友達作り(魔術)
意外と寂しがり屋のデモットに、友人を作ってやろうということが決まった翌日。
来賓の家で一夜をすごしたデモットはやる気満々であった。
いいね。そんなにやる気に満ち溢れていると、教える側も少し気合いが入る。
アーランを見ている気分だ。アイツも俺達からものを教わる時は、とにかく目を輝かせながら真面目に頑張っていたな。
何気に2人目の弟子になりそうな予感を感じつつ、俺達は朝食を食べたあと庭にあるダンジョンへとはいる。
弱い魔物しか出てこないこのダンジョンは、魔術の実権にはもってこいだ。地図作成の魔術を作らないといけないし、丁度いい。
デモットはワンチャン友達が作れる可能性があるし、俺たちは悪魔が魔術を使えるのかどうか確認できる。
これ程にウィンウィンの関係もないだろう。
「デモットの権能は闇の権能だったよな?なら、最初は基礎的な黒魔術を使ってみよう」
「黒魔術ですか。昨日、軽く教えて貰った感じ黒魔術は闇や死を操る属性でしたよね?」
「そうだ。どうせやるなら、最初は似ているものから入った方が分かりやすいだろ」
俺はそう言いながら、偶々近くを通り掛かったスライムに向かって第二級黒魔術“
パァン!!と闇弾の一撃に耐えきれなかったスライムは爆散し、その姿を素材へと変えた。
「これが黒魔術の中でも基礎的な魔術“闇弾”だ。デモットは魔力操作がしっかりとできるから、魔法陣を覚えられれば多分撃てると思うぞ」
「わかりました。もう一度その魔法陣を見せてもらっていいですかね?」
「ほい」
俺は魔術を行使しないように魔法陣を魔力で作り出すと、デモットにそれを見せる。
デモットはものすごく真剣な表情で魔法陣を見ると、ゆっくり魔力を動かして同じ形を作り始めた。
なんと言うか、初めて魔術に触れた時の自分を思い出すな。俺も、こんな感じで本と睨めっこしながら魔法陣を必死に覚えた記憶がある。
当時はまだ魔力操作に不安があったので、魔力操作をしながら魔法陣を覚えるとかいう事をやっていたはずだ。
「懐かしいわね。お母様から魔術を教わった時を思い出すわ」
「エレノアも似たような覚え方をしていたのか?」
「そうね。今思えば、魔力操作も満足にできない子供にやらせるような事ではなかった気がするわ。事実、失敗して怪我をしたしね」
「エレノアの母さんは教えるのが下手だったんだな........」
「天才肌だったのよ。教え方も雑で、魔力をぐっとやってポン!!ってやれば行けると言われた時は理解できなかったわ。しかも、自分が出来ることは他人も出来ると思う人でね。私がなぜ出来ないのかも分かってなかったのよ」
「........エレノアのお母さんは教えることにとことん向いてないな」
「えぇ、私もそう思うわ。師匠から魔術を教わった時に嫌という程痛感したわね」
今は亡きエレノアのご両親。エレノアを守り、俺に出会わせてくれた偉大なる母君は、マジの天才肌だったんだな。
「それを見かねたシャーリーが、代わりに魔術を教えてくれたわ。結局、私が元気過ぎて途中で教えるのを諦めていたけどね」
「小さい頃のエレノアは問題児だな」
「ふふっ、ジークほどでは無いわよ?流石に庭の芝生を枯らしたり、木々をへし折って騒ぎを起こすようなことはしなかったわ」
それを言われると何も言い返せない。多分、エレノアよりも俺な方が問題児だったのは間違いないからな。
おかしいな?俺はただ魔術の実験をしていただけだと言うのに。
そんなお互いの昔話に花を咲かせていると、デモットが魔法陣を作り出した。
うん。問題なさそうだし、そのまま発動しちゃえ。
「撃っていいぞ。狙いは適当で」
「はい。えい!!」
可愛い掛け声と共に、第二級黒魔術の“
魔力操作の質も高いし、悪くない威力。そして何より、ちゃんと魔術を発動できている。
これで悪魔が魔術を使える事が証明された。今後は、この可能性も頭の中に入れながら、悪魔と戦う必要があるな。
