黒の女王と白の女王

主宮

黒と白のゲーム

「あぁ、退屈ね。」

  物置に精いっぱい詰め込まれていた静寂を切り裂いた声がした。

「誰も来ないし、誰も使わない。なんでここにいるのかしら?」

「分からないわよ?知っていたら困らないもの。」

「はぁ………」

 物置の中に似合わない様なドレスを着た二人の少女がいた。一方は黒く、一方は白い。さながら影と光の様だ。

「さあ、何しましょうか。」

白い方が問うた。

「ゲームでもするかしら?」

黒い方が答えた。

「いいわね、駒がゲームをするなんて、おかしい気もするけれど」

「じゃあ、準備をしなくちゃね。」

「床を置いて、兵を配置して。」

『では、ゲームを始めましょうか?』

その瞬間、世界が変わった。埃に塗れていた物置から変わり、明るい、けれど何処か変な世界に。

床はチェック柄に塗り分けられ、白と黒の兵士達が向かい合っている。

「では私から。」

白のクイーンが宣言した。最前列の歩兵がチェックに沿って2ます分進む。

その後、黒の歩兵も進む。

 それぞれがまるでチェスのコマの様に進んでいく。地道に。3、4分経っただろうか。白の馬が仲間の歩兵を軽々と飛び越えて、黒の歩兵を討ち取った。歩兵は倒れ、白の集まる方向の床の外に置かれる。そこにはただ一つのポーンがあった。

 そこから徐々に、双方の兵達が打ち取られていった。黒が討ち取ったかと思えば、白がそれを取る。そうして兵達は徐々に減っていった。


ついに、クイーンとキングだけになった。二人は、一気に斜めに駆け抜けていく。キングは打ち取られない様に、動いていく。

 キングが隅に寄って、黒がそれに狙いを定めた時。

「チェックメイト」

 宣言した瞬間、そのチェス盤のような世界が空から崩れていった。チェックの床に埃が被さって、そこは元の物置に戻っていた。

「今回は私の勝ち。いい暇つぶしになりそうね。」

「頻繁にはできないかもしれないけれど。」

「それではまた来夜に」

卓上には、二つのクイーンが残っていた。

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