産まれてくる子は大抵可愛い
ピィーちゃんの新たな家族となる子が産まれてくる様子を俺達は静かに眺めていた。
目撃情報も少なく、そもそもの母数が少ないフェニックスの子供が卵から孵化する様子を見られるなんて世界広しど俺たちだけでは無いだろうか。
世界初、人類がフェニックス誕生の瞬間を見守るという歴史的瞬間の当事者である。
フェニックスの下で温められていた卵からパキパキと音が聞こえ始め、しばらくするとパキン!!と軽快な音を立てて雛鳥が孵化する。
そして、モゾモゾとフェニックスの下から顔を出すと元気よく鳴いた。
「プィー!!」
「キー!!」
ピィーちゃんとは違う鳴き声。
可愛らしく元気な雛鳥が無事に産まれたことに安堵しつつ、俺達はフェニックスを祝う。
「おめでとうフェニックス。元気な子達じゃないか」
「おめでとう。ピィーちゃんよりも元気そうで何よりだわ」
「アハハ。ありがとう二人とも。こうして人に祝われながら子供が孵化する様子を見るなんて初めてだよ」
フェニックスはそう言うと、生まれてきたばかりの雛鳥二匹を優しく翼で包み込む。
人間の赤子ならばお湯に着けて体を洗ったりするのだが、フェニックスも同じような事をしたりするのかな?
溶岩で体を洗ったりとか........いや、さすがに死ぬか。
「ふふっ、フェニックスもちゃんと親なのね。シャルルさんやデッセンさんがジークの面倒を見ていた時のような目をしているわ。暖かくて、とっても優しい」
「子はその愛に中々気づけないがな。離れて初めて親の偉大さと愛に気づくもんだ」
「ふふっ、ちょっと羨ましいわ」
若干含みのある言葉を吐くエレノアに視線を向けるが、エレノアの表情は特に変わりはない。
親の事やエレノアの過去について一切触れないようにしているが、一体エレノアに何があったのだろうか。
親代わりに祖母が面倒を見ていてくれたというのは知っている。既にそのお婆さんは俺と出会う前に亡くなっており、エレノアが故郷で冒険者をしていた時には一人暮らしだった。
エレノアは祖母のことについては話してくれるが、生みの親について話すことは無い。
いつの日か、その話が聞ける日も来るだろう。
態々相棒の地雷を踏みに行こうとは思わないから、俺から聞くことは無いが。
何処か昔を思い出しているエレノアに視線を送っていると、俺の肩に乗っていたピィーちゃんが大きく翼を広げて喜びを全身で表す。
毎度の如く俺の頬をペチッと、叩いていたが今回は何も言わなかった。
「ピィー!!」
「ピィーちゃんの弟分達だこれで........あれ?ピィーちゃんって性別どっちなんだ?」
「そう言えば、ピィーちゃんの性別を気にしたことは無かったわね。フェニックス、ピィーちゃんって男の子?それとも女の子?」
1ヶ月以上一緒に暮らしていて気づかなかったピィーちゃんの性別。
人類やゴブリン等の人型の魔物のように生殖器があれば分かりやすいのだが、如何せん鳥の生殖器がどこにあるのか又フェニックスに生殖器があるのかすら分からない。
俺もエレノアもピィーちゃんの性別なんて気にした事が無かったので、男の子なのか女の子なのか分からなかった。
個人的には男の子だと思っている。このヤンチャな感じが昔の俺にそっくりだ。
「ん?フェニックスにオスメスの区別はないよ。強いて言うなら、両方かな?」
「........え?フェニックスに性別とかないの?」
「無い無い。ほら、私を見てよ。卵を産んで子育てしてるのに番が居ないでしょ?フェニックスはちょっと特殊だがら、番がいなくても繁殖できるんだよね。その代わり、何百年に一度にしか子供を産めないけど」
サラッと告げられた新事実。
フェニックスって性別とかないのか........言われてみればフェニックスは子育てをしているのに番がいないし、前の世界でも両性の昆虫やら生き物は多くいた。
そう考えれば不思議なことでは無いが、ピィーちゃんが男の子でもあり女の子でもあるのは少し驚きである。
