蓋天のミストガルド
ももすけ
プロローグ 蓋天の街へようこそ
その街は歪なうなりを上げていた。
血管のように張り巡らされた
ある者はここに暮らす人々の怒りと表現し、またある者は愚かな人々を憐れむ神の嘆きと嘯く。
そんな惨状でも、住人たちは無関心であった。汚染された空気を吸わないよう、マスクをしなければ生きていけない彼らの日常は、日々を凌ぐだけで精いっぱいだからだ。
黙りながら仕事をこなし、魔物の襲撃を恐れながら、隣人の顔も知らずに生きている。蒸気と煙に閉ざされているこの街で、視界は晴れることは無く、明日すらも見えない。
しかし、心のほんの片隅で信じていた。言い伝えにある『
「それは空から舞い降り、人々を空へ運ぶであろう――」
誰が言ったか定かではないが、それは心の錆びついた住人たちの、一縷の望みであった。
そして今、それは人知れず現れた。彼が目醒めたとき、世界が変わる。
街の名は『ミストガルド』。
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