お節介のマリー
ジークとエレノアが冒険者ギルド本部へとやって来た翌日。“武神”マリーは、朝から爆発音を聞いて目を覚ました。
ギルド全体を揺らす程の爆音は、目覚まし時計と言うには余りにも大きすぎる音であり、無理やり起こされたマリーば若干不機嫌になりつつもこの爆発の原因が誰のものなのかを理解して溜息を付く。
2週間ほど前、この街へとやってきた“炎の魔女”リエリー。
彼女は純粋でいい子ではあるのだが、一度魔術が絡むとオリハルコン級冒険者としての片鱗を見せる。
周囲への被害などお構い無しに実験し、周りを巻き込むその姿はあの可愛らしい見た目からは想像ができない程迷惑なものであった。
「毎回この爆音で起こされる身にもなって欲しいわねん........」
オリハルコン級冒険者は、自分も含めて人として欠落している部分があるのは理解している。
マリーと仲のあまり良くない剣聖は酒に溺れているし、ココ最近オリハルコン級冒険者となったジークはレベリングの為ならば世界を壊す。
その中でも一際異質な存在。それが、エレノアだ。
最初はタダの恋する乙女のように思えたが、エレノアはそんな生易しい存在ではない。
狂気を愛した狂人。
愛する人の隣に立つためだけに自分を限界以上まで鍛え上げ、遂には人の限界までも突破した真のイカれた存在。
マリーはエレノアのことをそう見ている。
自分が同じ立場ならば、まず間違いなくどこかで諦めてしまうだろう。
だが、それでも食らいつき背中を追う姿はマリーとしても好ましいものであった。
故に、見ている側からすればジークとエレノアの距離感がもどかしい。
2人の距離は徐々に縮まっているのは理解しているが、さっさとくっつけよ。そう思ってしまうのは仕方がない事であった。
「ちょっとお節介を焼くのも悪くないわよね........と言うか、アレで恋人同士でないとか嘘でしょう?」
マリーはそう言うと、ベッドから起き上がって身体をほぐす。
今日も朝日が眩しい。こんな日は、あの歪なカップルを見るのに最適だ。
次いでに少し自分も楽しんでやろうと思いつつ、マリーは部屋を出ていくのだった。
【
第五級白魔術であり、光の壁によってありとあらゆる攻撃を防ぐ防御系魔術。闇に対してかなり強い防御力を発揮し、同じ実力であれば第六級黒魔術の攻撃すらも耐えられるだけの強度を誇る。
朝食を食べ終えたマリーは、早速エレノア達を探す。オリハルコン級冒険者の気配を探るだけなので、マリーからすれば朝飯前だ。
「お、おはようマリー。今日も派手な服装をしているな」
「おはようマリー。今日は機嫌が良さそうね」
「2人ともおはよん。いい朝ねん」
マリーはそう言うと、早速エレノアの後ろに回って背中を押す。
どこまで2人が進展したのか。2人は今どのような関係なのか。“人の恋は蜜の味”と言い切るマリーにとって、この2人の行く末は見守るべき対象である。
ジークはエレノアとマリーがなにか話すのだと察すると、“リエリーのとこに行ってくるわ”とだけ言って居なくなってしまった。
「で、エレノアちゃん。ジークちゃんとはどこまで行ったのよ?」
「んー........特に変わりはないかしらね?あ、ジークのご両親には挨拶したわよ」
「ふぇ?!」
この世界にも結婚する前に両親に挨拶するという文化があるにはある。もちろん、物理的に無理な場合はその限りでは無いが、同じ街や村出身の者が結婚する場合はよくあることだ。
つまり、ジークとエレノアは既に結婚している........?
