五大魔境、攻略完了
魔王討伐を報告した日から街はお祭り騒ぎであった。
俺達の話や魔王が無事に討伐された事を街の人々にも話したのが原因だろう。あれよあれよと噂は広まり、あっという間に俺とエレノアは“英雄”として祭り上げられてしまった。
普段大人しい紅茶の街と言えど、魔王の討伐は歴史的快挙であり驚異が過ぎ去ったとなれば両手を上げて喜ぶ。
魔王の討伐報酬及び、魔王の素材の査定で三日ほど時間を取られた俺達は、その間ずっと街の人たちからもてなされていた。
いやー、一生飲みきれない量の紅茶を貰っても流石に困るんだけどね。
自分たちでブレンドしたオリジナル紅茶を束で渡されたり、“今日は奢りやす!!”と言って毎日飯を奢られたり。
悪い気はしないが、少しは静かにしてくれ。
宿に押しかけてくるなんて事は無かったものの、街の外に出ればスーパースターの様に扱われるのは少々精神的に疲れるのだ。
これが人の心の折り方........はっ!!まさか彼らは俺達を洗脳しようとしている?!
そんな馬鹿なことを考えたりもしながら、魔王討伐と素材報酬を貰った俺達は遂にこの街を旅立つ日となったのである。
「世話になった。最後の三日間は煩かったけど、静かで穏やかでいい街だったよ」
「最後の三日間を考慮しなければ、とても楽しい街だったわ」
「ハッハッハ!!許してやってくれ。魔王討伐という歴史的快挙を成し遂げた冒険者がこの街を救ったとなれば、多少騒がしくもなるさ。彼らの意を汲んでやってくれるとありがたいね」
「純粋な善意だから余計に断りにくくて困ったよ。俺は裏のない笑顔には弱いんだ」
「それはいいことを聞いたね。今度来た時はずっと笑顔でいてあげよう」
そう言ってニッと笑うギルドマスター。
美男美女が多いとされているエルフ種らしいイケメンな笑顔だが、生憎俺は男なんでな。
その笑顔になびくことは無い。
そして、エレノアも全くと言っていいほど反応していなかった。
「あれ?思ったよりも反応が悪いね」
「ギルドマスターの笑顔よりも、魔王の笑顔の方が俺達は嬉しいからな。どうだギルドマスター。頑張って魔王にでもなってくれないか?」
「アハハ。それは私に“死ね”と言っているのかな?手足を切り飛ばされた挙句、家畜以下の扱いを受けるのは御免蒙りたいね」
「それは残念」
たとえ人型であろうとも、魔王であるならば経験値量産機になってもらおうかと考えていたのに........
「それで、次はどこへ行くんだい?」
「先ずは冒険者ギルド本部に行こうかな。グランドマスターに魔王の報告をしないといけないし、ぶっ壊していいダンジョンが無いかも聞いてみないと」
「........ダンジョン?何故?」
「一説によるとダンジョンって一種の生命体らしいじゃん?なら、ぶっ壊したらレベルが上がるかなと思って」
「わぁ、魔王の次はダンジョンか。標的にされたダンジョンには同情するよ。私がダンジョンなら、神に全力で祈りたいね。この頭のイカれたオリハルコン級冒険者が来ませんようにって」
失礼な。俺達はただレベル上げがしたいだけだぞ?
