未知なる大陸“魔界”

悪魔達が住む大陸


 人類の住む大陸からやってきた悪魔を倒し、“実は経験値が美味しいんじゃね?”と言うことで俺とエレノアは次元の裂け目を通って悪魔たちが住む大陸、通称“魔界”へとやってきた。


 この魔界は完全に人々が住む大陸とは別の大陸であるらしく、場所こそ分かっていないものの海を渡った場所にあると言うことだけは知られている。


 俺達も魔界に行くのであれば海の上を黒鳥ちゃんに飛ばせて、大陸を見つけてもらおうと思っていたのだが、こんなにも楽な方法で来られるとは悪魔の襲来万々歳だな。


「まだ明るいわね。別大陸だから、人々の住む大陸とは時間が違うのかしら?」

「時差って奴だな。人の住む大陸はあまり時差を感じなかったが、どうやらあまりにも場所が離れすぎているらしい。と言うか、今の今まで時差を感じなかった方が可笑しいんだよ。あんなに転移を乱用していたのにな」


 次元の裂け目を渡ってやってきた魔界は、まだ太陽が昇っていた。


 とは言っても、既に夕方近くで日が沈み始めている。


 今思えば、あのバカ広い大陸で時差をほぼ感じなかったのはおかしいな。異世界だから、そこら辺の法則も違ったりするのだろうか?


 異世界の摩訶不思議については考えるだけ無駄なのだが、ちょっと気になってしまうな。まぁ、それで言えば魔力や魔術が存在している時点でおかしいが。


「てっきり、どこか建物の中に出るかと思ってた。子爵って貴族だよな?街の中にいるか、家の中にいるかと思ったがそうでも無いらしい」

「見た感じ、普通の草原ね。見たことが無い草木が多く生えているわ。食後の散歩でもしていたのかしら?」

「もしくは、この次元の裂け目につられてやってきたのかだな。どちらにせよ、この大陸のことを何も分からない俺たちにとっては有難い。魔界に乗り込んで、速攻戦いが起きるよりは、こうしてゆっくりと情報収集が出来るんだからな」

「それもそうね。ポインターは設置したのかしら?」

「もちろん。転移魔術を阻害される感じもないし、これで問題なく人の大陸と魔界を行き来できる」


 子爵級悪魔とか言っていたので、次元の裂け目をくぐった先は悪魔の街でもあるのかも思ったがそんなこと無かった。


 見たことが無い草木がある平原に俺たちは飛ばされたらしく、周囲を警戒していても特に悪魔の気配がやって来るということも無い。


 悪魔は街を作らないのか?何を持ってして子爵級とか、そう言う階級付けをしているんだろうな?


 この何も知らない感じ、かつてこの世界に生まれ落ちたその日の時と全く同じだ。


 右も左も分からず、取り敢えずは情報収集を試みていた時と重なるよ。


「さて、どうするか。一旦帰るか?これで魔界には自由に来られるようになったし、冒険者ギルドに報告する必要もあるだろ。流石に悪魔がやってきたともなれば、報告した方がいい」

「そうね。報告はした方がいいとは思うわ。でも、せっかく魔界に来たのだから少し観光してみましょう。ポインターも一つだけではなく複数用意しておいた方がいいわ。もしかしたら、壊される可能性もかるからね」

「確かにそうだな。ポインターをもう少し増やしておくか」


 エレノアもいいことを言う。


 転移の座標固定に使われるポインターは、それなりの実力者ならば壊せてしまうと言う明確な欠点が存在している。


 とは言えど、オリハルコン級冒険者レベルの強さがなければ無理だろうが、この大陸にはオリハルコン級冒険者レベルの存在が多くいるだろう。


 子爵級悪魔がこの大陸ではどれほどの強さとして位置しているのかは知らないが、少なくともオリハルコン級冒険者よりも数は多いはず。


 アイツ、弱い絶望級魔物レベルに強かったからな。海神のダンジョンに行く前辺りで出てきていたら、苦戦させられたのはもちろん、下手をすれば負けていた可能性だって有り得る。


