいけど。


「........(主人を見つけて頭を擦り付ける)」

「で、出来たんですか?」

「おめでとうデモット。そいつがお前の友人さ。自分で学習し、自分の判断で動く不死の狩人だ」

「自分が死なない限りは召喚し続けられるわよ。しかも、記憶も引き継ぐ優れもの。ジークが生み出した魔術の中で三本の指に入る革命的魔術ね」

「やったー!!」


 初めてできた友人が嬉しいのか。それとも話し相手ができたことが嬉しいのか。


 デモットは自分の足元で頭を擦り付けて甘えてきた闇狼を抱き上げて愛おしそうに、全身を撫で回していく。


「モフモフだぁ........魔術って凄いですね!!」

「可愛いだろ?今も俺達の癒しとして頑張ってくれてるからな。もふもふだし、よく枕代わりに使わせてもらってる」

「食事代も掛からなければ、賢くて主人に忠実。そして何より、同じ時を歩んでくれるのが大きいわよね。寿命の違いを気にしなくていいと言うのは、とても魅力的だわ」


 飼ってたペットが死んだら悲しいもんな。


 この闇狼にはそんな心配もない。魔力が続く限り、俺たちと共に生き共に死ぬ相棒でもあるのだ。


「........(顔を舐める)」

「あはは!!本当に甘えてくる!!よし────」


 デモット、これまで見たことがないほどにテンションが高いな。


 恐らくこれが素の姿なのだろう。


 俺たちを襲ってきた時は舐められないように、俺たちに従っていた時は礼儀正しく。


 場面に合わせて仮面を使い分けられる世渡りが上手いタイプだ。そして今は、その仮面を外して素顔を見せている。


「───お手!!」

「........(お手!!)」

「お代わり!!」

「........(お代わり!!)」

「お座り!!」

「........(お座り!!)」

「おー!!偉いぞー!!」


 闇狼を下ろして、芸をやらせてみるデモット。


 悪魔達の中にもお手とかお座りの芸って知られているんだと思いつつ、俺は何気に雰囲気だけでやって欲しいことを察して行動した闇狼の知能の高さに感心する。


 自分で開発した魔術なのだが、やっぱり優秀すぎるわ。


 なんか俺も闇狼と遊びたくなってきたな。


 こうして、俺とエレノアも闇狼を召喚して三人で狼を可愛がると言う光景が繰り広げられた。


 もちろん、ダンジョンの中なので、そこら辺の魔物を狼に狩らせたりしながら。




 後書き。

 闇狼こそ正義。私も普通に欲しいんだが?

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