そんな一大イベントの話を聞かない訳には行かないと、マリーは若干鼻息を荒くしながらエレノアに詰め寄った。
「どうだった?」
「どうと言われても、前から知ってるから特に変わりはないわね。後、マリーが勘違いしているから言うけれど私とジークの仲は変わってないわよ。“相棒”以上でも以下でもないわ」
「........?と言うと結婚とかしてないのかしら?」
「結婚どころか、恋人でもないわよ。ジークの恋人は経験値かしらね?ふふふっ」
自分の冗談に楽しそうに笑うエレノア。
初めて見た時から恋人同然のような関係だったのに、この2年で何も進展していない。
マリーは頭を抱えつつも、“この二人なら有り得る”と思ってしまった。
レベル上げに執着するバカと、その男を狂信するネジの外れた奴。
男と女の心を持つマリーと言えど、このもどかし過ぎる距離はあまりにもムズ痒かった。
なんでまだ恋人ですらないんだよ。はよくっつけ。
そう言いたい気持ちをぐっと堪えつつ、マリーはエレノアの話を聞き続ける。
「ジークちゃんのご両親とはどうだったのかしらん?」
「店の手伝いをしたぐらいかしらね。あぁ、後ジークのお母様からジークを襲ってもいい許可は貰ったわよ」
「........で、エレノアちゃんはどうしたの?」
「特には。私は別にジークを襲いたい訳じゃないのよね。そんな暇があるならジークに追いつくためにレベル上げしたいわ。その方がジークも喜ぶだろうし」
「あぁ、貴方も
長年ジークと共に旅をしてきたエレノア。彼女も彼女でジークと同じくレベル上げに魅了されている。
マリーは“やはり頭のネジが飛んでいる”と思いつつ、エレノアとジークの距離を縮める作戦を頭の中で考えていた。
エレノア達からすればお節介もいい所だが、見ている側としてはさっさとくっ付いて欲しい。
マリーはジークとエレノアのような距離感は嫌いでは無いが、長年その距離間で居続けるのを是としないタイプであった。
「ジークちゃんはエレノアちゃんの事をどう思っているのかしらね?先ずはそこから聞き出さないと........」
「ジークなら私の事が好きよ?当たり前じゃない」
「エレノアちゃんのメンタルにはつくづく感動させられるわねん。何故そう確信が持てるのかしらん?」
“ジークも自分のことが好き”と堂々と言えるエレノアに感心すら覚えるマリー。
その自信は一体どこから出てくるのやら。
「私の事が嫌いなら、毎晩抱き枕にされるのを嫌がるわよ。それに、ジークはできる限り私の好意を受け入れるようにしてくれている。それが愛と言わずになんと言うのよ」
「........ならなんで恋人で無いのよん。私、頭がおかしくなりそうだわ」
「それは私達が“相棒”だからじゃないかしら?私達にとって“相棒”とはそれほどにまで重い関係という事よ」
サラッと毎日一緒に寝ている事を告げられ、驚くマリー。
人間であるならば、動物であるならば性欲の1つや2つ湧いて出てきそうなものだが、エレノア達にそれは無いのだろうか?
そんなマリーの疑問に答えるように、エレノアは楽しそうに話を続ける。
「ジークは多分、私に手を出すよりもレベル上げの方が欲を満たせるんでしょうね。私は私でジークの匂いで欲を満たすから、夜に抱き枕になってくれれば文句はない。マリーから見たら歪なのかしら?」
「一般的な恋愛観とは大分かけ離れてるわねん。普通はもっと相手とイチャコラしたいものよん」
「そう?私もジークもそこら辺はズレてるらしいから、ちょっとよく分からないのよね。また困ったら相談するわ」
エレノアはそう言うと、マリーの肩に手を置く。
そしてニッコリと笑いながら、僅かにその手に力を込めた。
「余計なお世話は要らないわよ?私はこれで満足しているもの」
「........勉強不足ねん。こう言う恋愛もあるとは知らなかったわん。とはいえ、私としてはさっさとくっ付いて欲しいけれども」
「それは........私たち次第ね。ま、でも気持ちは受け取って置くわ。悪意がある訳でも無さそうだし、少しは頑張ってみるわよ」
そう言ってエレノアはジークの元へと歩き始める。
その後ろ姿を見たマリーは、小さく溜息を着くと天を見上げて呟いた。
「まぁ、あぁ言う愛の形もあるのかしらね。でも、見ている側からすればもどかしいわん」
やはり、マリーとしてはもっとハッキリとした恋人になった方がいいのでは?と思うのだった。
訳、エレノア「手ェ出すな殺すぞ」
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