 悪魔が現れたタイミングが今で本当に良かった。もし、竜のダンジョンに行く前に現れれば、あのギャップ萌えなギルドマスターや滅茶苦茶正直な受付嬢にも会えることはなく、自分達の家を持つことすらも無かっただろう。


「なんと言うか........普通ね。物語に出てくる魔界と言えば、枯れ果てた大地に血の川が流れ、生き物の骨で組み立てられた家が並ぶような場所だと言うのに」

「悪魔達の住む街に行けば、そんな光景が見られるかもしれんな。でも、多分それは無いと思うぞ」

「その心は?」

「神聖なる存在として書かれていた精霊が、実は一人ぼっちが寂しいだけの青年だったとか」

「あー、アートね。確かに私の想像していた精霊とは大きく違ったわ。物語は、所詮人が想像して書いた幻影なのね」

「そういう事だ。夢を壊すようで悪いが、あまり期待はしない方がいいぞ。期待しすぎると、その分がっかり度も大きくなる」


 俺も昔お袋に読んでもらったなぁ。悪魔の住む大陸で、王を打ち倒して英雄になる絵本。


 滅茶苦茶血が出てくるし、悪魔の街はとにかく残酷。


 血の川で身体を洗い、血をすすって喉を湿し、生き物の骨と皮で家を建てる。


 どう見ても子供に読み聞かせる本じゃないだろ。と言いたくなるような程に残酷でグロテスクな内容であったのを覚えている。


 しかも、2歳の頃に読み聞かせさせられたからな?その時、“あぁ、前の世界とは倫理観も常識も何もかもが違うんだな”とはっきりと理解したものだ。


 こんなの子供に読ませるべきではないだろ。最低でもr15指定しておけ馬鹿野郎。


「なら、あまり期待してないでおくとするわ。正直、血の川とか見てみたかったのだけれどね」

「そうか?見ていてあまり気分がいいものでは無いだろ。俺は普通の方が有難いね」

「ふふっ、だって“あ、本で見たのと同じだ!!”ってなるじゃない。まぁ、それ以外は別に何も思わないでしょうけどね」


 エレノアって、意外とこういう時はロマンチストだよな。


 昔本で見た絵が、現実世界と同じものなのかを比べるのが結構好きだったりする。


 ちょっと子供らしい所があるよね。可愛いし、俺も人のことは言えないから何も言わないが。


「でも、悪魔の街を見つけたら多分滅ぼすぞ。悪魔は人間じゃないから、魔物と同じ扱いだ。運命の巡り合わせで仲良くなれた奴は例外だけどな」

「街を見たら満足よ。後は好きに暴れていいわ。と言うか、この大陸に人間とかいるのかしら?本当に何も分からないから、先ずは悪魔を1人2人捕まえて話を聞き出さないといけないわ」

「確かに。情報収集は旅の基本だよな。先ずはフレンドリーに話しかけて、もし敵対してくるような事があったら捕まえて話を聞き出すか」

「その方がいいと思うわ」


 先ずは孤立した悪魔探しから。


 出来れば“人間死ね!!”と言って殴りかかってきて欲しいものだ。そしたら、心置き無く経験値に変えてやることが出来るんだし。


 下手に話せる存在だと始末する時にちょっと気まづいんだよね。ほら、ポセド君とか最初の方は気まづかった。


 途中からそもそも話させてなかったけども。


「この大陸は未知がいっぱいで楽しみだな。ダンジョンとかもあるのかね?魔境のような魔物が溢れる場所とかもあったら、楽しくなりそうだな」

「この大陸に存在する魔物はどんな姿をしているのかしら?私たちが全く知らない姿なのかしらね?確かに楽しみだわ。とっても。でも、それらを見る前に1度帰らないとね。シャルルさん達にも報告だけはした方がいいわよ。特に師匠には」

「急に遊びに来て“家にいなかったぞ!!”って理不尽に怒られる可能性はありそうだな........もう少しポインターを設置したら、一旦帰るか」


 俺はそう言うと、エレノアと共に次元の裂け目の近くにポインターをばらまいておくのだった。




 後書き。

 魔界編スタート。多分人類大陸編よりは短く終わるはず。

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