まぁ、ダンジョンからしたらいい迷惑なのは間違いないが。
若干引き攣った笑顔をうかべるギルドマスターとの会話もそこそこに、この街で1番仲の良かったサリーさんにも別れを告げる。
彼女は最初から最後まで本当にいい人であった。狙ってないあざとらしさも、そのワタワタとした動きも全部可愛い。
エレノアが無意識に頭を撫でるぐらいには、サリーさんは可愛かったのだ。
しかも、優しくていい子。彼女には是非ともお似合いの彼氏が付いて欲しいものである。
「サリーさんも世話になった。
「この街を離れるにあたって1番悲しいのがサリーさんと離れる事ね。お元気で」
「はい!!天魔様も炎魔様もこの街を守っていただき、ありがとうございました。また来てくださいね。その時は、お二人が驚く程にまで成長してみせます!!」
フンス、と鼻息を少し荒くしながら両手を握りしめるサリーさん。
サリーさんの目標となるべく少しだけパフォーマンスでもしてあげるとするか。
流石にここまでを目指せとは言わないが、この魔術ひとつで一芸となる所をお見せしてこの街を離れるとしよう。
俺はエレノアに視線を送ると、俺の言いたいことを察したエレノアは頷く。
流石相棒。俺の言いたい事を察する能力は天使達よりも高い。
それぞれ、無詠唱で一気に1500体の蝶々を出現させると、見送りに来ていた街の人々が一気に盛り上がる。
大道芸の域を出ない魔術ではあるが、こうして人々を笑顔にできるのも魔術のいい点だな。
つくづく、魔術は使い手によって如何様にも変化すると言うのが分かる。
時として人を守り、時として人を殺す。
それが魔術であり、魔術のあり方だ。
「わぁ........凄いですね」
「ちょっとしたお礼だとでも思ってくれ。ここまで目指せとは言わないけど、数体の蝶々を飛ばせるように目指すといいよ」
「ある程度極めるとこんな事もできるわよ?ジーク」
「はいはい」
俺は出していた蝶々達を集めると、竜巻のようにぐるぐると回す。
エレノアも同じように蝶々を操り、最後はパン!!と全ての蝶を弾けさせて煌びやかに散らせた。
小さな水しぶきと、火の粉が陽の光を浴びながら空気中に消えてゆく。
暇つぶしに覚えた一芸だが、こうしてみると中々綺麗だな。
「凄いね。オリハルコン級冒険者はこんなことも出来るのか。魔術に優れていると言われるエルフですら、こんな事出来やしないよ」
「そうか?レベルを上げて練習すれば誰でも出来るぞ。レベル上げが足りてないな」
「それ、何レベルを基準に言ってるんだい?」
「この規模なら30~40ぐらいか?ちょっと頑張れば行ける行ける」
「........ベテランと呼ばれる冒険者のレベルが15なんだけどね?君達基準で物を考えないでくれ」
そう言えばそうだったな。
レベルを上げすぎて基準を忘れてしまっていたよ。
さて、ちょっとしたお礼もできただろうし、そろそろこの街を離れるとしよう。
俺とエレノアは、最後に1度軽く手を振ると背を向けて歩き始めた。
「また来てくれよー!!今度はもっと美味しい紅茶を作るからなー!!」
「天魔様!!炎魔様!!ありがとうございましたー!!」
「お二人が再びこの地に訪れるまで、私達が布教を頑張りますぞー!!」
「また来てくださいねー!!」
なんか変なのも混じっている気がするが、皆俺たちに“また来い”と言って大きく手を振る。
こうして見送られるのは何回目だろうか。リベトの街を救った時も、こんな感じだったよなぁ。
そして、声が聞こえなくなるまで遠く離れると、俺は大きく伸びをする。
最後の魔境に相応しい場所であった。
魔王は居るし、何より久々にそこそこ本気で暴れられたしな。
「いい街だったわね。楽しかったわ」
「そうだな。基本いい人しかいなかったし、魔王を使って全自動経験値量産機を作ったりと面白かったな」
「これで五大魔境を制覇したと言ってもいいのかしら?」
「いいんじゃないか?五大魔境に住む魔物の殆どは狩ったし、最後に至ってはあの魔王すらも倒したんだ。五大魔境、攻略完了だな」
「それじゃ、次はダンジョンね。先ずは帝国のダンジョン攻略、次に三大ダンジョンの攻略よ」
「攻略不可能と言われているダンジョン........とても楽しみだし、何よりダンジョンの中なら本気で暴れられそうだな」
「ふふっ、案外、第九級魔術を使ったら壊れちゃったりして」
「それは勘弁して欲しいな........ダンジョンでも制限を受けるとか嫌だぞ俺は」
「私もよ」
俺とエレノアはお互いに笑いつつ、先ずは冒険者ギルド本部に向けて中継地点の故郷に転移するのであった。
さぁ、次はどんな世界が待っているのかな?
少し長くなりましたが、この章はコレにてお終いです。いつも沢山の感想をありがとうございます。
魔王君が出てきた瞬間に読者の皆様が、“あっ”って察するのは面白すぎる。
途中から魔王君がんばえー‼︎って応援してるし。
次は三大ダンジョン編です。ダンジョン君。頑張ってくれ。
では、次の章もお楽しみに‼︎
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