「で、出来てましたかね?」
「ちゃんと発動できていたぞ。凄いじゃないかデモット。お前は今、権能だけに頼る悪魔たちよりも1つ上のステージに立てたのさ」
「権能があるとは言えど、1回で成功させるとは凄いじゃない」
魔術を使う難しさを知っている俺達は、純粋にデモットを褒める。
上位精霊であるアートはそもそも生きている次元が違うから別として、同じ世界に住む者としてはかなり習熟が早いのでは無いだろうか。
よし。ついでだし色々と実験してみるか。
デモット君。今から君はちょっとした実験台だ。
大丈夫。別に解剖とかはしないから、安心してくれよ。
「よし。それじゃ次は他の属性魔術も試してみよう。デモット、やってみたい属性はあるか?」
「あ、それじゃ火属性をやってみたいです。もし使えれば、今後火をつけるのが楽になりますし」
「........あぁ。そう言えば、かなり原始的な火の付け方をしてたな。あれでよく生活出来ていたと思うほどには」
「全力で木を擦って火を起こしていたものね。なんだっけ?摩擦熱?と言うのを使って火を起こすなんて初めて知ったわ」
悪魔は魔術が使えない。生活に必要な水は取ってこれるが、火は基本的に自分達で起こすしか無かった。
炎の権能を持つ悪魔がいれば簡単に火も起こせるが、街から逃げ出した悪魔はその恩恵に預かれない。
ではどうやって火を起こすのか。
答えは簡単で、力技で火を起こすのである。
木の板と木の棒を擦り、摩擦熱で火を起こす。悪魔の中では割と一般的な火起こしの方法らしく、自分だけで火を起こす場合はこれがよく使われる。
文明の利器に頼った人類とは大違いだ。魔術で火を起こせない場合、人は魔道具を使うかファイヤースターターに似た道具を使うと言うのに。
「確かに魔術で火を起こせたら楽になるわな」
俺はそう言いながら、指先に火をつける。
第一級炎魔術“
俺がこの世界で初めて見た魔術であり、今も尚お世話になっている超重要魔術だ。
火を起こすときに必ず使うから、水を生成する魔術と同じく使わない日が無い。
いつもお世話になってます。これからもよろしくね。
「先程よりも魔法陣が簡単ですね」
「情報量が少ないからな。魔法陣ってのは情報の塊だ。これが火を起こす魔法陣、これが火力を調節する魔法陣って形ごとに決まった情報が宿ってるんだよ。で、それらを組み合わせることで魔術となる。昔の人達は凄いものを考えたな」
「悪魔とは大違いですね........お、出来ました」
最初に第二級魔術を作って少し慣れたのか、あっという間に魔法陣を作りあげたデモット。
しかし、いくら発動させようとしても全く発動する気配がない。
あぁ、これは才能が無いな?
「あ、あれ?火が出てこないです」
「才能がないな。残念だが、魔術を使うにはひと握りの才能が必要とされている。魔法陣を書くだけじゃダメたんだよ。潔く諦めるしかないな」
「そんなぁ........」
「まぁ、黒魔術が使えるだけマシよ。その中には無属性魔術すらも使えない人も居るのだからね。ところで、私少し思ったのだけれど、デモットは黒魔術しか使えないんじゃないかしら?」
「その心は?」
「闇の権能で魔力そのものが闇になっているから、その他の属性は受け付けてないんじゃないかって事よ」
「あーなるほど。俺達は無色の魔力に色を付けるが、デモットの場合は既に色が付いているのか。有り得そうな話だな」
その仮説が正しければ、デモットは黒魔術しか使えない。
試してみるか。
「デモット、今から全属性の魔術を試してみるぞ」
「わ、分かりました」
結果、エレノアの仮説は正しく、デモットは黒魔術しか使えなかった。
まぁ、友達を作るなら黒魔術が1番都合がいいし、良いんじゃないかな。生活の利便性には欠けるけど。
後書き
友達(魔術)
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