この事実にはエレノアも驚いた様で、新たな家族と仲良く話している(ピィーピィー言ってるから会話の内容は分からない)ピィーちゃん達を見ながら目を見開いていた。
「てっきり男の子だと思ってたわ。元気ハツラツでジークを見ている気分だったもの。イタズラはしないけど、ヤンチャさんって感じで」
「俺もだ。それじゃ、フェニックスは母親兼父親って事か?」
「そういう事になるかな。私が生まれた時も親は一人だけだったし、フェニックスが番を作ることはまず無いと思うよ」
パパでもありママでもあるのか。
フェニックスも大変なんだな。
俺はそう思いつつも、一先ずはフェニックスの子が無事に産まれたことを祝いつつ仲良さそうに話すピィーちゃん達を見て和むのだった。
【魔物の性別】
魔物の中には性別を持たない魔物や両方の性別を持つ魔物が存在する。ゴーレム系の魔物は性別無し。フェニックスのような魔物は両性。もちろん、みんな大好きオリハルコンゴーレム君は性別なしだ。尚、アンデッド系の魔物には性別があったりする(もちろんない種族もある)。これは人であった時の名残と言われているが、性別があるからと言って繁殖できる訳では無い。
フェニックスの子供が目出度く生まれた翌日、フェニックスの出産(孵化)祝いとして料理を振舞ってあげることにした俺達はピィーちゃんを連れて魔境の狩りに勤しんでいた。
五大魔境“ハモン”では魔物を狩るのに態々炙り出しをしなければならず、それに時間を喰われていたが、ピィーちゃんが魔物ホイホイの役割をしてくれるおかげで魔境での狩りは爆速。
既に魔物の数が目に見えて減っており、あと1.2週間もあればこの魔境の掃除が完了してしまうだろう。
ハモンでは三ヶ月近く狩りをしていたというのに、えらい違いだ。
これもやはりピィーちゃんのお陰であるのは間違いない。
他の魔境でもこれが通じるのであれば、ピィーちゃんを旅に連れて行きたいぐらいだ。
まぁ、連れていくことは無いだろうが。
「今日も大量ね。とは言え、数は減っているけれど」
「そうだな。俺たちが短期間で魔物を大量に狩りすぎたのが原因だろうな。でも、そのお陰でフェニックスが安心して子育てできるとなればwin-winだ。ピィーちゃん達には健やかに育って欲しい」
「そうね。だいぶ魔境は安全になったと言えるけど、まだまだ魔物が蔓延っているわ。その全てを蹴散らすまではこの地を離れる訳には行かないものね」
エレノアはそう言うと、綺麗に凍り付いた氷像と化した魔物達を影の中に閉まっていく。
今まで狩った魔物を影の中に入れても時間経過で腐って行くのが、冷凍保存できるようになったのは大きいな。
と言うか、冷凍保存の存在を俺は知っているのだから思い出せよ。
これがあれば痛みやすい生の野菜とかも、できる限り長期期間保存できるじゃん。
攻撃的な魔術ばかりに囚われて、生活を豊かにすると言う魔術としての本質を忘れていたな。
宿に帰ったら即冷凍保存の魔術を作っておこう。
「さて、日も暮れ始めているし今日はここで引きあげましょう。少し早いけど、フェニックス達の為に料理を作らなければ行けないしね」
「そうだな。今日は豪勢に行くとしよう。ルリスの街で買った調味料とか大量にあるし、豪勢なパーティーにしてやるぞ」
「とは言っても、肉だらけのパーティーになるわよね........と言うか、まともに料理出来るのかしら?」
「大丈夫だろ。その為の魔術だ」
「溶岩湖の中で料理をするためだけに魔術を使うなんて、世界広しと言えど私達ぐらいでしょうね」
そもそも、溶岩湖の中で料理をしようなんて常人は思いつかねぇよ。
俺はそう思いつつ狩りとった魔物達を影の中にしまって、フェニックスの家に戻るのだった。
ちなみに、その日のパーティーは囁かながらも賑やかで楽しかった。
ピィーちゃん達も喜んでいたし、パーティーは成功したと言えるだろう。
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